ゆほびか ゆほびか
  • 文字サイズの変更
  • 大
  • 中
  • 小
  • SNS
  • twitter
  • facebook
  • instagram

【蛇窪神社】【白蛇さま】ご鎮座から700年にわたり神々に豊穣の祈りを捧げてきた東京の白蛇さま

鎌倉時代に生じた白蛇さまとのご縁

手水舎。参拝はまずはここから

「品川区の白蛇さま神社に、よく行列ができている」との噂を耳にして、とある巳の日に蛇窪神社を訪ねました。

 実際、拝殿に行列があり、御朱印を待つ人の姿もありました。己巳の日や大祭の日には、さらに多くの人が集まります(現在はコロナ禍により距離を取っての参拝が呼びかけられています)。

 なぜ、それほどの人気を博しているのでしょうか。蛇窪神社の齊藤泰之宮司
にお話をうかがいました。

 「当神社の正式名称は天祖神社と申しますが、先日、通称を蛇窪神社に変更いたしました。

 このあたりはもともと蛇窪と呼ばれておりましたので、旧地名を復活させることで、地元のかたにより親しみを持っていただき、地域の発展にもつなげたいという思いがございます。

 当神社の由緒を簡単にご紹介しますと、698年前の鎌倉時代にさかのぼります。当時、武蔵の国(現在でいう東京埼玉一帯)が、大干ばつによって深刻な飢饉に陥りました。

 その頃、当神社は蛇窪の地主の神として龍神が祀られている祠だったのですが、大田区大森にある厳正寺の住職が訪ねて来られ、雨乞いの断食祈願を1週間行いました。

 すると大雨が降り、飢饉を免れたのです。この神恩に感謝して神社を作ったのが当神社の始まりです。

 興味深いことに、厳正寺では逆に雨が降りすぎて災害が起こらないように水止めを祈願する水止の舞が口伝で伝わり、東京都の無形民俗文化財になっています」(齊藤宮司)

弁天社の祠周りには7体の白蛇さまがいる

白蛇さまが夢枕に現れ元の住みかを懇願した

 蛇窪という旧地名にあるとおり、この地域は白蛇さまとの並々ならぬご縁があったようです。

 「白蛇さまの縁起ですが、鎌倉時代に現在の社殿の左横、消防団の詰所があるあたりに清水が湧き出る洗い場があって、そこに白蛇さまが住んでおられたそうです。

 しかし、その洗い場はいつしかなくなってしまい、白蛇さまは現在の戸越公園あたりに移り住みました。

 するとあるとき、森谷という旧家の当主の夢枕に白蛇さまが現れて、1日も早くもとの住みかに返してほしいと懇願したそうです。

 森谷氏が当神社の宮司にそれを伝えたところ、宮司は弁財天をお祀りする弁天社の建立を決めました。広島の厳島神社のご神体をいただき、池を掘って中央に小島を設け、そこに白蛇さまの石祠を作ったのです。

拝殿正面に下げられた蛇窪の提灯

 昭和29年に有志のかたがたのご浄罪をいただき、お社の場所を移して上屋や弁天池も新たに造営したのが、現在の弁天社になります。

 白蛇が白龍に変わるといういわれのもと、弁天社の祠には7体の白蛇さまがおられます。そして、8体目として、全長8メートルの白龍が弁天社の境内に建立されています。

 このほかにも、当神社では随所に白蛇さまがおられます。神様のお使いである白蛇さまを通じて、願いを届けていただくという信仰によるものです」(齊藤宮司)

 蛇窪神社の境内には弁天社のほか、お稲荷様もあります。

拝殿の賽銭箱。その先に龍や白蛇彫刻の飾られた祈願場がある

 「お稲荷様は、京都の伏見稲荷大社のご分霊をいただいており、家業繁栄、家内安全のご神徳があります。

 お勧めの参拝順路は、手水舎→拝殿→ 撫で白蛇→弁天社→お稲荷様という流れです。白蛇で再生の力をいただき、願いを神様にお取り次ぎいただいたのち、お稲荷様で無事の実りを祈願します。

雨乞いと水止の両方でほどよく雨を降らせ、実りを得てきた歴史の名残です」(齊藤宮司)

