腸の腐敗がすべての病気のもと
梅は、中国では「三毒を断つ」薬として、昔から珍重されてきました。三毒とは、水の毒、血液の毒、食事の毒を指しますが、私はこの三毒を、「腸の腐敗(汚れ)」「血液の汚れ」「臓器の汚れ」と考えています。
梅は、これらの汚れをクリーンにする毒消し作用を持っているのです。三毒のなかでも私が重視しているのが、腸です。
腸は免疫の要であり、ここが腐敗すると血流が悪くなって、あらゆる病気にかかりやすくなります。腸の状態が、健康を左右するといっても過言ではありません。
今、世界的に代替医療が注目されていますが、その根源にあるのがナチュロパシー(自然療法)の考え方です。これは、「食事を正し、腸を元気にして自然治癒力を高め、全身を健康にする」という療法です。それくらい、腸は大事なのです。
腸を活性化するために、積極的にとっていただきたいのが梅です。なかでもお勧めしたいのが、「梅肉エキス」。梅肉エキスとは、青梅をすりおろし、トロリとした液状になるまで長時間、煮詰めたもので、梅の薬効が凝縮されています。
青梅には猛毒の青酸物が含まれていますが、煮詰めるだけで、その毒が薬に変わるのですから、不思議なものです。
強い殺菌作用で病原菌の繁殖を抑える
こうして作った梅肉エキスには、腸を元気にする三つの効能があります。
❶腸を殺菌し腐敗を防ぐ
梅肉エキスは強酸性で、強い殺菌作用があります。これが病原性の細菌(サルモネラ菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌など)の繁殖を抑えて、腸の腐敗を防ぎます。
❷腸の免疫を強化する
腸(小腸)には、パイエル板という免疫装置があり、全身の70%に当たる免疫細胞(リンパ球)がここに集結しています。
梅肉エキスはこれらの免疫細胞や、自然免疫を担うNK細胞を活性化して病原性の異物を殺し、感染症やがんから体を守る効果が期待できます。
❸短期脂肪酸を作りやすくする
腸に住んでいる善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)は、食物繊維を餌にして「短鎖脂肪酸」という物質を作ります。
これは酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸で、強い殺菌作用があります。その大部分は大腸から吸収されて大腸粘膜のエネルギー源になるほか、全身の粘液(唾液、胃液、涙、鼻水など)になって、体のいたるところで殺菌作用を発揮します。梅肉エキスは、この短鎖脂肪酸を産生しやすくします。
血流を改善させる効果がとりわけ強力
こうして腸の状態がよくなって、腐敗菌(悪玉菌)が少なくなると、アンモニアが出にくくなります。アンモニアはウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌によって作られる腐敗物質(毒素)で、諸病の誘因になります。
アンモニアが増えると、アンモニアガスの作用で小腸がパンパンにふくれます。そしてじわじわと、小腸の壁から直接アンモニアが血流に流れ込むことがわかっています。お腹が急にせり出してきて、それが肥満のせいでなかったら、間違いなくアンモニアガスが腸にたまっています。
血中に入ったアンモニアは、インスリンの働きを阻害して、血糖値を上がりやすくします。また、全身の微小循環を悪化させて、心筋梗塞や脳梗塞、がんなど、重篤な病気のもとになります。血流を低下させる原因として、血液のPH(酸性、アルカリ性の程度を表す単位)も重要です。
梅肉エキスは、腸では酸性を示しますが、腸から吸収されて血中に入ると、弱アルカリ性に変わります。人の体は、血液も体液も弱アルカリ性(PH7.4前後)で正常に機能します。ところが、血液が酸性に傾くと、ドロドロになって流れにくくなります。それを本来の弱アルカリ性に戻すのが、梅肉エキスです。
また、梅自体に、血液の汚れを取る毒消し作用があります。特に梅肉エキスには、青梅を加熱するとできるムメフラールが含まれており、これに強い血流改善作用があります。梅肉エキスはこのように、腸をきれいにして血流をよくし、動脈硬化や血栓を始め、さまざまな病気の予防に役立つのです。
ところで、皆さんの排便は健康でしょうか。腸の状態は、便やおならでわかります。便やおならの臭いがきつかったり、便秘や下痢が続くようなら、間違いなく腸の腐敗が進んでいます。
反対に腸がよい状態なら、一日2回、バナナ状の臭いのない便が気持ちよく出ます。よい便はキレもよく、紙が必要ないくらいです。便は、腸の健康度を知らせるバロメーターなのです。
実際に梅肉エキスを習慣的にとっていると、排便が格段によくなります。私の患者さんで、長いこと過敏性腸症候群で悩んでいた女性がいました。いつも下痢状態で、まともな便が出たことがなかったそうです。
そこで3日間の断食後に野菜中心の食事を勧め、梅肉エキスを毎日とってもらいました。すると、「今までの下痢はなんだったの?」とご本人が驚くくらい、よい便が毎日出るようになりました。
塩抜きをした梅干しで代用してもよい
梅肉エキスの代わりに、梅干しを食べてもいいでしょう。私もよく梅干しを食べますが、あるとき、小粒の梅干しを20個ほど食べたら(※マネしないでください)、まっすぐの、太くて長い便が出て、感激したことがあります。もともと排便はよいほうですが、こんなに見事な便は初めてでした。
梅干しは、梅肉エキスほど薬効は高くありませんが、ほぼ同じような効果を期待できます。梅干しの唯一の欠点は塩分が多いことなので、必ず梅干しを1時間半ほど水につけて、塩抜きをしてから食べてください。こうすれば、いくらでも食べられます(梅干しで代用するやり方は下の写真を参照)。
鶴見式 梅干しで代用する方法
【用意するもの】
・梅干し1個
・水の入ったコップ
【作り方】
❶コップに梅干しを入れて、1時間半ほど浸して塩抜きをする
❷コップの水は捨て、梅干しを食べる。
1日1個が適量
ちなみに、ここでいう梅干しは、梅と塩だけ(赤ジソもOK)で漬けられた、昔ながらの製法の梅干しを指します。最近は、食べやすくするためにハチミツやみりん、その他の食品添加物を加えた梅干しが出回っていますが、ああいう梅干しでは、薬効は期待できません。
梅肉エキスは、日本人の知恵が詰まった画期的な食品で、少量で高い薬効を得られます。一日ひとなめでいいですから、毎日の習慣として、どんな人にもとってもらいたい常備食(薬)です。
キャベツなどの生野菜と一緒にとると、酸味が和らいで食べやすくなるうえに、キャベツの食物繊維もとれますので、短鎖脂肪酸の産生が高まります。梅肉エキスがないときは、梅干しで代用してもいいですし、両方を併用してもいいでしょう。
これらをとっていれば、新型コロナの予防効果も期待できるでしょう。私は、ワクチンの副反応や後遺症で体調を崩した人にも、梅肉エキスを勧めています。