20~30代の新たな老眼が激増中
老眼は、加齢によって、目のレンズの働きをする水晶体や、ピントを調整する筋肉である毛様体筋が硬くなり、調節機能が低下し、近くのものにピントが合いにくくなる状態のことを言います。
通常、老眼のこんな初期症状が現れるのは45歳がピークと言われていました。しかし今、これらの症状に悩む20~30代が激増しています。
この背景には、スマートフォンの普及があります。いわゆる「スマホ老眼」の人が増えているのです。スマホ老眼は、医学的には「調節緊張」と呼ばれます。近くのスマホを見続けた結果、一時的に老眼に似た症状が起こるのです。
あなたも、こんな経験はないでしょうか?電車や自宅などでスマホをずっと見ていた後、ふと顔を上げて周囲を見ると、視界がぼやけたり、見づらくなったりした。
長時間にわたってスマホの画面を見ていたことで、目のピントが近くに合ったままになり、元に戻りづらくなったために起こる現象です。
こうした状態が継続されたり、繰り返されたりすると、症状が重篤化し、老眼を早める危険性があります。視力の低下以外にも、肩こり、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気など、体全体の不調や病気につながることもあります。
眼精疲労のかげにほかの病気が隠れている!?
スマホ老眼の症状が進行すると、目が疲れる、ショボショボする、乾く、目の奥が痛む、光を以前よりまぶしいと感じるようになります。
症状はたいてい一過性で、一晩寝るとよくなります。しかし、ときには一晩休んでもよくならず、症状が頑固に続くことがあります。
これを医学的には、「眼精疲労」と呼び、単なる目の疲れである「眼疲労」と区別しています。眼精疲労は、何らかの手を打たなければ、自然には治りません。
不快な症状がいつまでも続き、その症状がさらに状態を悪化させることもあります。スマホ老眼でも、肩こり、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気などが起こることもあるでしょう。
また、目の病気が、眼精疲労の原因となっていることもあります。例えば、ドライアイ、緑内障(視神経が障害されて視野が狭くなる病気)、白内障(カメラでいうレンズの役割を果たす水晶体が濁る病気)、斜視、眼瞼下垂(まぶたが垂れさがる病気)などです。
また、度の合っていないメガネやコンタクトレンズも、眼精疲労の原因となります。クリニックで患者さんに接していると、そうした不適切なものを装用している人は、驚くほどたくさんいるものです。
先に挙げたような症状が出てきたら、一度は眼科で診察を受けることをお勧めします。
腕をグルグル違う方向に回すのもお勧め
スマホ老眼や眼精疲労の予防や改善には、日常のセルフケアも効果を発揮します。
最初にお勧めしたいのが、「目の遠近ストレッチ」です。パソコンやスマホなど、近くを1時間見ていたら、行うようにしましょう。
目の調節力を元に戻し、毛様体筋の緊張を防ぎます。また、スマホ老眼や眼精疲労に悩む人は、ひどい肩こりや頭痛に悩まされているものです。
スマホなどで画面を凝視する姿勢は、目に負担をかけると同時に、首や肩への過度な負担にもなっています。肩こりを解消すると、スマホ老眼や眼精疲労も楽になる傾向があるのです。
さらにもう一つ、私がぜひお勧めしたいのが、「耳回し」です。耳回しにより、耳から肩周辺までの血行が促進し、同時に耳に多くあるツボが刺激されて、肩のこりもほぐれていきます。
そのほか、肩甲骨を回すのもお勧めです。やり方は簡単で、腕を大きくグルグルと回すようにするといいでしょう。
この際のポイントは、左右の腕を同じ方向ではなく、片方を前に回したら片方を後ろにと、それぞれ違う方向に回すことです。
これらのセルフケアで、肩こりや頭痛まで引き起こしていた眼精疲労が、その場で楽になったという人もいます。
それほど、効き目が期待できるのです。ここで紹介した方法などを参考に、スマホ老眼や眼精疲労から、自分の目を守っていきましょう。
眼科医考案!目の疲れが取れる「目の遠近ストレッチ」と「耳回し」
【目の遠近ストレッチのやり方】
①右手の親指を立てて、顔から30㎝程度のところに置く。親指の爪にピントを合わせる
親指を見る 遠くを見る
②5m以上遠方の目標物に、目のピントを合わせる。
①と②を3分程度繰り返す
※メガネやコンタクトレンズを着けたまま行ってもよい
【耳回しのやり方】
左右の耳の後ろに、両手の手のひらを添えるように置く。耳を前に折りたたむようにして、手のひらでグルグルと円を描くように30秒から1分間程度回す。耳が前に倒れたり、元に戻ったりすることで、耳が赤くなり、温かくなってくる