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【とほかみえみため】【三種太祓】天の気を降ろしすべてを清める!唱えるほどに運が開ける秘伝の祝詞

皆さま、古川陽明と申します。私は現在、八幡神社の神職として、また顧問神主として、毎日ご祈祷を行う日々を過ごしております。

今回は、現在、静かな人気を集めている「とほかみえみため」という言霊について、ご紹介させていただきます。

1000年以上の歴史を持つ言霊

「とほかみえみため」の歴史は古く、文献上は平安時代にまで遡ることができます。その根拠は、平安時代に編まれた『江家次第』(ごうけしだい)という書物にあります。有職故実(ゆうそくこじつ)について書かれたもので、全21巻です。
 有職故実とは何かというと、朝廷や公家などが行っていた儀式や、法令、装束などの決まりごとであり、『江家次第』は今風にいうと公家のマニュアルといえるでしょう。
 その18巻に、亀卜(きぼく)に関する記述があります。亀卜というのは、亀の甲羅を使って行う古い占いの方法のこと。この亀卜を行う際に、「とほかみえみため」を唱えていたと書かれているのです。

吉田神道の秘伝中の秘伝だった三種太祓

 神道において「とほかみえみため」は「三種太祓」(みくさのおほはらひ)の一部とされています。三種太祓は文字どおり3つの祓いから構成された祝詞で、「太」は偉大であり、重要であることを示しています。
 吉田神道(※)を伝えた吉田流では、秘伝の中の秘伝、すなわち「極秘伝」として伝えられてきたことからも、どれだけ重要視されていたかがわかるでしょう。

※室町時代の神道家・吉田兼倶によって成立した古神道の流派。神道に仏教や道教などの要素を取り入れた、極めて精緻で合理的な祭式が特徴。

 下をご覧ください。吉田流の三種太祓は①天津祓(あまつはらひ) ②国津祓(くにつはらひ) ③蒼生祓(あをひとくさのはらひ)の3要素から成るのですが、この中の天津祓が「とほかみえみため」。つまり、この言霊には、天の気を降ろしてくるという意味合いが含まれています。

三種太祓 吉田流 陽

 天津祓の次が国津祓となりますが、この部分は「かんごんしんそんりこんだけん」と「りそんしんごんかんけんだこん」の2種類があり、陰の日、陽の日で唱え分けます。これらは、どちらも易の八卦を表しています。

 八卦は多くのかたが耳にしたことがあるでしょう。古代中国から現代まで伝わっているもので、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」の8つの要素で森羅万象を表します。断易をはじめとして、さまざまな占いや思想に取り入れられています。

 国津祓では、この八卦を8方向、すなわち自らの身体の周囲、土地の周囲、さらには国土まで、すべてを祓う神々としているのです。

 最後が蒼生祓。こちらは、自分自身だけでなく、地上すべての人を祓うという意味合いを持っていますが、内容を細分化すると「はらひたまひ」は「内清浄」といって、自分の内面、すなわち心と魂を祓い清める言霊であり、「きよめてたまふ」は「外清浄」、自分の外面、身体や周りを祓い清める言霊となっています。

 ここで重要なのは、「きよめてたまふ」の「て」です。一般的には「はらひたまひきよめたまふ」などと唱えることが多いのですが、「きよめたまふ」だと「清めてください」というお願いになり、祓いの言霊としては適切ではありません。「て」が入ることによって「すでに清められた」という意味になり、祓いの言霊として成り立つのです。

 このように、三種太祓は、3種の言霊それぞれで「天・地・人」を祓っています。
 ただ単に、まんべんなくすべてを祓い清めているというだけではなく、つながった意味を持っているところが重要です。

 また実は、三種太祓には「天・地・人」のみならず、「日・月・星」という要素も秘められており、吉田流では秘伝とされてきました。

「天・地・人」「日・月・星」を祓う言霊
●イラスト/菅澤真衣子

白川流の三種太祓は天皇になるための修行

「とほかみえみため」は1000年以上も前から伝わる言霊ですから、そこには、さまざまな思想が内包されています。

 例えば「とほかみえみため」の八音それぞれと八卦を対応させたり、「とほかみ」と「えみため」の2つに分けて陰陽があるとしたり、「木・火・土・金・水」の五行と対応させたりもします。

