巨大な力を持ち、幸運を招くとされる動物。古代中国より、これらは瑞獣と呼ばれています。中でも代表的なものを四霊といい、麒麟、鳳凰、応龍、霊亀の四体です。
ここでは皆さまに、麒麟とはどのような存在で、どのような力を持っているのかをお話しいたします。
龍を研究するほどに麒麟が現れてきた
私はこれまでの活動の中で、龍や麒麟をはじめとした瑞獣の研究を重ねてきました。NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』のスタッフさんに、麒麟についてレクチャーし、談義を重ねました。
今でこそ麒麟とのただならぬご縁を感じている私ですが、子どもの頃に憧れていたのは龍でした。辰年生まれということもあり、龍好き・龍マニアとして育ち、龍の研究をするために、故郷の仙台から中国に移り住んでしまったほどです。
ところが、私が龍を追えば追うほど、不思議と麒麟がつきまとってきました。
子どもの頃、伊達政宗公の建物を見に行ったとき、そこに麒麟があしらわれていました。当時は、顔が龍で体が鹿という麒麟の姿を見て、かっこいいとは思えませんでした。
「龍のほうがかっこいい」「龍になりたい」と思っていた私に、母はこういいました。「お前は麒麟だよ。麒麟のようになりなさい」。
移り住んだ先の北京では、名所旧跡に限らず、重要な場所で必ずといってよいほど麒麟と遭遇しました。
特に驚いたのは、私の学びの場となった北京大学構内にも巨大な麒麟像があり、それは、学問の最高峰である北京大学にふさわしいと世界遺産の円明園から移設された時代のエネルギーが宿る麒麟像でした。
さらには帰国後、自分の知識が生かせる場所を探していたときに、風水界の巨匠、中華圏の風水師たちから「大麒麟」ともいわれていた塚田眞弘理事長との運命的な出会いを果たしました。そして、最初にいただいた言葉に感銘を受けました。「私たちの役目は、幸せになりたい人たちの黒子(陰の立役者)になること」。
実際、黒子となって今まで培ってきた統計学・環境整備学を伝えていき平和な社会を作るため、国際・風水協会の設立を果たしたのです。
このように、人生の節目節目で、私の前には麒麟が現れました。麒麟の知識が深まるにつれ、私は母の言葉の意味を知ることになりました。
麒麟はよい権力者が登場したときに現れる
麒麟とは、どのような存在なのでしょうか。まず、優れた子どもを麒麟児と呼ぶように、利発であるうえ、品位が高く、優しく、思慮深さを持つとされます。また、麒麟は平和と安寧の象徴でもあります。日本でも神社仏閣によく麒麟が飾られているのは、平和祈願のためです。
麒麟は争いを好まないため、戦乱の世ではなく、よい権力者が登場したときに現れるとされます。大河ドラマのタイトル『麒麟がくる』にも、そういう意味が込められています。
そして、龍との対比で見ると、麒麟の性格がよくわかります。龍は風水上、運気の象徴です。運気の流れる動きが龍体の動きであり、願望の実現を果たす主役となります。たとえるならば、皇帝様のようなナンバー1の存在です。
一方、麒麟は龍のそばにいるナンバー2、副官のような存在で、フォロー役を果たします。物事を進めるときに邪魔を除いたり、道標を置いたりして、うまく追い風状態に持って行くようなことをします。
芸能人が龍であるとすれば、龍のためによい仕事を選び取ってくるマネージャーは麒麟です。サッカーならフォワードが龍、ミッドフィルダー(司令塔)が麒麟というイメージです。攻守の組み立てを行う、大切なポジションということです。
世の中には、生まれながらにして龍タイプの人がいます。犠牲を払い、争うことも厭わず、ぐいぐいと一人でのし上がっていく経営者や政治家などは龍タイプです。
しかし、実際には龍の性質を持っていないのに、それに気付かずに龍になろうと頑張る人もいます。これをやっていると、どこかの時点で力尽きてしまいます。
麒麟タイプの人は、前述のように平和主義なので、人と争うことを避けながら、よい結果が出るように動きます。組織の真ん中にいて、龍をサポートする役割を果たすのです。
麒麟のポジションは真ん中であり太極
この真ん中というのは、麒麟を象徴するキーワードの1つで、風水の四神相応という概念から説明できます。四神相応とは、青龍・白虎・朱雀・玄武の四神が東西南北の方角にいて、その中央にある、風水上、とてもよい場所のことです。
例えば、京都はこの四神相応が成り立つ地になっています。江戸城(皇居)や北京の紫禁城もそうです。
四神の中心には、宇宙の根源を示す太極があるとされますが、ここが麒麟のポジションです。そして、皇帝=龍のポジションでもあります。
麒麟は皇帝の直属として、争いが起きないようにバランスを取って調整しながら、皇帝の意向を実現させていく役割を担います。
陰陽五行でいうと、木・火・土・金・水のうち真ん中を示す「土」を司るのが麒麟になります。
仁=思いやりを動物にしたのが麒麟
そして、麒麟を象徴するキーワードとして最も重要なのは「仁」です。これは、儒教の祖である孔子様が唱えた五つの徳(五常。下記参照)の中で、いちばん最初に出てくる徳です。
孔子様は、「仁こそ最高の道徳である」としています。日本の皇族方のお名前にも多い漢字です。
仁とはなんでしょうか。一言でいえば、思いやりです。麒麟とは、思いやりを司る動物なのです。
私は今こそ、みんなが麒麟にならなくてはいけないときだと思っています。
人を思いやって、人のためになにかをする。今はまさに、これが求められる時代ではないでしょうか。そして、仁を心がけると、結局、自分によいものが帰ってきます。
名経営者の松下幸之助さんは「世のため、人のためになり、ひいては自分のためになるということをやったら、必ず成就します」という名言を残していますが、この言葉も仁を表したものだと思います。
(次回に続きます)