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【ふくらはぎこすり】精神科医が推奨!不安・ストレス・不眠・頭痛を解消する

うつの兆候と思われる患者さんが増えた

 コロナ過においては、心に不安やストレスを抱える人が増えています。

 実際、この数カ月ほどの間で、私のクリニックにも、不安やストレス、それによる不眠、頭痛、倦怠感などを訴える患者さんが多くなりました。

 このような症状は、うつの兆候でもあります。精神的な不調から、家庭内暴力、摂食障害、アルコール依存などの問題に発展してしまうケースもあります。

 今回、心の不調に陥ったかたの話を伺うと、その主な要因には、まず「家族関係」が挙げられます。宣言が解除された今も、不要不急の外出が憚られるのには変わりありません。

 家族がいっしょに過ごす時間が長くなったのを、負担に感じているかたは、おおぜいいらっしゃいます。

 主婦であれ、リモートワーク中のかたであれ、出勤を余儀なくされているかたであれ、子どもがいてもいなくても、それぞれの事情によって、みんな疲れてイライラしています。

 それに加えて、今、私が懸念しているのは失業者の増加です。失業率と自殺率は比例しており、うつは自殺に大きく関わる原因となり得るからです。

 そこで、家族関係やお仕事にどんなことが起きても、心を落ち着かせているために、皆さんにぜひ実行していただきたい手法があります。それは「ふくらはぎこすり」です。

自律神経の乱れはふくらはぎに現れる

 心と体には密接な関係があります。そのポイントは、「自律神経」です。自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があり、リラックスしているときや睡眠時には副交感神経が優位になります。

 逆に、交感神経が優位になるのは、不安やストレスが大きい、緊張状態のときです。交感神経と副交感神経はシーソーのような関係で、どちらかが優位になると、もう一方は下がります。

 交感神経が静まれば副交感神経が優位となり、心身がリラックスして、うつの症状の改善が期待できるのです。

 今のように、不安や恐怖などの感情に捉われやすい状況では、交感神経が優位になります。すると体が緊張し、筋肉が硬くなります。体の緊張を楽にするには、マッサージが有効です。体が楽になれば、心も落ち着いてきて軽くなります。

 では、なぜふくらはぎをもんでいただきたいのかというと、筋肉の緊張が顕著に現れやすいのが、実はふくらはぎなのです。

 もともと足は、人体で最も下に位置し、心臓から遠く離れているため、血行不良になりやすい部位です。血液循環が悪くなると、ふくらはぎはいっそう冷えて、硬くなりやすいのです。

 逆に、ふくらはぎの柔らかさを保っていれば、交感神経は静まり、体の緊張は和らぎます。

臨床心理士が考案したセルフケア法

 当院でお勧めしているふくらはぎこすりは、イスに座って自分のひざを使って、もう一方の足のふくらはぎをこすります。

 このやり方は、臨床心理士である私の妻が、患者さんが自宅でも簡単に心身のケアができるように、試行錯誤を繰り返して考案しました。

 手にうまく力が入らず、もむのが苦手な人でも、この動作ならできるはずです。自然な動作でふくらはぎに圧がかかり、マッサージ効果を得られます。

 ふくらはぎをこすったあとは、そのまま足を組み、すねの外側のマッサージも行ってください。足首の外側の肉をちょっと痛いくらいの強さでつまみ、ひざに向かって移動しながらつまんでいきます。

 最後に、足首を支点に、つま先を10回ほど上下にゆっくりと動かして完了です。

 余裕があれば、わきや体の側面などの皮膚と筋肉の間にあるファシア(筋膜)をつまむようにマッサージしてください。体が動かしやすくなり、深部体温が上がっていっそう緊張が解け、眠りやすくなります。

ひざ下をもむだけで全身の痛みが和らぐ

 全身の血管はつながっていますから、停滞していた足の血液やリンパの流れがよくなると、足だけでなく全身の流れもよくなります。その結果、緊張がほぐれると、肩や首、背中などのこりや痛みも軽減します。

 ひざから下のケアは、夜寝る前に行うのが最も効果的です。

 片足5分ずつ行うだけでも副交感神経が優位になり、血圧が安定して、精神的にも落ち着いてきて、寝つきやすくなります。熟睡できるようになると、ネガティブな気持ちも前向きになっていきます。

 ふくらはぎをこすると、最近増えている慢性頭痛も解消できます。慢性頭痛の患者さんの多くは緊張型頭痛(※)なので、症状の解消には、心身のリラックスが欠かせません。

 また、ふくらはぎをこすって、副交感神経を優位にすると、腸の働きがよくなるので、便秘の解消にもつながります。ひざから下のケアは健康の入り口です。どうぞ、ふくらはぎをこすって、心と体の痛みや不調を癒してください。

※頭痛は主に、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、混合タイプにわけられる。心身のストレスなどの原因で、頭・首の後ろ・肩・背中にかけて筋肉の緊張して起きるのは、主に緊張型頭痛。

ふくらはぎこすりのやり方

① ふくらはぎをほぐす

イスに座って、右足が上になるように足を組み、自分の左ひざを使って右足のふくらはぎをもむ

② すねをほぐす

①の姿勢のまま、足を組み(右足が上)、足首からひざに向かって、すねの外側をつまみもむ。

①~②で5分程度を目安に行ったら、左右の足を組み替えて、同様に行う

③ つま先のストレッチ

足首を支点にして、つま先を上下に10回ほど動かす。足指をパーのように開いて動かせるとなおよい