透けていた地肌が目立たなくなった
若い頃に比べて髪が細くなってきた気がする。抜け毛が増えた。薄毛が心配。髪がパサついて、ヘアスタイルがうまくまとまらない。
頭皮や髪のベタつき、におい、頭皮のかゆみ、フケなどのトラブルが気になる。自分に合ったシャンプーやトリートメントが見つからない——。
これらの悩みに一つでも当てはまるならば、「シャンプーをやめる」ことをお勧めします。大半の人は「髪と頭皮の汚れを落とすためにシャンプーは欠かせないもの」と思っていますが、実はシャンプーは、髪と頭皮の健康に百害あって一利なし。
シャンプーをやめて水だけで洗髪すれば、健康な頭皮と美しく豊かな髪がよみがえるのです。
事実、私は20年前、アレルギーで肌がかぶれたことをきっかけに40代でシャンプーを断ち、水洗髪に切り替えたところ、髪が増えました。
髪が細く、猫っ毛だった髪の一本一本が太くなり、以前は透けて見えていた前頭部や頭頂部の地肌が目立たなくなってきたのです。
シャンプーをしていた頃は夕方になると髪がベタついて頭が臭くなっていたのが、今ではベタつくこともなければ、においが気になることも皆無です。
水洗髪のおかげで、私の頭皮も毛髪も、至って清潔な状態が保たれているのです。髪が太くなってコシが出たおかげで、整髪料も不要になりました。
浴室に置いてカビない製品は果たして安全か?
シャンプーには、強力な洗剤成分である界面活性剤をはじめ、防腐剤や香料など何十種類もの化学物質が含まれています。
頭皮には約10万個もの毛穴があり、一つの毛穴から2~3本の太い毛髪が生えているため、体の皮膚の毛穴に比べて特大サイズです。
その特大サイズの毛穴にシャンプーの化学物質が入り込み、頭皮に吸収されて細胞に、そして全身にまで害を与えます。
シャンプーに含まれる界面活性剤には非常に強い細胞毒性があることが、すでに科学的に明らかにされています。
細胞毒性とは、細胞自体に直接ダメージを与えて死滅させたり、何らかの害を及ぼしたりする毒性のことをいいます。
頭皮も含め、皮膚の表面には外部からの異物の侵入を食い止め、皮膚内部の水分の蒸発を防ぐ「バリア機能」が備わっています。
毛の幹細胞に対する細胞毒性の影響に加えて、シャンプーの界面活性剤は、このバリア機能を形成している角質細胞内の天然保湿因子と、角質細胞同士をくっつけている細胞間脂質のどちらも溶かして、頭皮のバリアを破壊します。
バリア機能が失われれば、細胞内の水分がどんどん失われ、乾燥によって細胞の再生ができなくなります。その結果、頭皮の新陳代謝が衰え、頭皮そのものが薄くなり、毛根が深く根を張れなくなって薄毛が進行してしまうのです。
シャンプーの細胞毒性にさらされ続けると、髪の毛の元となるもダメージを受けて、毛が発育しにくくなります。
そのうえ、シャンプーに含まれる防腐剤は、頭皮を弱酸性に保ち、雑菌やカビの侵入を防ぐ常在菌をも殺してしまいます。
浴室に長期間置きっぱなしでもカビ一つ発生しないほど強力な防腐剤の入ったシャンプーで毎日頭皮を消毒し続けることが、果たして安全といえるでしょうか。
シャンプーをする人の頭皮は皮脂の分泌が過剰
シャンプーでもう一つ問題なのは、洗浄力が強く、皮脂を根こそぎ取り去ってしまうことです。
私はマイクロスコープで患者さんたちの頭皮の状態を観察しますが、シャンプーを頻繁にしている人の頭皮は皮脂腺が大きく発達し、皮脂がジュクジュクと出てくるようになります。
シャンプーで頭の皮脂をすっかり洗い落としてしまうと、皮脂の不足を補うために、頭皮は盛んに皮脂を分泌するようになるからです。
皮脂量が増えると、髪のベタつきやにおいだけでなく、毛髪にとってきわめて不都合なことが起こります。毛根は毛細血管から栄養をもらい、その栄養を使って細胞分裂を繰り返すことで髪が太く長く成長していきます。
ところが、皮脂腺が発達しすぎると、本来は毛に供給されるべき栄養の多くが皮脂腺に行ってしまい、毛は栄養不足の状態に陥ります。すると、太く長い毛が減り、反対に細く短い、うぶ毛のような成長不全の毛が増えることになります。
シャンプーをやめれば、これらの害をすべて遠ざけることができるので、健康な頭皮とつややかで美しい髪がよみがえるのです。
では、どうすればシャンプーからうまく卒業できるのか。続いて、「脱・シャンプー」のコツを伝授いたします。
シャンプーをやめた直後は髪がベタつきがち
シャンプーをやめる方法ですが、思い切ってスパッとやめたほうが成功率が高く、効果も実感しやすいです。
