ゆほびか ゆほびか
  • 文字サイズの変更
  • 大
  • 中
  • 小
  • SNS
  • twitter
  • facebook
  • instagram

【NAFLDを改善する食事】肝臓から脂肪を落とす「もりもり野菜スープ」とは

日本人に脂肪肝が増加中!

近頃、雑誌や書籍などのメディアで取り上げられることが多くなった「脂肪肝」。

肝臓に中性脂肪がたまり、不調を来す原因となる症状ですが、今や日本人の成人の3人に1人が脂肪肝だと報告されています。

健康診断で肝機能値に異常があったけれど、体調は悪くないので問題ない」と思っているかたはいませんか?

だとしたら要注意。

今からぜひとも生活を改善し、肝臓を労わっていただきたいと思います。

そもそも肝臓は、異物から体を守る「免疫」、有害物質を排出する「解毒」、そして栄養素を体内で利用できる形に変換する「代謝」という3つの役割を担う臓器です。

生命維持のために24時間働き続けていますが、「沈黙の臓器」と呼ばれていて、脂肪肝で肝機能が低下しても自覚症状はなかなか現れません

放置すると、肝臓に炎症が起こり、やがて肝臓が硬くなる「肝硬変」になります。その結果、免疫・解毒・代謝が停止して、命を落とすこともあるのです。

飲酒をしなくても脂肪肝のリスク有!

肝臓にダメージを与える代表的なものはお酒で、以前は、肝臓に障害のある人の約9割は、肝炎ウイルスに感染しているか、お酒を大量に飲んでいるかのどちらかでした。

ですから「お酒を飲まないから、肝臓については大丈夫」と考えている人も多いですが、誤解です

近年では、お酒を飲まないのに肝臓に脂肪がたまる「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD ナッフルディー)」が増えています。

その最大の原因は、糖質の取り過ぎです。

「糖質で脂肪肝?」と不思議に思われるでしょうが、肝臓では糖質から中性脂肪が合成されています。そのため、糖質がたくさん肝臓に送られてしまうと、中性脂肪となって蓄積し、脂肪肝が進行してゆくのです。

野菜スープで栄養を効率よく摂取!

私は、NAFLDを改善させるために、糖質の多い主食を半分にし、野菜を1日に350g以上摂取するように指導してきました。

野菜は加熱するとかさ(体積)が減り、量(重さ)を多くとれるので、「もりもり野菜スープ」をお勧めしています。

ビタミンCなどが加熱で失われることを心配するかたもいますが、野菜の細胞の中では防除する役割を持つ物質(抗酸化物質)といっしょに存在するため、栄養素が壊れにくく、効率よく栄養を摂取できます。

もりもり野菜スープの主な効果として、次の3つが挙げられます。

もりもり野菜スープの3つの効能!
肝臓を労わるだけじゃない!

❶ 腸をきれいにする

消化・吸収について簡単に説明すると、口から入ってきた食物は、胃を通って腸に運ばれる過程で消化されます。糖質などの栄養は主に腸で吸収され、血液に取り込まれます。

この血液が最初に向かうのが肝臓です。川に例えれば、肝臓の上流に腸があります。ですから、脂肪肝を改善するには腸が重要なのです。

腸内環境を整えるには、腸の善玉菌のエサとなる食物繊維が必要です。もりもり野菜スープだと、食物繊維をたくさん取ることができます。

また、味つけにみそやキムチなどの発酵食品を使えば、善玉菌をエサの食物繊維といっしょに取る「シンバイオティクス」になり、腸内環境の改善にいっそう役立ちます。

❷ 満腹感が続く

食物繊維は、糖質よりも胃に長くとどまります。そのため、消化・吸収のスピードが遅くなり、満腹感が長く続くのです。

私は病院のスタッフに、昼食に野菜をたくさん取ってもらって検証したことがあるのですが、「夜までおなかが空きませんでした」という報告を多数受けました。

❸ 血糖値スパイクを防ぐ

食事をした後で血糖値が急激に上がると、「インスリン」というホルモンが大量に分泌されて、急激に血糖値が下がります。これが「血糖値スパイク」です。

インスリンは、血液中の糖を肝臓や筋肉などの細胞に取り込ませる働きをします。また、大量の糖が血液中に存在すると、インスリンの働きで糖は中性脂肪に変換されて、肝臓に押し込まれるのです。インスリンには、糖を細胞に取り込ませるだけでなく、余分な糖を中性脂肪に変える働きもあるため、「肥満ホルモン」と呼ばれています。

前の項で述べたとおり、食物繊維には消化・吸収を遅らせる効果があります。ですから、食物繊維が豊富なもりもり野菜スープを食べることで、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの分泌を抑えられます。

肝臓から脂肪が落ちて本来の機能がよみがえると、だるさやカゼの引きやすさなどの体調不良が消えていきます。

ぜひもりもり野菜スープを取り入れて、働き者の肝臓を労わってください。

切って煮るだけ!様々な味わいを楽しめる!

私たちが2017年に開設した肥満・脂肪肝が専門の「スマート外来」では、肝臓を労わる食事法の指導を行い、患者さんの約8割が3カ月で6㎏減量して、脂肪肝の改善にも成功しています。

肥満・脂肪肝の原因には、ストレスが影響していることもあります。

子育てや介護、仕事などで疲弊して、甘い物やお酒に手が伸びているかたも珍しくありません。

ですから、食習慣を改善するだけでなく、がんばり過ぎない、そして日常生活において、現状以上に負担を増やさないようにすることも大切なのです。

その点、「もりもり野菜スープ」は、近所のスーパーで入手できる野菜を、切って煮るだけで作れて簡単です。しかも、豆腐や肉類などを加えて、アレンジも自由にできます。

スープの材料として、ぜひ使っていただきたいのがニンジンとタマネギです。この2つが入ることで、スープにコクが出ます。

そこに、冷蔵庫に余っているキャベツやブロッコリー、シメジなどを加え、スープ全体で4種類以上の野菜やキノコ類、海藻を使うように心がけるといいでしょう。どんな野菜でもかまいませんが、糖質が多いジャガイモなどのイモ類はできるだけ避けてください

味つけについては、みそを加えてみそ汁にする、トマト缶を使ってミネストローネにする、キムチを入れてチゲ風にするなど、いろいろと考えられます。レシピも参考に、バリエーションを楽しみながら作るといいでしょう。次の記事ではレシピをご紹介します。

この記事は『ゆほびか』2023年1月号に掲載されています。