
塩分を抑えれば高血圧や血管疾患のリスクが激減
塩分は、体内で水といっしょに動く性質があり、体内の水分量を一定に保ったり、血圧を調整したりする働きがあります。
一般的に塩分は、最低でも1日に1・5g必要とされていますが、現代人はおおむね取り過ぎています。日本人の平均塩分摂取量は、なんと11gほど。塩分過多により、体内の水分量が増えて、むくみが生じたり、血圧が上がったりします。血圧が高くなると、血管に圧力がかかって傷つき、動脈硬化が促進します。そして、脳や心臓の血管疾患を引き起こす、いちばんのリスク要因となるのです。
塩分量と血圧の関係は、疫学的にも明らかになっています。1日の塩分摂取量が1g以下のブラジルのヤノマモ族には、高血圧の人はいません。1日摂取量が約3gのタンザニアのマサイ族は、高血圧の人は約5%です。
一方、1日の塩分摂取量が約11gの日本人を見ると、30歳以上なら50%、70歳なら男性80%、女性73%が高血圧です。
ちなみに、最大血圧が10㎜Hg、最小血圧が5~6㎜Hg下がると、脳血管疾患の発症率が40%下がるとわかっています。
塩分過多が血管疾患の原因になることから、WHOが1日の塩分摂取量を5gに定めるなど、世界中で減塩運動がさかんになりました。イギリスでは、食品会社を巻き込んで国をあげて食品の減塩に取り組んだところ、すばらしい成果を残しました。

国内では、脳血管疾患の死亡率全国1位だった長野県が熱心に減塩を行ったところ、平均寿命が全国1位に。長野県にならって、減塩に取り組んだ滋賀県も、後に平均寿命全国1位になるなど、顕著な結果が出ています。
減塩するに当たっては、調味料をきちんと量る、食品の塩分量をチェックするといったことが大切です。
手軽に減塩したいなら、イギリスの事例のように、日常的に減塩の調味料や食品を取り入れるといいでしょう。

なかでもお勧めしたいのが、「だし」の活用です。ある病院では減塩のため、病院食にだしを多く使っています。だしには、カツオブシに含まれるイノシン酸や、コンブに含まれるグルタミン酸などの旨み成分がたっぷり入っています。旨み成分が豊富なだしを使えば、塩分少なめでも十分に満足感が得られるのです。私もだし入りの減塩調味料を使って、妻に料理を作ってもらっています。
ほかにも、食事全体は減塩しつつ、一品だけ普通の味つけにしたり、片栗粉でとろみをつけたりするのもいいでしょう。とろみがあると、舌に長時間味が残り、満足感があるのです。
減塩を成功させるには、だしの旨みで塩分を補うこと。だし入りの調味料を活用し、おいしくて体にいい食生活を送ってください。

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