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コロナ禍で急増!「眼精疲労」の回復に役立つ忍者の秘伝とは?

パソコンで仕事をしている人のほとんどが眼精疲労状態

 私たちの得る情報の8割以上は目からといわれています。よく見えるというのは、今も昔も重要なことなのです。

 例えば、戦国時代の諜報員ともいえる忍者にとって、目がよく見えるかどうかは死活問題でした。そのため、彼らは独自の目の鍛錬法を考え出したのです。

 以前、『偉人たちの健康診断』(NHK)という番組で、楽しみながら行える目のトレーニング法として、忍者の目の鍛錬法である「明眼之法」が紹介され、番組内で解説したことがあります。現代人にも大いに通じるところがあったのでしょう。予想以上の大きな反響でした。

 現代人が抱える目のトラブルでいちばん多いのは、眼精疲労とドライアイです。私のクリニックでも、コロナ禍の2年間で、これらの症状を訴える人が増えたように思います。

 実際、大手製薬会社による20~40代の男女1800人を対象とした、コロナ禍以降の心身の不調の調査を見ても、不調を感じる人の7割以上が「目の疲れ」を症状として挙げており、不調症状の第1位となっています。

 このように、コロナ禍で眼精疲労が増えた理由として考えられるのは、テレワークや自粛生活により、パソコンのモニターやスマホの画面を見る時間が増えたことが大きいでしょう。

 また、外出しないことで、タブレットで映画や動画を見る時間や、テレビの視聴時間が長くなったという人もいると思います。

 こうした状況がなぜ眼精疲労を引き起こすかというと、見たい対象に焦点を合わせる「ピント調節力」が低下するからです。

 近い距離で長時間、パソコンやテレビの画面を見続けると、ピントを合わせるための目の筋肉「毛様体」が使われっぱなしになります(下の図参照)。この状態が続くと、体のほかの筋肉と同様、疲労がたまり、こり固まるようになって、ピントが合わなくなるのです。実際、パソコンを見つめる仕事をしている人の98%は、眼精疲労を抱えているというデータもあります。

近くを見続けると毛様体筋が使われっぱなしになり、疲労がたまる。
遠くを見るとき、毛様体筋が緩み、目を休ませることができる

 言い換えると、画面を長時間見続けることをやめれば、眼精疲労は予防できます。1時間画面を見たら3~5分くらいは、遠くを見たり、目を閉じたりして、毛様体筋を休ませることがたいせつです。

ピント調節力を鍛える! 忍者が用いた「明眼之法」

 近年は、自分で毛様体筋のこりをほぐし、目のケアをする「目の体操」も知られるようになりました。冒頭でお話しした忍者の目の鍛錬法「明眼之法」も、この一つです。

 明眼之法にはいくつか手法があるようですが、その中でも特にピント調節力の向上に役立つのが、「八方眼付」と「暗眼付」という訓練法です(詳しいやり方は下記)。

 八方目付は、目を八方(全方位)に動かす訓練です。顔は動かさずに目だけを大きく動かして、自分が決めたポイントをしっかり注視しましょう。

 眼球を動かす筋肉や毛様体筋を使うトレーニングなので、ピント調節力を鍛えることができます。

 暗いところと明るいところを交互に見る暗目付は、夜目に対する順応力を高める訓練ですが、毛様体筋をほぐす効果もあります。

 眼球の色がついている部分の真ん中にある「瞳」と呼ばれる黒い部分を瞳孔といい、明るいところではこの瞳孔がしぼんで小さくなり、暗いところでは広がって大きくなります。ですから、明るいところと暗いところを交互に見ると、瞳孔の筋肉が動いて、そのことが間接的に毛様体筋のこりをほぐすことにつながるのです。

ラジオ体操のような感覚で気分転換に行うのがお勧め

 明眼之法を行う場合、目のリラックス法の一つとして気軽に実践してください。もともとは忍者が目の修行のために生み出した鍛錬法ですから、一般の人が真剣にやりすぎると、かえって目を疲れさせることになります。

 いつもと違う目の動きや使い方をすることで、目にほどよい刺激を与えることができます。「長い時間、スマホやパソコンの画面を見過ぎたな」というときに、ラジオ体操のような感覚で、気分転換に行うのがよいでしょう。

 また、先ほども少し触れましたが、「遠くを見る」ことも簡単にできる目のリラックス法です。遠くを見ている状態のときは毛様体筋が緩んでいるので、目を休ませることができます。

 先述のコロナ禍における心身の不調の調査では、肩こりや頭痛も5位以内に入っていました。肩こりや頭痛は、目の酷使や疲労が原因となっている場合もあります。目の疲れが改善されれば、頭痛や肩こりが軽快することも期待できるのです。

 さらにピント調節力の低下の予防は、老眼の発症や進行を遅らせることにもつながります。

まばたきを増やしドライアイを予防する

 最初にもお話ししました通り、近年増えている目の症状としてドライアイがあります。

 ドライアイは多くの場合、パソコンのモニターやテレビ画面を長時間見続けることで、まばたきが減り、目の表面が乾くことで症状が出ます。

 私たちはまばたきをすることによって、目の表面を涙で潤しています。まばたきが減ると、乾いた目の表面をまぶたの裏でこすってしまうので、チクチクとした痛みやゴロゴロ感が生じてくるのです。

意識的にまばたきを増やし、目の表面を潤すことで、ドライアイを予防することができます。

 生活環境の変化が進む中、いろいろな不調が出てきやすいものですが、目の疲労をためないだけで改善につながる症状もあります。「目が疲れたな」と感じたら、明眼之法など目の動きや使い方を変えて、疲労がたまらないようにしましょう。

疲れ目のリラックスに最適!忍者の秘伝「明眼之法」のやり方

❶ 八方目付

❶利き腕を前方にしっかり伸ばして、親指を立てて、その爪の1点を見る

❷爪の向こう側を見て、対象物のピントが合ったら、また視線を爪の1点に戻す

❸顔を動かさないで真上を見る。対象物にピントが合ったら、また視線を爪の1点に戻す

❹同様に右上を見て、爪に戻る

❺同様に左上を見て、爪に戻る

❻右を見て、爪に戻る

❼左を見て、爪に戻る

❽右下を見て、爪に戻る

❾左下を見て、爪に戻る

❿真下を見て、爪に戻る

⓫視線を右回り1周して、爪に戻る

⓬視線を左回り1周して、爪に戻る

※顔は動かさないで、目だけ動かす ※慣れれば親指を使わずに行ってもよい

❷ 暗目付

❶ 真っ暗になる空間と、日中の屋外のような明るい空間を探す

❷ 真っ暗になる空間に入り、目が慣れるのを待つ

❸ 明るい空間に出て、目が慣れるのを待つ

※❷、❸を2〜3回繰り返し行う

※無理はしない。気軽に行う
※屋外でやる場合は、太陽を見ないこと