
衰えた見る機能を復活させるには目の筋肉を動かすことが大事
私は視覚の専門家として、スポーツ選手や子どもたちへ、目のトレーニングの指導をしています。私の家は眼鏡店を営んでおりましたが、私自身、子どもの頃から目を動かす力に問題があり、特に球技はボールがよく見えず、苦手でした。
しかし、アメリカで目の機能のトレーニング法を学んで改善することができ、米国オプトメトリー・ドクターの資格を取得。見え方で悩む人の目の機能を改善してきました。
特に、ここ数年は、コロナ禍でスマホやパソコンを見る機会がますます増え、皆さんの目の負担が大きくなっているのが気になっています。
スマホを見るときは、目だけを下げるのではなく、どうしても首が傾きます。ですから、ずっと見ていると首や肩に負担がかかり、背骨を通じて腰痛にもつながります。顔をできるだけ下げないで、目だけを下に向けて見るなど、顔を動かさずに、目を動かして、広く目を使うことがたいせつです。
また、スマホの小さい画面の範囲にしか目を使っていないと、目の筋肉が衰え、視野が狭くなってしまいます。すると、物や人にぶつかりやすくなったり、転びやすくなったりするのです。
目の動きが少ないと、気分が沈みがちになることもわかっており、メンタルにも影響します。
一方で、目の動きがあると、脳の血流もよくなり、いろいろなアイデアが浮かびやすくなります。ですから、皆さんも外を歩くときは、下を向かず、できるだけ広く目を動かして、いろいろなところを見て歩いてください。
また、目の視野が広がると、頭がスッキリし、思考力もアップし、イライラもなくなります。視野を広げるには、一生懸命見るのではなく、ちょっと力を抜いて、目をリラックスさせるように見るとよいでしょう。そのように意識するだけでも、目の緊張が取れて、視野も広がってきます。
凝り固まりやすい眼筋をしっかり動かす
目の運動不足を解消するためにお勧めなのが、1日3分のアイトレーニングです。見る機能とは、対象物をとらえることだけでなく、目からの情報を脳に伝え、正しく認識し、体を反応させることも含みます。
見る機能をアップするには、凝り固まりやすい目の筋肉をしっかり動かすことが大事です。目を動かせば、脳も活性化され、仕事のパフォーマンスもアップし、集中力や記憶力も向上します。
以降では、5つのアイトレーニングをご紹介します。ふだん動かしていない方向へ、目を動かしてみましょう。
最新アイトレーニング❶8の字追従運動
頭を固定したまま、8の字に動く指先を目で追うトレーニング。眼球だけをなめらかに動かして、見たいものに視線を合わせる。

1 人さし指で8の字を描き指先を目で追う
片方の手で人さし指を立て、指先を目で追いながら、顔の前に8の字を横に倒した線を描く。1周10秒くらいを目安に手を動かす。
2 反対周りで行う
最新アイトレーニング❷目の跳躍運動
両手を上下、左右、斜めに広げ、指先を交互に見る。顔は動かさず、目線が跳ぶようなイメージで目を動かす。
1 両手を広げ左右交互に見る
両手の人さし指を立て、肩幅くらいに広げる。顔は動かさず、左右の指先を1秒ずつ交互に見る。

2 上下を交互に見る
両手を上下に広げる。顔は動かさず、上下の指先を1秒ずつ交互に見る。

3 斜めを交互に見る
片方の手を斜め上に、もう片方の手を斜め下に広げる。
顔は動かさず、指先を1秒ずつ交互に見る。

4 手の位置を逆にして斜めを交互に見る
続いて、左右の手の位置を逆にして同様に行う。それぞれ10秒間行う。

最新アイトレーニング❸目と首の運動
視線は1点を見つめたまま、顔をいろいろな方向に向けて、眼球を動かす。
1 指先を見たまま頭を回す
目から30㎝くらいの位置に人さし指を立て、指先を見る。指先を見たまま、頭をゆっくり10秒ぐらいかけて1回転させる。逆方向にも1回転させる。

2 指先を見たまま顔を左右に動かす
指先を見たまま、顔をゆっくり右に向けたり、左に向けたりする。

3 指先を見たまま顔を上下に動かす

4 指先を見たまま頭を横に倒す
指先を見たまま、顔をゆっくり上に向けたり、下に向けたりする。それぞれ10秒間行う。

最新アイトレーニング❹弓矢のポーズ
遠くを見たり、近くを見たりしながらピントを合わせるトレーニング。
近くのものを見るときに両目を寄せる力がつく。

1 人さし指を立て、目印となる3点を決める
両手の人さし指を立てる。片方は手を顔の前に置き、もう片方の手は顔から遠くに置く。
さらに、その延長線上の3mほど先に目印を決める
2 遠いほうから順に3点を繰り返し見る
3m先の目印、奥の人さし指、手前の人さし指の順に、それぞれ3秒ずつ、しっかり見る。
3 手前の指を近づけて寄り目で見る
手前の指を見るときは、そのまま指をゆっくり近づけて、見える限界まで寄り目で見るようにする。2~3を5回繰り返す。

片方の足の裏を反対の脚の太ももに付ける片足立ちをして行うと、難易度が増してバランス感覚も身につく
最新アイトレーニング❺視野広げ
まっすぐ遠くを見ながら、徐々に視野を広げていくトレーニング。
いろいろな方向に手を動かし、指先を認識することで視野が広がる。
1 手を左右に広げていく
目線はまっすぐ前にして、遠くを見る。両手の人さし指を肩幅くらいに広げて立てる。手を少しずつ左右に広げていく。視界の端で親指を認識できるくらいまで広げる。

2 手を上下に広げる 続いて上下に手を広げていく。

3 手を斜めに広げていく
手を斜めに広げていく。

4 手の位置を逆にして斜めに広げていく
逆の方向にも手を広げる。

仕事のミスがなくなり目も心もリラックスする
ご紹介した5つのトレーニングは次のような効果が期待できます。見たいものに視線を合わせる「8の字追従運動」を行うと、書類の見落としがなくなったり、注意力がアップしたりします。
視線をジャンプさせる「目の跳躍運動」は、文章を読むスピードが上がり、集中力もアップします。気持ちの切り替えも早くできるようになるでしょう。顔をいろいろな方向に向けて眼球を動かす「目と首の運動」では、目が動かしやすくなり、肩こりや首こりの改善にもつながります。
ピントを合わせる「弓矢のポーズ」を行うと、近くのものが見やすくなり、目が疲れにくくなります。両目でまっすぐものをとらえることで、姿勢もよくなります。周辺視野を拡大する「視野広げ」は、眼精疲労が解消し、目も心もリラックスします。頭がスッキリし、思考力もアップするでしょう。
最初はうまく目が動かなかったり、目が疲れてしまうこともありますが、だんだん慣れてくると目が動くようになります。ゆっくりとしたスピードで始めて、目が動くようになれば、スピードを上げていきましょう。
これらのトレーニングを、1日3分でもいいので、毎日の日課に取り入れていただくと、しだいに変化が表れてくるはずです。