耳は脳に近いため反射区刺激が即効く!
耳への刺激は臓器に直に伝わる
私の専門であるリフレクソロジーは、体の内部の状況が体の表面に投影される「反射区」の状態を観察して心身の不調を読み取り、反射区を刺激して不調の改善を図ります。
全身の骨格や臓器に対応する反射区が集中し、リフレクソロジーに適した体の部位には、顔や頭部、耳、目、手、足、背中などがあります。
中でも耳は「全身の縮図」といっても過言ではないほど、全身の反射区やツボが集まっています。
足や手も全身の縮図ですが、耳には足や手にはない特徴があります。それは、耳介という外に出ている部分に、脳や首につながる神経が通っていて、それらの神経が内臓や骨格とも密接に関わっていること。
足や手の反射区は、刺激すると体に反応は現れますが、直接それぞれの臓器とつながっているわけではありません。しかし、耳への刺激は、神経を介して、反射区に対応する臓器に直に伝わるのです。耳は有線の光ケーブル、足や手は無線のWi–Fiにたとえてもいいくらい、刺激の伝わり方が違います。
加えて、耳は脳に近く、効果が出るのが早いのも特徴です。
また、耳は自分の手で気軽に触れることができるので、耳の反射区刺激はセルフケアとしても有用です。
コロナ禍でマスク生活が続く中、マスクのゴムの圧迫による耳の痛みや耳周辺の筋肉のこり、口や表情筋を大きく動かす機会の減少に伴う顔のむくみなどの「マスク不調」に悩まされる人も激増しています。
私がお勧めする「耳さすり」は、耳全体を柔らかくほぐすことで、マスク不調の軽減も期待できます。
WHOも認める耳介療法の有効性
耳から全身の状態を判断し、不調を改善する療法は、古代中国やヨーロッパなど、古くから洋の東西を問わず行われてきました。
現代に入り、これを耳介療法・治療として発展させたのが、フランス人の医師ポール・ノジェです。
ノジェは1950年代から耳介療法の研究を始め、電気鍼を用いて耳と全身の対応関係を検証し、左図のような「耳介の身体投影マップ」を完成させました。
その後、耳介療法は、体の不調だけでなくメンタル面のケアにも応用されるようになりました。海外では「オーリキュラー(耳介・聴覚)セラピー」として、セラピストだけでなく、鍼灸師、心理カウンセラー、医師など、さまざまな分野の専門家が取り入れています。
ちなみに、耳には100個以上の治療ポイントが存在しますが、このうち43個は、WHO(世界保健機関)から、耳介治療に有効だと認められています。こうした点からも、耳介療法は世界的に見てもポピュラーな存在であることがわかります。
やさしく1分以内でさするのがコツ
さするように弱い圧で1分を超えないように
耳の反射区やツボ刺激は、一般のかたのセルフケアとしてもたいへん有用ですが、一つ注意していただきたい点があります。
それは、決して強い力で刺激しないということ。耳は筋肉や脂肪がほとんどなく、ごく薄く狭いところに血管や神経が集中している非常にデリケートな器官です。強く押したりもんだりすると、刺激が強すぎて逆効果になり、血管や神経を傷める恐れもあります。
力加減の目安は、「弱」で30〜100gの圧。「強」でも200〜250gの圧です。自分の力加減を知るには、キッチンスケールに指を置いて圧をかけてみて、それが何gの圧かを計測するとよいでしょう。
自分の目的や症状によって、耳への適切な力加減は変わってきます。
体のこりや痛み、内臓の不調など、患部を優しくいたわりたい場合は、ごく弱い刺激を。耳に軽く指を当てて、ゆるゆると皮膚の表面をさするだけで十分です。
一方、二重あごを引き締めたい、だらけた気分に喝を入れたい、といった場合は、例外的に、対応するツボを、一瞬だけ強く刺激します。
また、耳の反射区やツボを刺激する時間は、片耳につき、長くても1分以内に留めておくこと。
耳にはたくさんの血管が通っているため、耳を刺激して血行がよくなりすぎると、かえって頭痛が起きたりすることがあるからです。時間を置いて1日に何回か行うことは問題ありませんが、耳に触れる時間は1分を超えないようにしてください。
まずはやってみよう!その場で肩が上がりやすくなる
お試し耳さすり
試しに、即効性ナンバーワンの「耳さすり」をやってみましょう。最初に腕を真上に上げてみて、上がりぐあいを確認します。
そして、耳の外周の軟骨部分を指で軽くつまみ、ゆるゆると皮膚をさすりながら動かしていきます。
耳の外側を下から上に順にさする
①耳のいちばん外側と耳たぶの境目(反射区を示した上の写真の首ゾーン)を、人さし指と親指で表と裏から軽くつまむ
②表面の皮膚と中の軟骨の癒着を取るつもりで、指で円を描くようにして皮膚をさすりながら動かしていく。約30秒間、指の位置を少しずつ上にずらしながら、耳の上端までさする
さっきよりも腕が高くまっすぐ上がりませんか? 肩に油をさしたような軽さも出るかと思います。
これは、首から肩、腕に対応する反射区を刺激する耳ほぐし。肩が上がらない人は、例外なく、耳も硬くなっています。この耳ほぐしは、首から腕につながる頸神経の詰まりを取り、首や肩周りの筋肉のこわばりを緩める効果があります。
これを行うと、耳は強くもみほぐさないでさするだけで効くこと、耳と全身がつながっていることが実感できます。2〜3時間で効果が消えるので、五十肩の人は1日に何回か行うと、1週間ほどで軽快します。
続いて、私も毎朝メイク前に欠かさず行っている「上向け耳さすり」と「こめかみ呼吸」を紹介します。
毎朝メイク前に行うとシャープな顔に!
