毎日食べているその食品が体に悪さをする
「頭痛持ちで、薬が手放せない」
「体がだるく、動くのがつらい」
「ささいなことでイライラする」
こんな症状に心当たりはありませんか?信じられないでしょうが、これらの症状は、あなたが毎日のように食べている「小麦」が原因かもしれません。
パンやパスタ、クッキーなど小麦の食品が、心身の不調を招くことが、近年、欧米では広く知られるようになってきました。そのメカニズムは後で説明するとして、まずは小麦によって起こりやすい症状を以下に紹介します。
・慢性的な疲労感、倦怠感
・頭痛、肩こり・関節痛
・食べ過ぎ、食後の胃もたれ
・腹痛、下痢と便秘を繰り返す
・アトピー、花粉症などアレルギー
・肌荒れ、乾燥肌
・集中力の低下、イライラ
・生理不順や重い生理痛
人によっては、これらの症状が重いこともあります。その場合、小麦をやめると、人生が劇的に好転します。そんな症例を紹介しましょう。
症例①
うつ病だったAさん(30代・女性)は、長年、食事やサプリメントで心身を整え、抗うつ剤をやめることができました。しかし、たびたび起こる片頭痛だけはよくならず、日々の生活に支障をきたしていました。
そんなAさんが、私の著書を読んで取り組んだのが、小麦の除去です。結果、体調は劇的に改善。休みがちだった会社にも毎日、通勤できるようになったのです。
「小麦を抜いたら、頭がスッキリしました。こんなに影響を受けていたのだ、と驚きました」と、Aさんは喜ばれていました。
症例②
Bくんは、授業中に立ち歩く、すぐにカッとなるなどの行動があり、発達障害(幼少時から行動や情緒で、特徴が見られる障害)の一つである、ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けていました。
中学1年生のときに、当院を受診。血液検査の結果、小麦や乳製品などへの遅発型アレルギー(数時間後あるいは数日後に、眠気や倦怠感、頭痛などの症状が出るアレルギー)があったため、これらを徹底的に除去する食事療法を実践してもらったのです。
その結果は目覚ましいものでした。以前は疲労感がひどく、学校に行くには車での送迎が必要でした。それが1カ月ほどで、歩いて通えるようになりました。
3カ月後には、友だちとのトラブルもなくなり、徐々に授業に集中できるようになりました。その後、Bくんは成績が上がり、進学校といわれる高校に進学したのです。
体に悪さをする食べ物の筆頭が小麦と乳製品
当院では、体の中の栄養状態を「最適」にすることで、病気を根本からよくするという治療を行っています。これを栄養療法(オーソモレキュラー)といいます。
栄養療法でいう「最適な栄養状態」は、一般的に知られている栄養摂取基準とは大きく異なります。
そして、何らかの症状が出ている場合、食事だけで最適な栄養状態に達することは非常に難しいため、サプリメントで不足している栄養を補います。
栄養をプラスすることよりも重要なのが、体に悪影響を与えている食物を除去することです。体に悪さを働く食物の筆頭格が、小麦なのです。
私がこれを知ったのは、Bくんのような発達障害の子どもたちを治療するようになったことが、きっかけでした。
日本での発達障害への対処法といえば、子どもの特徴に応じた過ごし方を提案して、必要であれば、症状を和らげる薬が処方されます。つまり、障害そのものの治療は行われていません。
しかし、海外では発達障害に対しても、医療による根本的な改善を目指す機運が盛んです。そうして積み重ねられた知見の中で、脳の正常な発達を促す方法として、奨励されているのが、小麦と乳製品の除去でした。
それを知った私は、なぜこれらを除去するのか、徹底的に調べました。その結果、一般の人にも悪影響がある、と確信するに至ったのです。
小麦には麻薬のような中毒性がある
ではなぜ、小麦が心身の不調を招くのかを説明しましょう。小麦には、粘りや弾力性のもととなる「グルテン」という、たんぱく質が含まれています。このグルテンが、次の二つの作用で、心身に悪影響をもたらすのです。
①腸に炎症を起こす
グルテンは分解されにくい特殊な分子構造をしています。そのため、十分に消化されないまま、小腸に到達して、腸粘膜に炎症を起こします。
炎症で腸の粘膜が弱くなると、通常は吸収されない未消化の食物が体内に侵入。これが食物アレルギーの要因になります。
つまり、小麦はアレルギーを起こしやすい分子構造なのですが、それにもかかわらず、頻繁に食べることで、腸には持続的な炎症が生じます。
すると、血糖値が上昇しやすくなり、脂肪の合成も促されることがわかっています。少しのパンやクッキーでも太り、糖尿病の危険性も高まるのです。
②脳の働きを阻害する
グルテンが代謝されてできる物質は、分子構造が麻薬のモルヒネと非常によく似ています。そのため、脳内に入ると、気分が高揚する、頭がボーッとする、イライラするといった作用を起こします。
また、麻薬と同様に中毒性もあるため、どうしても食べたくてがまんできなかったり、食べ過ぎたり、といったことも起こります。
グルテンの代謝産物が、脳の神経伝達物質の働きを阻害することも大きな問題。その結果、脳が正常に働かなくなり、記憶があいまいになる、うつや不眠、興奮などの症状を招きます。
ちなみに「全粒粉のパンならヘルシー」「国産小麦は安全」と、一般的に思われているようです。しかし、グルテンはこれらにも含まれるため、害があることに変わりはありません。
わずか2週間で劇的な体調の改善を実感できる
では、自身の体調不良にグルテンが関わっているかを見極めるには、どうすればいいのでしょうか。
最も簡単にわかるのは、2週間だけ、グルテンを含む小麦食品を食生活から抜く方法です。
なぜ2週間かというと、経験上、たいていの人が、それで体調の変化を実感できるからです。小麦の食品といえば、パンや麺類が思い浮かびますが、麦茶、ビールなど多くの食品にも小麦は含まれています。
また、意外に思われるかもしれませんが、小麦はしょうゆにも含まれています。ここまで厳密に行わなくてもいいと思いますが、多岐にわたる不快症状に悩まされている場合は、小麦の除去は厳密に行うほど、効果がはっきりわかるので、これらの食品にも気をつけましょう。
ここまでグルテンの害を説明してきましたが、実は牛乳や乳製品(ヨーグルト、チーズ、生クリーム等)に含まれる「カゼイン」というたんぱく質にも、同じ作用があります。
ですから、牛乳と乳製品の除去は、同時に実践するといいでしょう。ちなみに、バターはカゼインが入っていないので、除去しなくても大丈夫です。
2週間、小麦製品と乳製品を除去した結果、頭のスッキリ感、肌の調子、胃腸や便通の状態、体重など、体調に一つでもいい変化があれば、小麦や牛乳が自分の体に合っていないということになります。
ちなみに、私の経験では、多くの人がこの二つの除去で2㎏前後やせます。その後、いつもの食生活に戻すと、また不快な症状が出てくるはずです。ですから、その後は体調と相談しながら、食べても症状が出ない頻度を見極めていきましょう。
症状が重い場合は除去を続けることが必要ですし、3日に1日程度ならだいじょうぶという人もいます。とにかく連日、小麦と乳製品を食べないことがたいせつです。
海外では、グルテンを除去する食事法である「グルテンフリー」はすでにかなり浸透しており、レストランや機内食でも注文できます。
こ れだけ広まったのは、グルテンフリーによって体調がよくなる、アレルギー症状が出なくなった、やせるなどの効果を多くの人が実感したからこそ。
2週間の除去は大変に思えるかもしれませんが、得るものも非常に大きいです。ぜひお試しください。