
今年も10月26日から、全国の鉄道事業者などを中心に、エスカレーターの安全利用を呼び掛けるキャンペーンが始まりました。
エスカレーターは、駅や施設で垂直移動する際の強い味方。使うのが当たり前とも言えるなか、中にはエスカレーターに恐怖感を持ってしまう「エスカレーター恐怖症」の人も。
エスカレーターとの上手な付き合い方を考えてみます。
危険を呼ぶ?エスカレーターでの歩行

毎年、全国の鉄道事業者や施設管理者、自治体などが合同で、エスカレーターの安全利用を呼び掛けるキャンペーンが展開されます。
2020年は10月26日から「エスカレーター “歩かず立ち止まろう” キャンペーン」として、エスカレーターでは歩かずに乗る安全利用を啓発しています。
2019年に東京都内でエスカレーターによる事故で救急搬送されたのは1,428名(東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」令和元年)。
過去5年間で最多を記録するほどで、実はしばしば起こっている事故といえます。
接触による衝突・転倒事故を防止するのはもちろんのこと、骨折やケガ、麻痺などの病気で片側の手すりしかつかめなかったり、小さい子どもと並んで乗ったりすることからも、みんなでエスカレーターのベルトにしっかりつかまって歩行せず、安全に利用することは大切なことです。
何気なく使うからこそ、考えてみたいエスカレーターのこと
すっかり生活に定着しているエスカレーター。何気なく利用している方がほとんどでしょうが、告白します。本記事筆者の私はエスカレーターに乗るのが怖いのです。とくに長いエスカレーターは大の苦手!
上りでは、昇り始めはまだしも、高所に差し掛かると、後ろに倒れてしまうのではないかとの恐怖感でだんだん姿勢は前傾に、ベルトをギュッとつかむ手もじんわり汗ばむような感覚です。
逆に下りは、乗り初めてすぐ、高低差が視界に入ると生きた心地がしません。ひたすら上方を向いて時が過ぎるのを待ちます。
東京の地下鉄にはいくつか地表から深い位置にある駅があります。新御茶ノ水駅や永田町駅などが思い浮かびますが、高低差がある駅に長いエスカレーターは付きもの。
極力その駅は使わないルートを猛検索! しかし、不意に思わず長いエスカレーターに遭遇し、階段やエレベーターが見当たらなかった時はどうしようもありません。
電車の進入進出時には強い風が吹き込んで恐怖感は倍増し、まさに地獄。ところが周囲にこのことを話しても、不思議がられる程度のリアクションが多く返ってきます。
この感覚、伝わっていると良いのですが、ひょっとして自分だけなのかも?

エスカレーター恐怖症は不安症の一種⁉
「エスカレーター_恐怖症」で検索してみると53万件以上がヒットします。
体験談や悩み相談など、自分だけではないようなのでホッとしつつも、調べてみると「限局性恐怖症」という不安症の一種に入りそうです。雷恐怖症や高所恐怖症といったものと同じジャンルのようです。
解決には、恐怖心の引き金となっているものに、徐々に繰り返し向き合わせること(曝露療法)だそう。
人気のマンガに掛けるわけではないですが、全集中の呼吸で長いエスカレーターに徐々に繰り返し乗れば、いくらかエスカレーターという鬼を克服できる兆しも見えてくるのでしょうか。
記憶をたどると、私のエスカレーター恐怖のきっかけは、幼い頃に地元のスーパーのエスカレーターで転倒したことです。
それもあってか、エスカレーターの空いた片側を駆け上がり(下り)する人とすれ違いそうになる際には、ぶつかって倒れないか、つい身構えてしまいます。
以前に東京駅で、スーツケースが勢いよく滑り落ちていくさまを見かけたときには、あれに巻き込まれていたらと思うと寒気がしたものです。
しっかりベルトにつかまって歩かず、荷物からは手を放さずに安全に利用したいですね。
限局性恐怖症のかたのためにもエスカレーターでは歩かず立ち止まろう
エスカレーター歩行の要因は、片側を空けて乗る習慣が大きいでしょう。
諸説あるものの、大阪の阪急梅田駅で1967年に設置された長いエスカレーターで、右手で手すりをつかむ理由から、歩く人のために左側を空けるようアナウンスされたことや、東京の地下鉄新御茶ノ水駅に1969年に設置された長さ41メートルのエスカレーターがあまりに長く、止まっていると時間がかかることから、1989年頃に自然発生したことが、エスカレーターの片側空けの発祥とされています。
エスカレーターで片側を空けるのは、マナーとして定着している感もあり、空いている側に立ち止まると後ろから急かしてくる人もいます。
ただ、実は両側に乗る方が効率的で速く移動できるといった論文も多く、なるほどエスカレーターに対する意識はそれぞれ千差万別、一筋縄ではいきません。
私は個人的に片側を空けて乗るのは一概に悪いこととは思っていません。
以前に高齢の方の後ろで乗った時、降り口で滞留してしまい、危うく転びかかったことがあります。
片側が空いていたので、かわすことができましたが、両側立ちで逃げ場がなければ将棋倒しの可能性もあったでしょう。
自動車の予測運転のように余裕をもって乗ること、これもエスカレーター恐怖を少しでも和らげる方法かもしれません。

この「エスカレーター “歩かず立ち止まろう” キャンペーン」は11月30日までの実施です。
エスカレーターの安全な利用を意識してみる良い機会ですし、個人的には、ちょっとだけエスカレーターに恐怖心をもっている人がいることを知ってもらえると、ありがたいと思います。