水と農作物に感謝し、食べ過ぎないこと
私は大正15年生まれの90歳。今年9月で91歳になります。27歳で医師になり、以来64年間、診療にたずさわってきました。
ふり返れば、これまで大病1つしたことがなく、戦争も、戦後の激動も大過なく生き抜いてこられたことは奇跡のようなもの。天にも人にも、感謝の気持ちしかありません。
おかげさまで卒寿を迎えた今も、心身ともにすこぶる快調です。「元気で長生きの秘訣は何ですか?」よく、そう尋ねられます。
いろいろ頭に浮かびますが、やはりまずは「食」。私たちの命は外から入れる食べ物、飲み物によって支えられています。
日本は、世界の中でも水のきれいな国。おいしい水を飲み、きれいな水に育てられた農作物を食べる。これが基本でしょう。
過度に食べないというのも、常に意識しておくべきです。自分にとってちょうどいい量を守ること。いくら栄養のあるものでも、食べ過ぎれば、毒になりかねません。
基本的なことですが、こういった習慣の積み重ねが、健康長寿につながっていくのではないでしょうか。
自分に合った健康法なら自然と長続きする
食生活に関しては、6年ほど前から、毎日欠かさずニンジンジュースを飲んでいます。私のニンジンジュースは、ニンジン1/2本とリンゴ1/2個をすりおろしたものです。
食事は基本的に自炊ですが、このジュースも自分で作り、朝食前と夕食前、1日2回飲んでいます。家で昼食を取れる日は、昼食前にも飲みます。
ほどよい飲みごたえがあり、食事の取り過ぎを防げますし、新鮮な酵素、ビタミンやミネラル、食物繊維などを手軽に取れるのもありがたいです。
そもそもニンジンジュースを作り始めたきっかけは、愛読している雑誌で、鶴見隆史先生(※1)がニンジンジュースを勧めている記事を拝見したこと。
※1:鶴見クリニック院長。日本における酵素研究の第一人者。酵素栄養学に基づく「鶴見式免疫療法」は、末期ガンや難病などの治療において大きな改善効果を挙げている
手法自体も簡単で魅力的だと思いましたし、何より、鶴見先生が記事でおっしゃっていることに感銘を受けました。
「現代人には極端に酵素が不足していて、その結果、多くの人が慢性的な不調や疲労に悩んでいる。酵素とは、食べ物から必要な栄養を取り出したり、不要なものを排泄したりするのに必要な存在で、酵素なくしては人間は生命活動を営むことはできない。酵素は、健康長寿に何よりもたいせつだ」
それと前後して、済陽高穂先生(※2)がニンジンジュースを推奨し、多くのガン患者さんや、ガンを予防したいと考える人たちに勧めていらっしゃることも知りました。
※2:西台クリニック院長。外科医として多くのガン切除手術を執刀したのち、ガン治療には食事療法が不可欠と考えるに至り、「ガン食事療法」を考案。6割以上の患者のガンが改善・治癒している
おふたりとも、食のたいせつさを強く唱え、健康の本質をついた理想的な医療を実践されている。
畑は違いますが、こういう医師がいるのかと思うと、同じ医師として、身が引き締まります。
私は、よいとひらめいたことは、「自分の人生をよりよくする大きなチャンスかもしれない」と何事も迷わず即実行する性分です。
それが自分にとって正しいことであれば、健康法であれ何であれ、自然と習慣になり、長く続けられると思います。
「ひらめく光は天の教え」
大好きな趣味も、私の健康を支えています。まずゴルフ。60歳のときに『外科医があかすゴルフの秘訣』という自著を出したくらい好きで、休日には同世代の知人とともにコースに出て、エイジシュート(1ラウンドのゴルフで自分の年齢以下のスコアを出すこと)を目指しています。
カラオケも好きです。好きが高じて、数年前から作詞も始めました。初めて書いた『人生賛歌』という詞は、演歌歌手のえひめ憲一さんが気に入ってくださって、おかげさまでCDになりました。
最近書き上げた詞は『長寿賛歌』。
♪ひらめく光輝きは
天の教えか神の利か
迷いと悟りの分かれ道
卒寿を超えて身に沁みる——
長寿をかなえるのに最もたいせつなのは“ひらめき”を現実化し、活かしていくことなのではないかなという思いを、詞に込めました。
最後になりましたが、医師としての私の今の目標は、愛する地元・栃木県を日本一の健康長寿県にすることです。
その夢を達成するため、自分にできることをまっとうすべく、これからも健康維持に努めていきたいと思っています。
【定方医師の健康長寿ポイント】
Q:ニンジンジュースはどのように飲んでいますか?
「ニンジンとリンゴのすりおろしを、朝晩、食前に飲みます。食前に飲むのは、食事の取り過ぎを防ぐため。過度に食べず、自分にちょうどいい食事量を守る習慣は、健康長寿につながります」
Q:ニンジンジュースに加えてお勧めの健康法は?
「姿勢が整っていれば、首・腰・ひざに余分な負担がかからないので、痛みを防げます。いつまでもしっかり歩けるし、深い呼吸もできます。いい姿勢を保つには、目線を必ず水平より上に保つこと。このことは、患者さんにもよくお伝えしています」