 中国の古代思想では、太極から陰陽が生じ、陰陽から四象が生じ、四象から八卦が生じるというように、世界の成り立ちを説明しています。「とほかみえみため」の8文字は、これらすべてを内包しているともいえるのです。

 また、「とほかみえみため」は「とおつ神えみため」でもあるとされています。

 とおつ神とは、「遠つ神」、すなわち「祖神(自分の先祖の神様)」のことを意味していて、この言霊を唱えることで、自らの祖先神を喜ばせることができます。

 さらには、他の神様との関連もあるとされています。その神様とは「宮中八神」(きゅうちゅうはっしん)です。かつて宮中で祀られていた神々のことですが、応仁の乱によって、祀られていた神殿が失われてしまいました。そのあとは、吉田神道の吉田家と、伯家神道(はっけしんとう※)の白川家がそれぞれお祀りし、明治時代に皇室へとお返しされています。

※神祇伯(じんぎはく。古代日本の律令制下で朝廷の祭祀を司った神祇官の長官)を代々世襲してきた白川家が伝えてきた古神道。シンプルで美しい祭式が特徴。

 この宮中八神と「とほかみえみため」を関連づけた三種太祓を伝えているのが伯家神道の白川流です。吉田流に比べると、国津祓の部分がなく、よりシンプルな祝詞です。

三種太祓 白川流

 その理由は、「とほかみえみため」自体が宮中八神とつながっているために、八卦がいらないとされるからです。また、吉田流と白川流では、同じ三種太祓でもその目的が異なっていることも重要なポイントです。

 白川流の三種太祓には、吉田流のそれと比べて、歌うような独特の節回しがついています。これは現代風にいうと、人をトランス状態へと誘導するための効果があるのです。

 白川流の三種太祓は、本来は8方向に位置した「八乙女」(やおとめ)と呼ばれる巫女が唱えるもので、祓いの対象は中央にいる東宮(みこのみや。皇太子)でした。

 8方向から「とほかみえみため」の言霊を受けることでトランス状態になり、さらに、天の気をその状態で受けるということです。これは、皇太子が天皇にふさわしい、自分自身を高めるための修行でした。

 吉田流も白川流も、「とほかみえみため」で天の気を降ろしてくるという部分は共通していますが、そこから先のアプローチが異なります。

 吉田流では、三種太祓が文字どおりすべてを祓うための祝詞であるのに対して、白川流の三種太祓は自分自身を祓い、自分を高めていくことを目的にしているわけです。

 現在でも宮中で「とほかみえみため」は唱えられていますし、この言霊だけでも天の気が降り注いでくる、まさに「天=全て」が含まれたものとなっています。

 ちなみに、重要な祝詞である「大祓詞」(おほはらひのことば)の中に出てくる「天津祝詞の太祝詞事」(あまつのりとのふとのりとごと)とは何を指すのか、という議論があります。

 国学者の大国隆正(おおくにたかまさ)という人が、『天津祝詞太詞考』という本の中で、天津祝詞の太祝詞事は「とほかみえみため」であると提唱して、それに賛同するかたもいます。

 私自身は、この見解に賛同していません。天津祝詞の太祝詞事は別の言霊であると考えています。

唱えることで天の気を降ろす感覚がわかる

 以上のお話をすると「『とほかみえみため』と唱えるだけではダメなのですか?」というかたがいますが、そういうわけではありません。

「とほかみえみため」と唱えるだけでも、天の気が降り注いできますし、実際に江戸時代には「とほかみえみため」だけを唱えるという流派も存在していました。

 ただ、「どうして天の気が降り注いでくるのか」がわかっていないと、十分にその力を受け取ることはできません。

 この点がわかりやすいのは、吉田流です。天の気を降ろし、結界を張り、自らを祓って天地の気を整え、自らを天地の気をつなぐ存在にする––という順序立てた祝詞を唱えることで、理論が自然と理解できるようになっています。

