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【階段ウォーク】は歩く健康効果が4倍!自粛太り・高血圧・糖尿病を解消!足腰が超若返る

患者さんがコロナ禍で平均3㎏太った

 新型コロナウイルスの世界的な流行が始まってから、もう一年以上になります。この一年で、「下町のお医者さん」である当院にやってくる患者さんたちに、ある変化が見られました。コロナ渦以前よりも、平均で2~3㎏体重が増加しているのです。

「長引く自粛生活やリモートワークで太った」という人は多いと思いますが、医師の目から見ると、その傾向は顕著にわかります。

 私が患者さんにそう指摘すると、皆さん、口々に「やせないと」と言います。しかし、一度増えた体重はなかなか戻りません。太ったままやせない原因は、「運動不足」です。

 特に、ふだん通勤していた人でリモートワークになった人は、運動量が極端に少なくなっています。これは、往復の通勤もそうですが、社内でのちょっとした移動や仕事による外出もなくなったのですから、運動量の減少幅は想像以上でしょう。

 さらに、家にいることで、いつでも食べ物を口に入れられる環境になっているのもよくありません。少しお菓子をつまむだけでも、回数が重なり、毎日のこととなれば、体重は増加の一途をたどるわけです。

 体重の増加は、腰やひざなどの下半身の関節に負担をかけるだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病にもつながります。

 また、このような報告もあります。オーストラリアの研究機関が、1日に座っている時間が長い人ほど寿命が短くなるというデータを発表しました。運動をせずに、6~8時間以上イスに座っていると、顕著に寿命が短くなるというのです。

 在宅勤務や外出自粛で運動不足になることは、それほど体に悪いということになります。

太田光さんも階段ウォークを実践!

 運動不足を解消するためにジムに通いなさい、と言ってもなかなか続かないでしょう。また、新型コロナが流行すると、ジムに行きにくいという事情もあります。

 そこで、私が患者さんたちに勧めているのは、「歩く」ことです。歩くことなら、朝でも夜でも、自分の都合のいいときにできます。わざわざ歩くためだけの時間を作らなくても、買い物に出れば必然的に歩きます。

 シンプルな運動ですが、心身には大きな効果があるのです。1960年代までは、ウォーキングは運動と考えられていませんでした。運動としては負荷が低いですし、あまりに日常的過ぎるからです。

 しかし、今では研究が進み、ウォーキングは健康のために大いに勧められる運動として扱われるようになりました。しかも、お金もかかりません。

 もちろん、平地を歩くのもよいのですが、私が特に勧めたいのは、階段を歩く「階段ウォーク」です。

 体組成計などの健康器具メーカー「タニタ」では、「階段は天然のジム」と言われています。本社ビルにはもちろんエレベーターもありますが、社員の階段利用率がとても高いことで有名です。それほど、階段の昇り降りは、効率よく運動量を高められるのです。

 お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんも、毎朝4~5時に起床して、階段ウォークを30分間行うのを習慣にしているそうです。「年を取ってもお笑いの舞台に立ち続けるため」の体力作りだそうですが、56歳にはとても見えない若々しさの秘密は、ここにあるのかもしれません。

 階段を上がるときは、平地を歩くときよりも3~4倍のエネルギーを消費すると言われています。必然的に平地よりも足を上げて歩くことになりますから、股関節、太もも、ひざ、ふくらはぎの筋肉も使うことになります。

 足の筋肉をまんべんなく鍛え、運動性を向上させるため、ロコモティブシンドローム(運動器の衰えによる移動機能の低下)の予防にもなります。

 階段を見つけたら、「やせるためのボーナスステージだ!」と思って、ぜひ階段を使うようにしてください。私自身、駅や街中ではエレベーターやエスカレーターをなるべく使わず、階段を昇り降りするようにしています。

一歩一歩踏みしめるように昇る

 階段ウォークは、自宅マンションやデパート、近所の神社など、人が少ない階段を想定しています。駅の階段など、人の多いところでは、運動の効率よりも安全に気をつけるようにしてください。

