生活習慣病は薬では治らない
「いつまでも若々しくありたい」
「健康に長生きしたい」
というのは、多くの人が望んでいることでしょう。そのためにたいせつなことは何だと思いますか?
答えは、血管を柔らかく保つことです。
古くから「人は血管から老いる」と言われています。血管の若さとは、つまり血管の柔らかさのことです。
加齢や生活習慣の影響で血管が硬くなると、血流が悪くなり、肌の老化を招くだけでなく、高血圧、糖尿病、心筋梗塞(心臓の血管が詰まって起こる病気)、脳卒中、がんといった生活習慣病につながります。
なかでも重要なのは、全身の組織に酸素と栄養を渡す動脈です。血圧が高くなったり、動脈硬化が起こったりすると、現代医療ではすぐに薬で解決しようとします。しかし、生活習慣病は薬では治りません。
健康を保つ基本は、食べて動くこと。病原体に対抗する免疫の7割は、腸にあるといわれています。ですから、まず食べ物で腸内細菌のバランスを整えることがたいせつです。
そして、動物である私たち人間は、動き続けることによって全身のメカニズムが正常に機能します。特に、動脈は筋肉の中、筋肉の間、筋肉と骨の間などを走っているため、筋肉を動かすことによって刺激されると、血流がよくなります。
この「食べて動く」という生活習慣こそが、唯一、免疫力を高め、血管を柔らかくして、生活習慣病を予防・改善する基本なのです。
とはいえ、筋肉を動かすための運動はなかなか長続きしない、という人も多いのではないでしょうか。そこでお勧めするのが、「血管しごき」です。
やった直後に血圧が10~20ミリ下がる人も!
血管しごきは、私の恩師で細胞病理学の世界的権威であった故・妹尾左知丸先生が考案したものです。
私自身は、長年「活性酸素と病気の関係」について研究してきました。その中で、動脈の壁では2種類の活性酸素が産生されていて、両者のバランスによって血圧がコントロールされていることを発見しました。血管しごきは、そのバランスを整えることに有効であると確信した私は、以来50年間、自ら血管しごきを続けてきました。その結果、現在75歳にして、私の血管年齢は40代を保っています。
患者さんにも勧めていて、血圧が下がることも確認しています。血管しごきを行うと、行う前と比べて血圧がすぐに10~20㎜Hg下がるのです。降圧剤が不要になった人もたくさんいらっしゃいます。
血管しごきは、自分の手で行うのが最も効果的です。体を動かすうえで大事なことは、握力・顎力(噛む力)・歩行力の3つを使うことです。
私たちは、歩くことで脳の3分の1、噛むことでもう3分の1、手を使うことで残りの3分の1を使います。加えて、筋肉を動かすと、その周りにある動脈が刺激されて血流がよくなるだけでなく、筋肉に指令を出している脳の神経細胞が働くため、脳に行く血管が開いて脳血流もよくなります。
ですから、自分の手で血管しごきを行えば、脳の血管マッサージにもなって、脳卒中や認知症予防にもよりよい効果が得られるのです。
また、血管しごきは動脈に加えて静脈、毛細血管、リンパ管も一気に刺激できるので、新陳代謝が加速して美肌効果も得られます。
例えば、顔の血管しごきを行ってサーモグラフィーで見ると、わずか数分で頭部全体が真っ赤になるのがわかります。これは顔だけでなく、脳の中まで血流が増えている証拠。女性なら、翌日、化粧のりのよさが実感できるはずです。
寝たきりの高齢者など、自分でできない場合は家族がやってあげてもかまいません。血流をよくすれば、生活習慣病や認知症の予防になり、悪化を防ぐ効果も期待できます。
筋肉の下にある動脈を刺激する意識で行う
ここでご紹介するのは、足の血管しごきです。筋肉の6割は腰から下に付いています。特にふくらはぎは「第2の心臓」といわれているように、ふくらはぎの筋肉を動かすことは全身の血流をよくすることにつながります。
握力、顎力とともに歩行力がたいせつと述べた通り、足の筋肉を動かせば、その部分に対応する脳の刺激にもなります。加えて、下肢の血流、腸の血流もよくなるので、むくみや便秘解消にも効果的。骨盤内の血流もよくして温めるため、不妊症の予防にもつながります。
血管しごきのポイントは、手のひらや指で、刺激したい部分の皮膚を骨に向かって押し付けながら、血管をしごくイメージで上下左右に動かすこと。
動脈は組織の奥深いところにあるため、皮膚をなでるだけでは届きません。奥にある血管をしっかり刺激する意識で、痛気持ちいい強さでしごいてください。
足の血管しごきで気持ちよさを実感したら、ぜひ全身もやってみてください。手、頭、顔、肩、おなか、腰、背中とやって15分くらいです。それだけで30分マラソンしたのと同等の血流アップ効果が得られます。
足の血管しごきのやり方
❶手のひら全体や指を、血管ほぐしを行う部位にぴったり強く押し付けるか、しっかり握る
❷手で皮膚をなでるのではなく、骨に向かって強く手や指を押し付けながら、刺激が皮膚の奥にある動脈に届くように上下左右にずらして、血管をしごく
※手の爪は短く切っておく
1 鼠径部
イスに座り、両手の4本の指を両側の鼠径部(足の付け根)に当て、指を奥に沈めるように押し付け、上下や左右にずらしながら、奥にある血管をしごくイメージでマッサージする
2 太もも
両手のひらを太ももに密着させるようにして持ち、
筋肉を回転させるように左右に回して刺激する
3 ひざ関節
両手でひざを抱えるように持ち、ひざの裏や、お皿の周りをしっかりしごく。やりにくい場合はつまむように持ってしごいてもよい
4 足首周り
両手のひらを足首周りに密着させるようにして持ち、筋肉を回転させるようにして刺激する
5 足の甲
足の甲の骨の間を、指でしごく。終わったら、くるぶしや足指、足の裏を丁寧にしごくとさらによい