撫で白蛇
弁天社の祠
弁天社前の白龍
お稲荷様の鳥居
お稲荷様の祠

白蛇さまのご縁日には多くの参拝者が集う

 巳の日や己巳の日には、特別祈願や特別な御朱印も頒布されます。

 「巳の日には、ご祈願の祝詞の中に『ゆかりあるご縁日に』という言葉が入ります。白蛇さまのご縁日で、神様に、より願いを届けてくださる日とされています。

 ご祈願の際は、ほら貝を奉奏します。これは龍神様へのご挨拶です。そして、荒々しい龍神太鼓を叩きながら大祓の詞を奏上して罪穢れをきれいに祓い清めていただきます。

 拝殿でご祈願をする場の上部には、白蛇さまの彫刻がお祀りされておりますが、これは、お神輿の屋根にも乗せて練り歩きます。

 お神輿に乗ると和魂が荒魂に変わると言われ、担ぎ手のかけ声と荒々しい担ぎ上げによって神様の力を奮い立たせ、勢いを増して再び社殿の中に収めます。これが神様の力を増幅させ、ご利益をさらに授かれるのです。

 毎年9月には、蛇窪祭という名称で例大祭を行います。龍神様のほら貝と和太鼓を演奏しながら、雨乞いと断食祈願を神輿練りと同時に行うという、意義深い神事です(神輿練りの神事は2年に1度)。

 群馬県老神温泉の白大蛇神輿も招き、岩国の白蛇や北海道鹿追町の白蛇姫まつりの物産展示も行います。

 己巳の日や蛇窪祭には、全国から大勢が来られるので、心苦しくも、安全面から入場制限をさせていただくことがあります」(齊藤宮司)

拝殿内の龍画。7月~年末は昇り龍、新年~6月末は降り龍になるよう向きを変えて飾られる

皆様のさまざまな思いを清らかにする

 参拝者数が増える中、齊藤宮司には、先代より受け継いだ変わらぬ心がけがあるそうです。

「参拝にいらしたかたは、さまざまなことを願われます。その思いを清らかにするのがお祓いの言葉であり、我々の役目です。

 皆様をお迎えするために、早朝より境内を掃き清め、常に清浄を心がけております。

 そして、いただいたご浄財はすべて神様のために、すなわち境内整備に使わせていただいております。

 また、当社の神職は、10月〜3月の冬期間にお水を体にかける禊行を行っています。

 本番は1月20日に行う大寒禊で、雪の日には、弁天社白龍池にて禊行も修めております。

 まだまだ未熟者の自分たちが人を祓うに当たり、謙虚な気持ちで参拝者の皆様と神様との橋渡しができるよう心がけております」(齊藤宮司)

白蛇さまがもたらす最大のご利益はご縁

拝殿の天井付近には白蛇さまの彫刻がお祀りされている。この彫刻はお神輿にも乗せられる

 最後に、気になる白蛇さまのご利益についておうかがいしました。 

 「金運財運を求めて来られ、達成されたかたが多くおられます。商売で成功したかたやロト6で3000万円が当たり、会社を倒産させずに済んだというかたもおられます。

 また、当神社の由緒と同じように、夢枕で白蛇が出たので、当神社をお参りして宝くじを買ったら当たったというお話をよく耳にします。

 このほか、病気が平癒されたというかたなどもおられますが、白蛇さまの一番のご利益はご縁です。

 清い志を持って努力を怠らなければ、よいご縁が結ばれて、自分の身の回りが動き出すといわれております。

 それは商売繁昌にも通じます。とは申せ、人間の価値は収入の大小ではございません。

 たいせつなのは、やりがいや生きがいです。他人への施しができる力と心を持てる人間になることこそが、何にも代えが
たい財産なのです。

 そうして、人生の最終地点までの道しるべを導いてくださるのが、白蛇さまの伝承です」(齊藤宮司)

 令和元年12月26日に、長い歴史を持つ大鳥居と同じひのきの大鳥居を新たに建立されたとのことです。

 この機会に、白蛇さまのお導きを得られてはいかがでしょうか

岩国の白蛇の脱皮が入った夢巳札は巳の日のみの配布で体数限定
陶器で作られた白蛇の開運置物
蛇窪神社
弁天社
蛇窪大明神

基本の御朱印は3種類。このほか己巳の日限定の御朱印があり、受ける人の大行列ができる。

蛇窪神社(正式名称:天祖神社)
◉住所
東京都品川区二葉4 丁目4 番12 号
◉御祭神
天照大御神、天児屋根命、応神天皇
•厳島弁天社:市杵島姫神、田心姫神、湍津姫神、蛇窪龍神、白蛇大神
•伏見稲荷社:稲荷大神
◉アクセス:最寄り駅は東急大井町線中延駅とJR 西大井駅。かつて「蛇窪駅」という名称だった東急大井町線戸越公園駅から向かう「開運ルート」もお勧め