 階段ウォークを行うときは、急いで上がる必要はありません。どんなに段差の低い階段でも、けっして一段飛ばしなどをせず、一歩一歩、踏みしめるように歩いてください。それでじゅうぶんな運動効果が得られます。降りるときも同様です。

 「階段と同じようなものだから」と、エスカレーターを歩きながら昇ったり降りたりするのは危険ですので、行わないようにしましょう。

 階段ウォークは、手すりにつかまって行ってもOKです。特に、足が悪いかたやご高齢のかたは、手すりにつかまりながら行いましょう。

 「新型コロナが流行しているし、手すりに触れるのは抵抗がある」という人は、手すりをつかまなくてもけっこうですから、手すりの近くで階段ウォークを行うようにしてください。もしもバランスを崩したときに、すぐつかまれる位置に手すりがあれば安心だからです。

 手すりの近くで行えば、階段を昇り降りするとき、視線が足元でなく、もっと先を見ながらできるのも利点の一つです。そうすることで、背筋が伸び、姿勢がよくなります。

 階段ウォークは、足に合った靴を履いて行うようにしてください。サンダルなどの脱げやすい履き物での階段の昇り降りは、滑ってケガをするリスクが高いのでやめましょう。

家の中ではとにかく動き回る

 私が患者さんによく勧めているのは、「ワンステップ、ツーダウン」の階段ウォークです。

 これは、上りは1階分、下りは2階分、階段を使って歩きましょうという意味です。目的地が5階なら、エレベーターを4階で降りて、1階分を階段で上がってください。目的地が1階なら、3階でエレベーターを降りて、残りの2階分を階段で降りましょう。

 これが楽にできるようになったら、次は「ツーステップ、スリーダウン」というように、歩く階段を徐々に増やしていきます。

 なお、階段ウォークは、心機能が衰えている人には不向きな運動です。心機能が人並みかどうかも、実は階段ウォークでわかります。

 デパートやショッピングセンターなどの階段は、子どもや高齢者でも歩きやすく作られています。この階段を手すりにつかまりながらゆっくりでかまいませんので、1階から3階まで上がってみてください。

 息切れせずに上がって来れる人は、「心機能が人並み」レベルです。途中で息切れして立ち止まってしまう人は要注意。労作性心不全の疑いがありますので、専門の医療機関で検査を受けることをお勧めします。

 また、股関節やひざなど、下半身の関節に痛みのある人は、無理に階段ウォークを行わず、平地を歩くか、足の痛まない運動をするようにしてください。

 家の中に階段がある人は、家でも階段ウォークを行えますが、個人宅の階段はデパートの階段ほどは歩きやすく作られていないので、じゅうぶん気をつけて行ってください。スリッパなどは滑りやすいので、脱いで行うのが無難です。

 また、階段に本や土産物などを置いている家もあると思います。階段ウォークを行う際、物が置いてあると危険ですので、これを機に階段を片づけるようにしてください。

 自宅に階段がなくとも、在宅時はとにかく「座り過ぎ」や「横になったまま動かない」というのを極力防ぐようにしましょう。

 外出自粛のため、家の中で映画を見たり、本を読んだりするのはけっこうですが、横になったまま、何かを食べながら、何時間も動かない……というのは、健康にとっては最悪の状態です。