 とはいえ、天地の気をつなぎ、調和した存在になるというのは、やはり、実践してみないとわからない感覚です。

 ですから、三種太祓は毎日唱えることが重要です。ほかの祝詞に比べても短くて簡単ですので、“神道の念仏”だと思って、毎日唱えてみてください。

 私自身、吉田神道の三種太祓は、毎日唱えています。さまざまな修行を何十年と行ってきていますが、すべての修行はここに集約されるといってもいいでしょう。そして、日本人にとっては、一番簡単でわかりやすい修行だと思っています。

「とほかみえみため」を唱えると勝手に開運する

 毎日、三種太祓を唱えていると、「勝手に」開運していきます。

 もしあなたが今、人生がうまくいかないと感じているなら、理由は運気が詰まり、気の流れが滞っている状態にあるからです。

 なぜ気が滞るのかというと、気の流れが調和していないからです。三種太祓によってこれを調和させれば、自然と気が流れるようになり、運が開いていくわけです。

 祓いというと、掃除のように、悪いものを除去するイメージを持たれるかもしれません。しかし、実は、何かをなくすのではなく、行きすぎたマイナスをプラスにして、調和させること。陰と陽がちょうどよいバランスになることが重要なのです。

 もちろん、もっと劇的に運気を変える方法もあります。ところが、そういった方法はプリミティブ(原始的)な力を使うことが多いため、一時的には運気がぐんと上がったとしても、必ず反動があって、悪いことが起きたり、身体に影響が出たりします。

 すべてを調和させてくれる三種太祓には、そのような反動が出る心配はありません。
「とほかみえみため」は、先にも触れたように祖先神にもつながりますので、仏教的にいうなら先祖供養にもなります。ここからもわかるとおり、信仰は必要ありませんし、どんな宗教のかたでも、万能な力を発揮してくれます。

 まずは、三種太祓を無意識に口ずさむようになるぐらいまで唱えてください。言霊は唱えることが何よりたいせつです。
 実践と体感を重ねるうちに、どんどんと運気が変わっていくことを実感できるでしょう。

※本記事は『ゆほびかGOLD』2021年2月号の記事を抜粋・編集したものです。


『ゆほびかGOLD』2021年2月号の「とほかみえみためCD」特集では、古神道の祭祀に通暁した気鋭の神職・古川陽明先生が、流派や祭祀法に応じた四種類の三種太祓を含む11の秘伝祝詞を全身全霊で奏上した貴重な音源を付録CDでお届けします。
 このCDを流すだけで、強力な言霊の御力をいただけます。合わせて唱えていただくのもいいでしょう。
記事内では、秘伝祝詞の全文をご紹介するとともに、それぞれの祝詞が持つ意味と力について詳しく解説。あふれるご神気を全身で受け止めて運気を開いてください!

【付録CDのトラックリスト】
【一】三種太祓(みくさのおほはらひ)吉田流 陽 …自然に開運する最強の祝詞
【二】三種太祓(みくさのおほはらひ)吉田流 陰 …自然に開運する最強の祝詞
【三】禊祓詞(みそぎはらひのことば)吉田流 …宇宙と調和する祝詞
【四】護身神法(ごしんしんぽう)吉田流 初伝 …身体・精神・魂を調和させ全てを守り向上させる
【五】護身神法(ごしんしんぽう)吉田流 中伝 …身体・精神・魂を調和させ全てを守り向上させる
【六】三種太祓(みくさのおほはらひ)白川流 一 …トランス状態で自らが神へと変わる「招神」の祝詞
【七】禊祓詞(みそぎはらひのことば) 白川流 …裏九柱の神の力で祓い清める祝詞
【八】ひふみ祓(ひふみはらひ)白川流 …魂を震わせる天宇受売命由来の祝詞
【九】三種太祓(みくさのおほはらひ)白川流 二 …トランス状態で自らが神へと変わる「昇神」の祝詞
【十】内侍祝詞(ないしのりと) …宮中の巫女が唱える優しい祝詞
【十一】龍神祝詞・改(たつのきみのりと) …龍神の王である龍王の加護を得られる祝詞

一部立ち読み・ネット書店へ

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