村田諒太選手が実践していた「目のトレーニング」が話題に
昨年、プロボクシング・WBA世界ミドル級チャンピオンとなった村田諒太選手は、「目のトレーニングで視力が1・0から2・0へとアップした」と話題になりました。
私は、オプトメトリスト(視覚機能の専門家)の北出勝也氏とともに、村田選手の目のトレーニングを指導しています。
目のトレーニングは、視力アップが目的ではありませんが、村田選手のように、眼球がよく動くようになり、その結果、視力がアップしたというケースはよくあります。
しかし、目のトレーニングの真の目的は、「見る力」を高めることです。「見る力」とは、視力だけのことではなく、見えたものに対する反応も含めた、総合的な視覚能力のことを言います。
例えば、向こうからボールが飛んでくるとします。その大きさ、重さ、こちらに向かってくる軌道、速さを瞬時に判断して、キャッチできるように体勢を取る——こうした目と体の協調運動が「見る力」です。
トレーニングを始めたときの村田選手の「見る力」は、標準以下でした。これまでは「見る力」にハンデがあっても、類まれな身体能力で補ってきたのでしょう。
村田選手は、目のトレーニングを日課にすることによって、眼球を動かすスピードが上がり、眼球の可動域も広がり、両目を協調させて使う能力もアップしていきました。
その結果、村田選手は、相手の動きやパンチが以前よりも見えるようになってきたと言います。
私から見ても、ムダな動きが減って、動きがスムーズになっているように感じます。
ところで、目のトレーニングというと、どうしても村田選手のようなアスリートに必要なもので、「アスリートでもない私には関係ない」と受け取られがちです。
しかし、私が強調したいのは、勉強やスポーツが苦手な子ども、忙しいお母さん、働き盛りの社会人、目の衰えが気になる中高年など、一般のかたにこそ、ぜひやっていただきたいトレーニングなのです。
アスリートだけじゃない!あなたの日常も変える
私が最初に「見る力」のトレーニングを指導しようと思ったのは、子どもたちの「見る力」の低下に気がついたからです。
身体能力は高いのに、苦手な動きがある子どもたちが多く、「もしかしたら、目に原因があるのかも」と思い至ったのです。
そして、目のトレーニングを導入すると、
「苦手だった徒競走で1番になれた」
「嫌いだった算数で、テストの点が上がった」
「サッカークラブで、レギュラーになれた」
といった喜びの声が寄せられるようになりました。
私は、大人が目のトレーニングを行うと、次のような効果が期待できると考えています。
①文字の見落とし、見間違いが減る
②相手の気持ちを考えられる
③計画力が高まる
④緊張に強くなる
⑤細かな気配りができるようになる
⑥整理整頓ができるようになる
⑦転倒によるケガなどが防げる
⑧人生設計を描きやすくなる
人間は、情報の8割を視覚から得ていると言われますが、その「見る力」が高まると、日常生活のさまざまな場面で役立つことを実感されるでしょう。そして、人生までもが変わってしまう——「見る力」には、そういう可能性があると、私は考えています。
村田選手も子どもも行う基本中の基本が「眼球運動」
ここでご紹介する目のトレーニングは、誰にでも簡単に行える朝3分の「眼球運動」です。村田選手も私が指導している子どもたちも行っている、目を、遠近も含めた全方位に向ける、基本の動きです。
眼球運動では、主に目の6つの筋肉(外直筋、内直筋、上直筋、下直筋、上斜筋、下斜筋)に働きかけることで、目を素早く動かせるようになります。
この眼球運動を毎日行っている高齢者のかたからは、
「視力がアップしてメガネがいらなくなった」
「手元がよく見えて料理がうまくなった」
「運転が楽になった」
と喜びの声もいただいています。
目の周りの筋肉が動きやすくなって、表情が豊かになり、目がぱっちりするので、美容の観点からもお勧めです。
朝3分の眼球運動のやり方
用意するもの→ボールペン2本
【ポイント1】顔や体は動かさない。あごを引いて目だけ動かす。
【ポイント2】メトロノーム(スマホ等の無料アプリもあるので、それを使ってもOK)を使って、テンポよく行うのもお勧め。
①左右に目標物を追う
ペンを顔の右から左、左から右にゆっくり動かし、そのペン先を目で追う。これを10秒間繰り返す。
②上下に目標物を追う
ペンを顔の上から下、下から上にゆっくり動かす。そのペン先を目で追う。これを10秒間繰り返す。
③対角線に目標物を追う
ペンを顔の右上から左下、左下から右上にゆっくり動かす。それを目で追う。これを10秒間繰り返す。
④左右を逆にして10秒間行う。
⑤左右に視点を変える
左右のペンの幅を40㎝程度にして、左右のペン先を交互に見る。1秒ごとに左右の視点を変える。これを10秒間行う。
⑥上下に視点を変える
頭の上と胸元の位置までペンを離し、上下のペン先を交互に見る。1秒ごとに上下の視点を変える。これを10秒間行う。
⑦対角線に視点を変える
頭の右上、胸の左下にペンを離し、ペン先を交互に見る。1秒ごとに視点を変える。これを10秒間行う。
⑧左右を逆にして10秒間行う。
⑨顔を中心に目標物を追う
顔の周りを、自分から見て円を描くようにゆっくり動かし、ペン先を目で追う。ゆっくり10秒間かけて1周行う。
⑩反対回りにして10秒間行う。
⑪8の字に目標物を追う
顔の前からペンを「8の字を横に倒した形」にゆっくり動かし、そのペン先を目で追う。ゆっくり10秒間かけて1周行う。
⑫反対回りにして10秒間行う。
⑬寄り目にして目標物を追う
顔の正面の目の高さで、40㎝ほど離れた位置にペンを持つ。ペンをゆっくりと顔に近づけていく。寄り目をして、ペン先に視点を合わせ続ける。鼻先まで近づいたら、ペンをゆっくり離していく。このときも、ペン先に視点を合わせ続ける。この往復を30秒間行う。
⑭目をギュッとつぶって、パッと開く。
これをゆっくり10秒間行う。
⑮首をゆっくり回す。
反対回りも。これをゆっくり10秒間行う。
⑯目の周りの気持ちいいところを押す。
これをゆっくり10秒間行う。