上向け耳さすりとこめかみ呼吸
上向け耳さすりは、口をポカーンと開けた「アホ顔」で行うのがコツ。耳たぶのつけ根は、ごく弱い力でさすります。軽く行うほうが顔全体に刺激が伝わり、目まで潤ってきます。
最後に、二重あご改善に効く下頷のツボを1秒だけ強く刺激して終了。
親指と人さし指で、耳たぶのつけ根を裏表からそっとつまむ
顔を斜め上に向け、口をポカーンと開く
①その姿勢のまま、指で挟んだ耳のつけ根をほんの少し引っ張るようにしながら、後方に1〜2㎜程度の小さな円を描くようなイメージで約30秒回す
②最後に、耳たぶ上端にある下頷のツボを、キュッと1秒だけ強く刺激する
こめかみ呼吸は、こめかみから頭蓋骨の中心に広がる蝶形骨のゆがみや緊張を取る効果があります。
蝶形骨は、ホルモンバランスをつかさどる下垂体や、自律神経の最高中枢である視床下部を支えているので、蝶形骨が整うとホルモンバランスが整い、肌の状態も安定します。
左右のこめかみに中指をそっと当てて、ゆっくりと深呼吸をしながら、呼吸に合わせて中指をわずかに前後に動かす
息を吸ったとき前へ1㎜
吐くときに後ろへ1㎜
中指は、動かそうとせずにふんわりとこめかみに当てるだけに専念し、深呼吸をしっかり行うことに集中する
これを3〜5回繰り返す
上向け耳さすりを行うと、顔のむくみが取れ、ほうれい線が薄くなり、あごのたるみが消え、首もほっそりしてシャープな顔に。こめかみ呼吸は、気持ちがシャキッとするので、毎朝セットで行いましょう。
1日2回で耳全体を柔らかくして健康状態を底上げ!
6ステップ耳さすり
セラピストとして、これまで多くの人の体と向き合ってきた経験から断言できるのは、「不調が多い人ほど耳が硬い」ということです。
体のあちこちに不調がある人、あるいは主訴が定まらず、さまざまな心身の不調に悩まされている人は、プラスチックのように耳が硬くなっています。
逆に言えば、耳全体を柔らかくしておけば、不調が半減します。耳には全身が投影されていますから、耳全体が柔らかいということは、全身が柔らかく、神経や臓器も正しく働いていることを意味するのです。
そこで、毎日の健康習慣としてお勧めなのが、「6ステップ耳さすり」です。これは1分間で、体の背面に相当する重要な耳の裏側も含め、耳全体を柔らかくほぐすケアです。
耳のツボや反射区は、狭い範囲に密集しているので、指では細かいツボをピンポイントで刺激するのは困難です。また、細かいツボや反射区の位置を覚えるのが大変、自分はどのツボや反射区を押せばいいのかわからない、という人もいるでしょう。
6ステップ耳さすりは、耳全体をやさしく刺激して柔らかくほぐすので、とりあえずこれだけやっておけば、全身を網羅でき、健康状態を底上げする効果が期待できます。
6ステップ耳さすりは、両耳同時に行い、最初から最後まで1分以内で終わらせるようにしてください。1分以上行うと、頭部の血流がよくなりすぎて片頭痛を招く恐れもあるからです。
6ステップ耳さすりは、1日2回を目安に毎日行いましょう。全身の血流がよくなり、体がポカポカと温かくなるので、寒い日に外に出たときに行うのもお勧めです。