ゆほびか ゆほびか
  • 文字サイズの変更
  • 大
  • 中
  • 小
  • SNS
  • twitter
  • facebook
  • instagram

「老後貧乏」の不安をなくすポイント【1】必要額をざっと試算する

2020/03/07

老後のお金について誰もが不安を感じている

 少し前から、「老後破綻」や「下流老人」といった言葉をよく耳にするようになりました。

 ほんの一昔、二昔前までは、まっとうに暮らしてさえいれば、老後はまず安泰だと考えられていました。でも、それはもう過去の話。先行きが不透明なこの時代、不安になるお気持ちもよくわかります。

 ことに今40から50代くらいですと、将来に対してさまざまな不安を覚えているかたが多いことでしょう。

 不安は現状を変える原動力にもなりますから、必ずしもよくないこととはいえません。でも、ただ漠然と不安を抱いたままでは、何も変わりませんし、不安がいつの間にか消えることもありません。

 具体的な金額をもとに老後のお金を考えることが、準備すべきことを知り、不安を解消するための第一歩です。早速、始めてみましょう。

もはや年金だけでは家計は成り立たない

 そもそも、老後とは何歳からなのでしょうか。昔はサラリーマンの定年で、年金支給開始年齢だった60歳が目安でしたが、ここ10年で、状況は大きく変わっています。

 まず仕事の面で見ると、現在の60歳はまだまだ働く年齢だといえます。総務省の調査では、下のグラフのとおり、65歳以上の高齢者においても、就業者数は年々増え続けています。今でも定年制のある会社の80%で60歳が定年ですが、それを過ぎたらリタイアという時代ではないことがはっきりわかります。

 一方、年金の面では、昭和36年4月2日以降生まれの男性と、昭和41年4月2日以降生まれの女性は、65歳での支給開始になります。

 将来、さらに支給開始年齢が上がることも考えられますが、現時点では、定年後の再雇用が一区切りとなり、年金支給も始まる65歳以降を老後ととらえていいでしょう。

 ここではっきり申し上げますが、今後、老後に年金収入だけで家計を成り立たせるのは、ますます難しくなります。したがって、老後資金として、ある程度のお金を確保しておくことが目標になります。

 そこで大事なのが、老後生活の収支、家計状況がどうなるかを、できる範囲で具体的にイメージしてみることです。

年金受給の見込額を押さえておこう


 まず最初のステップとして、自分の年金受給見込み額を知っておきましょう。

 国民年金および厚生年金保険の加入者には、日本年金機構から毎年1回、自分の誕生月に「ねんきん定期便」が郵送されてきます。そこに、50歳以上のかたは「老齢年金の年金見込額」、50歳未満のかたは「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されています。

 また、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すれば、インターネット上で年金記録を確認することもできます。

※登録には「ねんきん定期便」に記載のアクセスキーが必要。手元にない場合、ユーザーID発行の申し込みをネットから行えば、アクセス情報が自宅に郵送されてくる。

 50歳未満のかたは、受給額を見て「えっ、こんなに少ないの?」とあわてないこと。この数字は年金加入期間によりますし、今後の支払額によっても変わります。加入期間が長くなる(長く働く)ほど、また、収入が上がって支払い額が増えるほど、受給額も増えていきます。一方、50歳以上のかたは実際の受給額に近い額が載ります。

 年金の受給見込額を確認したら、次のステップとして、老後に必要なお金を見ていきます。

標準的な老後家計では月に6万円の赤字が出る

 よく「老後に必要なお金って、いくらなの?」と尋ねられますが、私は「一般論としては、最低で1800万円、できれば3000万円です」とお答えしています。

 この数字は、総務省の家計調査の資料から導き出したものです。下のグラフをご覧ください。夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦2人の無職世帯では、年金が月額約19万円で、その他の収入を加えても月額約21万円というのが標準的な収入です。

 一方、標準的な支出の総額は月に約27万円なので、単純計算で月に約6万円、年間でいうと72万円が足りません。何らかの方法で収入を増やさないかぎり、年間72万円はそれまでに蓄えた老後資金から捻出する必要があります。

 仮に65歳でリタイアして、90歳まで25年間生きるとしたら、年間72万円の25倍で、約1800万円。これに住居の修繕費や医療費など、万が一のときのお金を足して、だいたい3000万円あれば見通しが立つでしょう、ということです。

 3000万円と聞いて「えっ、そんなに?」とギョッとされたかたもいるかもしれません。でも、悲観しないでください。これはあくまでも「これだけあればまず安心」という理想的な数字であり、絶対にこの金額を用意しないと老後は暮らせないというわけではありません。

 もちろん、将来に退職金が出るかた、ほかの収入が見込めるかたは、その金額を考慮に入れて大丈夫です。65歳までの年数から、毎月の貯金の目標額を計算してみてください。

 目標額が明確になったら、それに向かって、ここまで紹介してきた方法で毎月の貯金額や投資額を増やしていくだけです。

何歳でもあきらめず貯金と投資を始めよう

 老後資金づくりは、もちろん早くから始めるに越したことはありません。20代、30代から少額ずつでも定期預金やiDeCoで積み立てていれば理想的です。

 とはいえ、家庭を持つなどしてライフスタイルが変化すれば、当面の支出に手一杯になり、老後資金に回す余裕が減るのは仕方がありません。特に、40代は、多くの人の収入が増える反面、教育費などの支出も大きくなる時期ですから。

 でも、だからこそ、この時期に将来への具体的な計画を立てておくことがたいせつです。また、家計の収支を改善する効果が、最も大きい時期だとも言えますから、しっかりと「消費・浪費・投資」のバランス改善に努めましょう。
 支出の増加が一段落する50代以降は、老後資金作りのラストスパートに適した時期です。貯蓄や投資の割合を最大限に大きくしたいものです。

 こう書いてくると、「もう手遅れでは……」と不安になるかたもおられるかもしれません。でも、何歳からでもやったぶんは確実に結果につながるのですから、あきらめずに貯金と投資を始めましょう。
 また、ふだんの支出に関して意識を変えておくこともたいせつです。年金生活が始まってから、生活レベルを下げようと思っても、急には実践しづらいからです。現役時代と同様の感覚でいると、早々に貯蓄を食いつぶしてしまいかねません。ムダな支出を避けるクセをつけていけば、老後資金の蓄えもより増えやすくなります。

人生100年時代のお金とのつきあいかた

 今は「人生100年時代」と言われます。日本人の平均寿命は女性が約87歳、男性が約81歳。今後はさらに伸びると予測されています。それに伴い、私たちは、自分の親世代とは異なるライフスタイルやお金の意識を持つ必要があります。

 定年になるまでの40歳~65歳は収入も支出も拡大する攻めの時期。65歳以降は縮小する守りの時期だと言えます。当然、お金とのつきあい方も変わるでしょう。老後も大事ですが、今も大事です。老後が始まる65歳前後までに、人生のバランスをどう取るか。私たちは、その綱引きをしていくわけです。

 でも、この老後が始まるラインを自ら引き上げたらどうでしょう。つまり、現役の期間をより長くするということです。

 人生100年時代を幸せに全うするには、家計のやりくりだけでなく、老後の収入の手立てや人生のやりがいを見つけることが最も重要だと私は考えています。次回は、そこを見ていきましょう

関連記事