生命エネルギーを整えて根治に導く
当院には、どこに行っても治らない、いわゆる難病の患者さんが「遠絡療法」を求めて全国から来られます。例えば、帯状疱疹後神経痛や慢性疲労症候群、CRPS(複合性局所症候群)、線維筋痛症などの患者さんです。
副鼻腔炎も原因によっては治療が難しく、好酸球(アレルギー反応に関係する白血球の一種)によって起こる「好酸球性副鼻腔炎」は、国の指定難病になっています。
さて、副鼻腔炎の話に入る前に、遠絡療法がどんな治療法なのかをお話ししておきましょう。
これは、医師の故・柯尚志先生が、西洋医学と東洋医学それぞれの限界を補うために確立した新しい療法で、1万例を超える臨床経験をもとに、治療が体系づけられています。
実は私の妻も、遠絡療法に救われた一人です。15年ほど前、原因不明の後頚部(首)の痛みが続き、東西両医学の治療を尽くしても改善しませんでした。思い余って柯先生を訪ね、遠絡療法を受けたところ、痛みが瞬時に消失したのです。
遠絡療法のすばらしさに感動した私は、そのとき迷うことなく、遠絡療法の道に進む決心をしました。
遠絡療法で重視しているのは、体内を流れる「生体の流れ(ライフフロー)」です。これは、血液、リンパ液、ホルモン、イオン、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質、さらには目に見えないエネルギーなど、生命活動の流れのことです。
これらが全身を滞りなく循環していれば、心身ともに健康な状態を維持できます。しかし、どこかにつまりがあったり、流れが滞っていたりすると、原因不明の痛みや症状が出てきます。その滞ったライフフローの流れを円滑にし、全身を活性化するのが遠絡療法です。
口呼吸も治ってのどの渇きも解消
遠絡療法では、ライフフローが流れる道すじを「ライン」と呼びます。ラインは左右の手足に12本ずつ、体の中央に2本の計26本あります。このライン上にある治療点を刺激して、ライフフローの流れを促すのです。
副鼻腔炎も、手足にある治療点を刺激してライフフローの流れをよくすると、症状が改善していきます。症例を2つ、ご紹介しましょう。
Aさん(80代女性)が副鼻腔炎を発症したのは、12歳の頃だったそうです。以来60年以上、季節に関係なく、鼻水や鼻づまりの症状に悩まされてきました。春や秋は特につらくて、夜も眠れなかったそうです。
そんなに長く患っていた重度の副鼻腔炎が、10回ほどの遠絡療法ですっかりよくなりました。
B君(12歳男児)は鼻の奥がれていつも鼻がつまっており、鼻呼吸ができませんでした。就寝中も口呼吸で口が乾いてよく眠れず、集中力が続かず、日中もボーッとしていたそうです。
初めて治療を受けた日は、鼻呼吸ができてよく眠れたそうですが、翌日鼻づまりが戻ってしまいました。しかし治療を続けるうちに、鼻呼吸できる日が長くなっていき、5回で鼻づまりは解消。以降、鼻呼吸が普通にできるようになって、治療は終了しました。
アレルギーが起こる限界値を高める
副鼻腔炎は、鼻の左右に4つずつある副鼻腔に炎症が起こり、鼻腔と副鼻腔をつなぐ通り道(自然口)がふさがってしまう病気です。
通り道にがたまると、黄色いドロッとした鼻水が出たり、鼻がつまって息ができなくなったりします。また、鼻水がのどに落ちる後鼻漏、セキやタン、頭重、嗅覚異常などの症状も出てきます。
副鼻腔炎になりやすいのは、アレルギー体質があり、かつカゼなどでウイルスや細菌に感染したときです。その理由の一つを、遠絡療法では次のように考えています。
人はそれぞれ、生まれたときからアレルギーのコップを持っています。そのコップには、アレルギーを生じさせるさまざまな物質がたまっていきます。大気汚染、ストレス、ダニや花粉、食物などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)など……。
コップに入るものは、どの人も同じようなものですが、コップの大きさ(容量)は、人によって違います。コップが小さい人は、中身がコップからあふれ出てしまうため、アレルギーを起こすというわけです。
これが副鼻腔炎のベースにありますから、まずコップの容量を大きくして、アレルギーが起こる閾値(限界値)を高くする必要があります。
コップの容量を大きくするのは、容易ではありません。しかし、遠絡療法で体の調子を整えれば、それも可能です。
大脳の深部に働きかけて首から上の症状全般に効く
副鼻腔炎のように首から上の症状は、大脳の深部に位置している間脳(視床、視床下部、脳下垂体など。上図参照)のライフフローの流れが悪くなって起こります。特に下垂体の機能が低下していると、鼻炎の症状が出やすくなります。
そこで、今回ご紹介する遠絡療法では、手にある3点のポイントを押してその部分のうっ滞を取り、流れをよくします(詳しくは下記)。
ポイントの一つは、手の親指の付け根にあります。ここは遠絡療法が特に重要視している首のつけ根の骨(1番)に対応しており、脳へ行くライフフローの出入り口になります。ここがつまると、上にある間脳や脳幹部の流れが滞って首から上のさまざまな症状が出てきます。
逆に言えば、ここの流れがよくなれば、ライフフローがスッと流れ出し、不眠、冷え症、アレルギー、めまい、肩こり、しびれなど、多くの症状が改善します。
副鼻腔炎の治療点は、首から上の万能治療点でもあるのです。継続して行えば、右に挙げたような、鼻の症状以外の効用も期待できます。
実際の遠絡療法では、専用の木の棒で押したり、ソフトレーザーでポイントを刺激したりします。セルフケアで行う場合は、ボールペンなどのキャップの丸い部分、化粧筆のお尻の丸い部分などが使いやすいようです。先のとがったものは、皮膚を傷めるので使用しないでください。
遠絡療法のやり方
●刺激するポイント
右の鼻がつまっている場合は、左手の治療点を、左の鼻がつまっている場合は、右手の治療点を刺激する。
両方ともつまっている場合は、両手とも刺激する
【刺激ポイント❶】
首につなげるためのスイッチ。
場所は、手首のシワから親指幅1本分下の、親指側のグリグリした出っ張りの内側のくぼみ
【刺激ポイント❷】
首のつけ根(頸椎1番)に対応している部位。
脊髄と間脳の境目と対応している。場所は、親指を中に入れて手を握ったときに飛び出る関節の下、骨の内側
【刺激ポイント❸】
首全体に対応する部位。
場所は、親指のつけ根の骨に沿って手首の方向に下
がっていくと、手首のシワの外側寄りにある骨のくぼみ
●用意するもの
指で刺激をしてもよいが、棒状で、先端が丸くなっているものがあると便利。化粧筆のお尻部分や、ボールペンのキャップが丸い部分などがお勧め
※手伝ってくれる人がいるなら、刺激ポイントを押さえてもらってもよい
刺激のしかた
※ここでは先端の丸まった化粧筆を使用。
なければ指で押してもよい
1 刺激ポイント❶を、深く押す。これは首につながるためのスイッチ。手で押す場合は親指で刺激する
2 ❶の状態を維持したまま、刺激ポイントΤを押さえ、手首方向に向かって、小刻みに揺らすように強く押しもみする。1〜2分ほど行う。手で押す場合は、人指し指で刺激する
3 ❶ の状態を維持したまま、次に、刺激ポイント❸を押さえ、手首方向に向かって、小刻みに揺らすように強く押しもみする。1~2分ほど行う。手で押す場合は、人指し指で刺激する