発芽スイッチがオンになれば毒は消える
前回の記事:【玄米は体に悪い?種である玄米の外皮成分は毒!そのまま炊くのがNGな理由】
小豆や大豆をゆでるときには、一晩水に浸してから、火にかけます。この「おばあちゃんの知恵」は、実は、玄米の毒性を解除する炊き方でもあったのです。
小豆や大豆も、玄米と同じく植物の種であり、その外皮には猛毒の酵素阻害剤であるABA(アブシシン酸)が含まれています。
しかし、種を長時間、水に浸すことによって、種が発芽することで酵素阻害剤は代謝され、無害なものになります。小豆と大豆は12時間、玄米は17時間の浸水で、ABAの持つ酵素阻害剤としての毒性が消えることが判明しています。
玄米の第2の毒であるフィチン酸も、17時間浸水するとミネラルとの結合が離れ、ミネラルの吸収を阻害しなくなります。さらに、単独物質となったフィチン酸は、腸内に蓄積された腐敗物などの毒素を吸着して排出するなど、体にプラスの働きをしてくれるようになります。
つまり、玄米を17時間以上水に浸し、発芽スイッチがオンになれば、玄米の毒は消えるのです。
高温にならず、糖化が起こらない一般の炊飯ジャーや土鍋で炊けば、玄米の第3の毒であるアクリルアミドの発生も防ぐことができます。
ただし、玄米は発芽するとき発芽毒を出します。そのため、玄米を浸しておいた汚れた水は捨て、きれいな水に洗い換える必要があります。
こうして炊いた玄米は、毒がなく、モチモチとしたおいしい炊き上がりになります。
発芽玄米となり栄養も飛躍的に増える
前回の記事:【玄米は体に悪い?種である玄米の外皮成分は毒!そのまま炊くのがNGな理由】
17時間以上浸水すると、玄米はわずかに芽を出します。この発芽玄米は、眠っていた酵素が活性化し、発芽に必要な栄養を内部に増やしていきます。そのため、玄米よりもさまざまな栄養価が高くなります。
発芽玄米では、アミノ酸が玄米の2.5倍に増え、ビタミンB1、カルシウムなどのビタミンやミネラルも増加。ストレス軽減作用のあるGABAや、血液をサラサラにするフェルラ酸も飛躍的に増えます。
17時間浸水玄米の10のメリット
- ABA(アブシシン酸)の解除とフィチン酸の分離により、消化が極めてよくなる
- ABA(アブシシン酸)の解除で最大の毒が消える
- 圧力鍋の高温調理ではビタミンB1は半減するが、その損失もなく、発芽することでむしろビタミンは増える
- フィチン酸との結合が離れることで、ミネラルが体に吸収されやすくなる。また、発芽時にはカルシウムが25%アップするなど、ミネラルも増える
- 分離し単独になったフィチン酸は、アンモニア系毒素などの腸内毒素を吸着し排せつする。貧血や高血圧も防止する
- 食物繊維が増える。これにより、ナトリウムや胆汁酸を吸着、排せつすることで、高血圧の正常化や動脈硬化の予防になる。腸内の腐敗物も吸着、排せつするので、腸内環境も整う
- GABA(ギャバ)が玄米の3倍に、白米の5倍に急増する。これにより、脳の血管の病気やアルツハイマー病を予防できる
- アミノ酸が玄米の2.5倍、白米の4.5倍に増える。特にリジンは、玄米の2倍、白米の4倍に増える
- フェルラ酸とビタミンEのひとつトコトリエノールなどの抗酸化物質が増える。それにより、血管が強化され、血小板凝集を強く抑制する
- 圧力鍋を使わなくてもモチモチした炊き上がりになるので、高温調理による糖化(Ag E)が起きない
17時間浸水玄米の炊き方
玄米の毒が消えてモチモチで消化がよくなる!
▼材料
玄米 2合
▼作り方
❶玄米を水に浸して17時間置く。よく見ると、細かい泡や汚れが浮き出ているのがわかる。青臭さも感じられる
❷浸した水は発芽毒が溶け出た状態なので、水を捨て、新しい水で1〜2回すすぎ、ざるに上げる
❸炊飯器に入れ、玄米モードの指定の目盛りまで水を加え、炊く
❹炊き上がったら、しゃもじで全体をふっくら混ぜ合わせる
玄米の農薬はだいじょうぶ?
農薬を使って栽培された米は、玄米の糠の部分に農薬が凝縮して残存しています。そのため、できれば無農薬・無化学肥料で育てられた在来種の玄米を選ぶのが理想です。完全無農薬の玄米を手に入れるのが難しい場合は、特別栽培米(通常に比べ農薬使用量を半分以下に削減して栽培された米)など、なるべく農薬を使わずに育てた玄米を選ぶとよいでしょう。
しかし、「17時間浸水玄米」の炊き方をきちんと守って炊くのであれば、農薬についてあまり神経質になる必要はないでしょう。というのも、農薬の成分は多くが水溶性で、長時間浸水している間に、農薬が水に溶け出していくと考えられるからです。
17時間の浸水が終わったら、玄米を浸けておいた水を捨て、新しい水で1〜2回きれいにすすぎ、炊飯前に米をざるに上げてしっかり水気を切ります。こうして炊けば、残留農薬をかなり取り除けると思います。