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【歩いて腎機能を改善】慢性腎臓病への効果が実験で判明!透析中も無理なくできる

腎臓病の患者数は糖尿病患者より多い

 「慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)」という病名をご存じですか?これは、21世紀に入ってからできた新しい名称です。

 これまでバラバラの病気として扱われてきた腎臓病を、1つにまとめたもので、慢性(3カ月以上とされる)で経過している腎障害、腎機能の低下状態を広く指します。

 日本の慢性腎臓病の患者さんは、1330万人にも上ります。実はこの数字は、糖尿病の患者さんよりも多いのです。ですから、慢性腎臓病は、今や国民病ともいっても過言ではありません。

 腎臓病は自覚症状が少ないのですが、70代の3割と、80代以上だと5割が慢性腎臓病に罹患しており、体調が悪くなって受診したときには、すでに人工透析が必要となっているケースもよくあります。

 そうなると、週3~4回、1日4時間以上の透析を、一生続けなければなりません。このペースでは、行動の制限も出てきますから、心身への負担が大きくなります。

 元気で長生きするためには、若い頃から慢性腎臓病を予防する生活を行い、もし慢性腎臓病になってしまった場合も、悪化させないことがたいせつです。

 慢性腎臓病は、生活習慣病と深い関わりがあります。血圧や糖尿病、脂質異常症など血管や血流に障害をきたす病気があると、腎臓の血管にも影響し、腎機能が低下して、慢性腎臓病を引き起こすからです。

 また、腎臓そのものの病気である慢性腎炎や、薬の長期摂取による腎機能の低下も、慢性腎臓病の原因となります。

慢性腎臓病と生活習慣病の関係

実験で判明!運動が腎機能を改善する

 慢性腎臓病の治療は、薬物療法、食事療法、運動療法(腎臓リハビリテーション)、生活習慣の改善を組み合わせて行いますが、なかでも重要なのが、運動療法です。

 実は以前は、慢性腎臓病と診断されると、安静が求められ、運動制限が課されていました。運動をすると、タンパク尿が出て、腎機能が悪化するとされていたからです。

 私も、この「腎臓病患者は安静第一」という常識を信じていました。

 しかし、末期腎不全のラット(実験用のネズミ)を使い、血圧の薬によって腎機能を改善させる実験をしたときのこと。投薬したラットと、対照群として運動させたラットの腎機能が、なぜか同じように向上していました。

 常識通りなら、運動させたラットの腎機能は低下しているはずです。そこで試しに、ラットに運動をさせた後に投薬もしたところ、さらに腎機能が向上するという結果が得られました。

 この結果から「安静第一」に疑問を持った私は、その後も実験を重ねました。その結果、運動でタンパク尿が出る症状は一過性のものであることがわかり、長期的に見ると「運動は慢性腎臓病を改善する」という結論を得ることができたのです。

 座りっぱなし、横になりっぱなしの、いわゆる「安静第一」の生活をしていると、筋肉量が低下して虚弱化し、感染症や心血管疾患、抑うつ、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを引き起こします。

 例えば、トイレと食事以外は横になったままで1日を過ごすと、1%の筋肉量や筋力の低下が起こります。さらに、1日じゅう完全に安静にしていると、それだけでなんと2%の筋肉量や筋力が低下するのです。

 人は30歳を過ぎると、1つ歳をとるごとに、平均1%ずつ筋肉量や筋量が低下していきます。このデータから言えば、1日完全安静では、1年後にはなんと体は2歳も老化してしまうことになるのです。

横になりっぱなしなど「安静第一」でいるデメリット

 前述したように、慢性腎臓病の大きな原因となるのは、生活習慣病です。生活習慣病も、運動不足が原因の1つですから、腎臓病の人にとって、安静はこのうえない悪循環を招くといえるでしょう。

 逆に運動をすると、内臓脂肪が減る、筋量が増える、血流がよくなるなどの効果があり、生活習慣病が改善されていきます。すると、当然、慢性腎臓病の改善にもつながるのです。

誰もが続けやすいウォーキングが最強

 私が腎臓病の改善にお勧めする運動は、誰でも気軽に行える「腎機能改善ウォーキング」です。

 慢性腎不全の患者さんに、通常の治療に加えて、週3回、1日40分のウォーキングを続けていただいたところ、腎機能が改善したというデータもあります。

 また、別の研究では、ウォーキングをしていた慢性腎臓病の患者さんは、していない人と比べて、死亡率が33%低く、透析や腎移植を必要とする可能性が21%低いこともわかりました。

 ウォーキングは有酸素運動で、呼吸で大量の酸素を取り込みながら血液の循環をよくしてくれます。そして、糖や脂肪を燃焼させる全身運動です。

 そして、心肺機能の向上、体脂肪の減少、肥満の解消、血圧低下、インスリンの働きをよくする、善玉コレステロールの増加、血栓をできにくくする、免疫力アップ、寿命の延長などの効果があることも知られています。

 息切れするような激しい運動は、腎臓の血管が強く収縮し、腎臓に負担がかかってしまいます。この面でも、息切れが起こらない有酸素運動の腎機能改善ウォーキングがお勧めなのです。

歩ける範囲でがんばればいい

 ウォーキングは「1日1万歩が理想」とよく言われますが、足腰が弱っているかたは、歩ける範囲でがんばり、少しずつ歩数を伸ばしていけばだいじょうぶです。

 足腰に大きな問題がないかたは、1日20~60分のウォーキングを、週に3~5日行うのが目安です。歩数は最初、4000歩を目標にしましょう。6000~8000歩をキープできるようになると、腎機能の低下を防ぎ、寿命を延ばすことが期待できるでしょう。

 「ウォーキングのときにわざわざ着替えるのがめんどう」という人には、スウェットやスポーツウェアをパジャマ代わりにして寝ていただき、起きたらそのままの格好で出発することもお勧めしています。

 年齢とともに歩幅が小さくなりますが、大股で歩くほうが安定して、転倒しにくくなります。また、大きく歩くと見かけも若くなるので、ぜひ意識してみてください。

慢性腎臓病に著効!「腎機能改善ウォーキング」のやり方

 暑い夏や寒い冬、雨の日などは歩くのがおっくうになる人もいますが、大きなショッピングモールが近くにあれば、その中をウォーキングするのもいいでしょう。

 ウォーキングが習慣になると、「歩かないと気持ちが悪い」という状態になり、歩くことが苦ではなくなります。

 現在、透析を受けているかたにもウォーキングは効果があるので、ぜひ担当医に相談して、実践してみてください。