 ちょっとトイレに立ったり、部屋を片づけたり、ストレッチしたりなど、事あるごとにちょこまかと部屋の中を動き回るようにしましょう。

家の中では座ったまま、寝たままで生活しないように!
ちょっとしたことで、いちいち動き回ることが大切

 無駄な動きが多いくらいのほうが、健康維持にはプラスになります。少なくとも30分に1回くらいは立ち上がるようにしてください。

 階段ウォークやこうした無駄な動きも、積み重ねるとけっこうな運動量になります。この積み重ねが、あなたを肥満や生活習慣病から遠ざけ、健康を保ってくれるのです。

生活習慣病を予防する!秋津医師も実践する「階段ウォーク」のやり方

●一歩一歩、踏みしめながら昇る

●急がず、ゆっくりでOK

●手すりにつかまるか、手すりの近くで行う

●できれば、目線は足元ではなく、先を見る

※「ワンステップ、ツーダウン」(昇りは1階分、降りは2階分)を目安に行う※息切れする場合は、足に痛みがでる場合は行わない

正しい姿勢で歩くと体の深層部の筋肉が鍛えられポッコリ下腹や便秘も解決する

体の深層部の筋肉が鍛えられる

 健康の第一歩は、「歩く」ことから始まると言っても過言ではありません。私も日頃から、よく歩くようにしています。

 私は毎朝、7時から愛犬を散歩に連れて行きます。だいたい30分ほど散歩するでしょうか。7時30分に帰ってきて朝食を取り、8時に家を出て、徒歩45分かけて、クリニックへ通勤します(たまに自転車を使うこともありますが)。

 朝9時までに、すでに1時間15分ほど歩いていることになります。歩くときのコツは、姿勢を意識して、背筋を伸ばすことです。

 こうすることで、体の深層部の筋肉(インナーマッスル)が鍛えられます。インナーマッスルが鍛えられると、内臓が引き上がり、消化管が圧迫されなくなります。それによって消化不良や便秘が解消され、ポッコリ下腹も解消するわけです。

 さらに、この歩き方だと胸を張るので、横隔膜が下がり、肺が大きく使えて呼吸機能が高まります。体内にたくさんの酸素が取り込まれれば基礎代謝が上がりますから、運動効率のよい、やせやすい体質になってきます。

 背筋を伸ばして歩くことは、すべての健康につながるのです。

 とはいえ、ふだんほとんど運動しない人にとっては、背筋を伸ばして歩くことさえハードルが高いと思います。日常生活に自然と「歩く」を増やしていきましょう。

 コツは、前項でも少しお話しした、「無駄に動く」ことです。例えば、食事のときは、食卓まで料理や食器を一品ずつ運ぶのです。コップを持っていったら次は箸、というように何度も往復するだけで、歩く歩数が増えます。

 床や畳に座って生活している人は、イスに座る生活にするだけで、立ち上がりやすくなる分、動くことが自然と増えてきます。

 今やほんとうに便利な世の中になったもので、テレビやライトを消すのに、リモコンすら手に取る必要がなく、「テレビを消して」と話しかけるだけで消せるスマート家電も出てきています。私たちは、体を動かす必要がなくなっているのです。

 便利だからと体を動かさなければ、どんどん不健康になっていきます。「便利は体に悪い」ということを意識し、細かく体を動かすことを忘れないようにしてください。

家事をしっかりやれば一石二鳥!

 「家事をまじめにしっかりやる」というのも一つの方法です。掃除機がけ、風呂掃除、洗濯物干しなどをきっちりやれば、これらの家事は全身運動になりますし、かなり汗もかきます。

 ジムなどに行かなくても、家の中で全身運動ができるのです。家もきれいになって心地よくなりますし、まさに一石二鳥です。

 また、コロナ渦で外出の減る今だからこそ、「毎朝、必ず体重計に乗る」ことが大事です。「昨日、あまり動いていないのに、食べ過ぎたかな……」と心の中で思っても、実際に数字を見ないと人は制限をかけられません。

 体重計に乗って、前日よりも体重が増えていたら、その日の食事は控えめにしましょう。これを繰り返すうちに、自然と体重と食べる量のコントロールができるようになってきます。

 ちなみに、私も毎朝体重計に乗りますが、BMI(※)が23の状態が私のベスト体重です。

※ボディマス(BMI)指数。BMI(㎏/㎡)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表される

 毎朝の計測でBMIが24になったら食べる量を控えたり、歩く距離を伸ばして運動量を増やしたりします。

 外出しなくても、家の中で歩いたり、ジムのように全身運動したりすることも可能なのです。在宅勤務や外出自粛の際も、ちょこっとした動きを積み重ねて、運動不足を解消し、肥満や生活習慣病を予防しましょう。