股関節が硬いと肩こり、腰痛を招く
健康で長生きするためには、下半身を鍛えることが必要です。下半身の中でも、特に股関節周りの筋肉が重要になります。
「股関節回し」は、筋トレ初心者でも、股関節周りの筋肉を効率よく鍛えるのに非常に効果的です。
私は、治療家として数多くの患者さんに接し、その臨床経験から、体調の悪い人の中には、股関節の硬い人が非常に多いと感じています。
肩こりや腰痛、ネコ背、冷え症、むくみなどを訴える患者さんの体を見ると、股関節の動きが悪くなっている人が多いのです。
股関節は、骨盤と太もものをつなぐ球状の関節で、本来は大きく動く構造になっています。
また、体の中で最も大きな関節で、上半身と下半身をつなぐ要となる役割を担っています。二足歩行する人間の体を支えていますから、ここの動きが悪いと、歩く、立つ、座るといった日常の動きがスムーズにできなくなってきます。
股関節が硬いのは、関節そのものの問題ではなく、股関節周りの筋肉が硬くなり、股関節の可動域が狭くなって、動きが悪いことがほとんどです。
筋肉の一部分でも硬い状態のまま生活していると、周辺の筋肉に負担がかかります。その負担をかばおうとして、ねじれたり、傾いたり、体はゆがんだ姿勢をとってしまうのです。
股関節は、上半身と下半身をつなぐ関節ですから、ここが硬いと体全体がゆがみます。その結果、ネコ背や腰痛、肩こり、頭痛、関節の痛みなどが生じてくるのです。
股関節の筋肉の柔軟性が低下して歩きづらくなると、お尻や太ももの筋肉も衰えてきます。こうなると可動域はいっそう狭まり、悪循環に陥ります。足に踏ん張りがきかなくなってくるので、転倒のリスクも高まります。
また、股関節のあたりには太いリンパ節があります。股関節の筋肉が硬くなると、リンパや血液の流れが股関節のところで滞り、足のむくみや冷え症などの原因になります。代謝も悪くなりますから、下半身も太くなってきます。
体幹を支える腸腰筋が鍛えられる
股関節が硬くなる大きな原因には、運動不足と加齢が挙げられます。また、デスクワークで座りっぱなし、サービス業で同じ姿勢で立ちっぱなし、という場合も股関節周りの筋肉が硬くなり、可動域が狭くなります。
股関節の可動域を広げるためには、股関節周辺の筋肉を柔軟にすることがたいせつです。筋肉の中でも、もっとも重要なのは「」です。
腸腰筋は、ととで構成される、体幹を支える重要な筋肉です。大腰筋は、腰から始まり骨盤を通って、股関節近くの太ももまで延びる筋肉、腸骨筋は、骨盤の上部から始まり骨盤を通って、大腰筋と合流して太ももまで延びる筋肉です。
腸腰筋は、体の深層部にあるのでインナーマッスルと呼ばれます。外から触って、もんだりほぐしたりすることはできません。そこでお勧めしたいのが「股関節回し」です。
ひざを持ち上げて左右に回すことで、腸腰筋を効率よく鍛えて、柔軟にすることができます。
腸腰筋を鍛えると、連動して動く骨盤も正しい位置に収まります。また、股関節についているほかの大きな筋肉も柔軟になり、またそれにより腰や背中を支える筋肉や、足の筋肉も連動して柔軟になってきます。
股関節回しの10大メリット
股関節回しのメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
①股関節の可動域が広がる
②歩行がスムーズになる
③転びにくくなる
④姿勢がよくなる、ネコ背の改善
⑤ 消費カロリーが高まり、ダイエット効果が得られる
⑥疲労性腰痛の予防改善
⑦肩こりの予防改善
⑧腹部、ヒップの引き締め効果
⑨ 下半身のむくみが取れて足が細くなる
⑩冷えの軽減
簡単にできる股関節回しは、筋肉の柔軟性を保ち、美容にも健康にも有用な運動です。
筋トレ初心者でも楽々!腸腰筋を安全に効果的に鍛える股関節回しのやり方
腸腰筋を意識しながら股関節を動かす
「股関節回し」を、楽に安全に行うために、壁を使った方法をご紹介します。
ただ、ストレッチや筋トレは、漠然とやっても効果は得にくいものです。たいせつなのは、動かす筋肉を意識すること。動かす筋肉に触れたり、筋肉をイメージしたりして、「この筋肉を動かしている」という意識をもちながら行うと、運動効果は大きく違ってきます。
股関節回しで動かすは、太もものつけ根に手を当てて「この奥にある筋肉」とイメージしてみましょう。
股関節回しは、壁に片手をついてやる方法で説明します。片手でするのが不安な場合は、両手をついてもかまいません。
まず右足の股関節回しからです。
①壁に左手をついて、足を肩幅に開きます。股関節を意識するために、手を股関節のあたりに当てます。
②右足のひざを「1、2、3」と数えてゆっくり上げます。理想は、太ももは水平、ひざと足首の角度は90度です。
③②の状態のまま、足を外側に「1、2、3」と数えてゆっくり回します。
④ゆっくり足を下します。
⑤今度は反対に、ひざを真横にゆっくりと持ち上げて、内側にゆっくりと回し、元に戻ります。
※この一連の動きを1セットとして、5回行います。
※右足の股関節回しがすんだら、壁につく手を右手に替えて、左の股関節を同じように回します。
やり方のコツは、動きをゆっくりすることです。意識してゆっくりやれば、普段運動しない人にとっては、1セットでも効果はあります。