ただし、最初は辛抱が必要です。長年シャンプーで皮脂を洗い落としてきた人は、皮脂腺が過剰に発達し、常に皮脂がジュクジュクと大量に出続けています。
そのため、シャンプーをやめた直後は、夕方になると髪がベタついたり、酸化した皮脂によるにおいが気になったりするでしょう。
しかし、それをがまんして水洗髪(水温30°C以下)を続けていれば、しだいに皮脂腺が小さくなり、皮脂の分泌も必ず落ち着いてきます。
患者さんたちの頭皮を診ている限りでは、シャンプーをやめて3週間ほどで皮脂の分泌が少なくなり始めるようです。個人差はありますが、4~5カ月もたてば、皮脂腺がすっかり小さくなってベタつきを感じなくなります。
頭皮のかゆみも、過剰な皮脂による刺激や炎症が主な原因なので、シャンプーをやめて1カ月ほどで治まります。「ベタつきやにおい、かゆみは最初のうちだけ」と心に刻んで、初めのつらい時期を乗り切ってください。
まずは30°C以下の「ぬるま水」で洗髪する
脱・シャンプーの第一歩は、シャンプーや石けん、リンス、トリートメントを一切使わず、シャワーだけで髪を洗います。
髪や頭皮の汚れや余分な皮脂は、皮膚表面の体表温度よりやや低い、30°C以下のぬるま水(ちょっと冷たいと感じる温度)のシャワーで、すべてきれいさっぱり洗い流せます。
熱いお湯やぬるま湯で洗髪すると、保湿の要である細胞間脂質を洗い流すため、皮脂の分泌を減らすことができないので、「ちょっと冷たいな」と感じるくらいのシャワーで髪を洗うのが理想なのです。
とはいえ、これも夏場はともかく、冬場はつらいものです。無理のない範囲で、少しずつシャワーの温度を下げていきましょう。
水洗髪を行う際の4つのコツ
①洗髪前にやさしくブラッシングする
洗髪前に、ブラッシングをすると、洗髪が楽になります。やや目の細かいブラシで、地肌はこすらずに、髪をゆっくりと、やさしくとかします。
ブラッシングを行うことで、髪や頭皮の汚れ、余分な皮脂、過酸化脂質などがブラシの毛にからめとられるので、かゆみやベタつき対策としてもブラッシングは有効です。
②指の腹でマッサージするように洗う
髪を洗うときは、指の腹で軽く頭皮をマッサージするように洗ってください。爪を立てたり、力を入れすぎたりするのは厳禁。頭皮を傷つけ、炎症を起こす原因にもなります。長髪の場合は、洗髪用のシャンプーブラシでとかしながら洗います。
③洗髪後はタオルで水分を取りなるべく自然乾燥を
洗髪後は、タオルで押し拭きしたり、挟んだりして、できるだけ水分を取っておきます。その後は、できるだけ自然にゆっくり乾燥させたほうが髪にも地肌にも理想的です。
④ドライヤーを使う場合は最小限に留める
ドライヤーは髪や頭皮を傷める原因にもなるので、使用は最小限に。ドライヤーは髪から15㎝ほど離して、1カ所に集中して当てず、温風と冷風を交互に当てること。乾きにくい髪の根元から先に乾かして、地肌が完全に乾き、毛先が少し湿っている状態で切り上げます。
なお、どうしてもシャンプーが恋しい場合は、3日に1回、5日に1回と回数と使用量を減らすことから始めてもいいです。純石けんを使うのも一案ですが、石けんを使っている限り、皮脂は少なくなりません。
純石けんは、組織に浸透しにくいため、シャンプーよりも安全です。石けんカスと強い洗浄効果によって洗髪後は髪がきしみますが、クエン酸水(※)を髪にかけてシャワーで洗い流せば多少、緩和されます。
※洗面器一杯のぬるま水に。小さじ1/2のクエン酸を溶かしたもの
髪がワカメのように真っ黒になりツヤも出た
水洗髪で何か異常な症状が出たら、シャンプーで洗う習慣に一度戻したり、症状によっては皮膚科を受診したりしてください。
長年、シャンプーによって常在菌が少なくなっている人は、まれに、雑菌が増えて、脂漏性皮膚炎になることがあります。
そのような場合は、いったんシャンプーで髪を洗う生活に戻して、症状が落ち着いたら、少しずつ脱・シャンプーを目指すとよいでしょう。
髪が元気によみがえった私の様子に感化されて、薄毛が気になる男性だけでなく、美意識の高い女性たちにも、シャンプーをやめた人がたくさんいます。
例えば、ある40代の美容皮膚科医の女性は、シャンプーをやめて髪がワカメのように真っ黒になり、ツヤも出てきたそうです。
酸化した皮脂は水で洗い流せます。皮脂は残して酸化した皮脂だけを洗い流すのが、洗髪の極意です。
シャンプーをやめれば、頭皮も髪も本来の健康な状態に、つまり、その人にとってベストな状態に戻ります。ぜひ、チャレンジしてみてください。