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【やましたひでこの掃除と整理術】日用品が手ごわい!ため置き、セール、節約の断捨離

モノは誘惑してくる。特に日用品は手ごわい

今は、「モノ=豊かさの象徴」という時代ではありません。本当の豊かな暮らしは、モノが選びぬかれた「空間」が作ってくれます。

例えば、トイレットペーパー、ティッシュ、洗剤などの日用品を特売日にたくさん買って、ため置きしているご家庭もあるでしょう。
「安い買い物ができた!」と喜ばれているかもしれませんが、実は今すぐ必要でないモノにお金を使い、本当に欲しいモノが手に入らなくなっていることも多いのです。

さらに、ため置きが増えると、何を買ったのか把握できなくなり、同じモノをまた買ってしまうという悪循環も発生します。

収納スペースはため置きしたモノで占拠され、入りきらないモノたちがリビングの床にはみ出し、通路である廊下に山積みされている光景もよく目にします。

このようなため置き癖をやめるためには、「今は必要ない」「必要だけど、この量は多すぎる」と言える自分軸を作るトレーニングが必要。

私たちはふだんの生活で、「2個買うとおトク」「今日はポイントが5倍デー」といった、キャッチーなコピーにさらされています。

特に日用品は、「いつか使うし」「腐らないし」「なくなると不安だし」といった理由で、今すぐ必要がないのに買ってしまいがちです。

しかし、セールで数十円安いものをまとめ買いするよりも、なくなりかけたときに、その都度、必要量を買うほうが、同じ期間で見たときの出費は少なくなり、在庫の管理もしやすくなります。

モノを買う前に、「それは本当に今必要?」「この量は必要?」と問いかけるトレーニングを重ねていると、セールの誘惑に負けない思考と判断を養っていけるでしょう。

それは自分軸を鍛える筋トレのようなものです。「自分にとって本当に必要なモノ」が見えてきて、自然に無用な買い物が減っていきます。

自分の居住空間をモノに乗っ取られ、生活や人生をモノに明け渡してはいけません。身近なモノとのつきとのつきあい方を見直し、自分軸を取り戻していきましょう。

捨てるときも誘惑に耳を貸すと思考が疲弊する

実は、買うときだけでなく、モノの誘惑は捨てるときにも現れます。

捨てようか迷っていると、「まだ何かに使えるよ」「いつか使えるよ」といった声が聞こえてきて、結局、捨てられなくなるのです。

例えば、書類の断捨離では、一つずつ、必要か必要でないかを判断します。でも、もともと書類がなければ、判断する必要はありません。目の前の書類があるかぎり、判断に迷うのです。

そして、判断するのに疲れてくると、「とりあえず捨てずにとっておこう」と、判断を後回しにし、書類がどんどんたまっていくのです。

書類をもらったとき、その都度、判断して、不要なものは捨てていれば、書類がたまることはありません。

権利書や、保存が義務付けられているものなどを除くと、書類はなくてもなんとかなるものです。

書類をため込み、「いつかは整理しないといけない」「整理できない自分はダメな人間だ」と思っていると、憂うつな気持ちになって、思考が疲弊します。

これを「感情コスト」と呼んでいますが、不必要なモノに空間が占拠されるだけでなく、私たちはエネルギーまでも吸い取られてしまっているのです。

洋服は何年も着ていなくても、「いつか着ることがあるかも」と捨てられない人もいるでしょう。

でも、洋服は、いわば生鮮品であり、着たくないということは、食べ頃を過ぎた野菜や果物が冷蔵庫にあるのと同じです。「もったいない」と思わず、「新しいステキな服と出合う準備」と考え、感謝して手放していく。

高級品の場合は、「高かったから」という理由で捨てられないケースもあります。

でも、自分軸でいれば、どんな高級品でも、自分が好きなものでなければ、ため込んでおく意味はありません。

値段に執着すると、自分軸からどんどんブレて、いらないモノに囲まれて暮らすことになります。

先日、亡くなった母親が残したものを捨てられない女性とその娘さんの、断捨離のサポートをしました。

商品価値も活用価値もない大量の遺品があったのですが、苦労した母親を想って「捨てられない」と泣く女性。感情が主軸になると、モノを捨てるのは難しくなるのです。

一方、娘さんは「いらないものは捨てたい」と願っていましたが、モノが詰まった閉塞した空間で、まるでゴミでしかない遺品に執着する母を見て心がすっかり鬱屈していました。

モノがなければ、二人ともこんなに苦しむことはなかったでしょう。

過去に閉じこもるのではなく、未来を見据えた空間にしましょうとアドバイスし、捨てることができたとき、娘さんも元気を取り戻しました。その女性は、遺品を手放すことで、母親という他人軸ではなく、自分軸で生きていくことへのシフトができたのです。

買い物をするときはまず値段を見ないで選ぶ

買い物をするときも、今の時代は、自分軸でモノを選んでいるように見えて、実は圧迫を受けていることも多いものです。

例えば、ネットである商品を買おうとすると、類似商品をたくさん提案されて、「どれを買えばいいんだろう」と思考が疲弊します。

そして、疲弊した思考では判断ができなくなり、「一番人気」「コスパがいい」といった「圧迫」に乗ってしまうのです。

判断は自分がしなくていいので、お勧めという圧迫に乗るほうがラクでしょう。著名人がお勧めする商品を買ってしまうのも同様です。

一方で、私たちは「そもそも欲しいものがない」時代を生きています。

すでに生活必需品は全て揃っていて、どうしてもそれが欲しいという意識がない中に、たくさんの情報がやってくるわけです。

その結果、どれに決めていいか迷い、誰かの「イチ押しですよ!」に誘惑されます。

例えば、居酒屋に行っても、メニューを見るものの、考えるのが嫌で、「とりあえずビール」「とりあえず今日のお勧めを」とオーダーしてしまう。「とりあえず」という言葉が出た時点で、もう自分軸ではありません。

一方、定食屋さんでA定食、B定食、C定食と、選択枝が3つに絞られて提示されると、迷いながらも決められます。

つまり、選択枝が多ければ多いほど、私たちは迷い煩い、それだけで思考、判断は疲弊してしまうのです。

自分軸でモノを選ぶためには、まず「欲しいか欲しくないか」「気に入ったか気に入らないか」でチェックし、次に値段と相談しましょう。

多くの人は、まず値段と相談して、「これ好き」「これ気に入った」という順番なので、逆にするのです。

まず、値段を見ないで選ぶ。次に、値段を見て落ち着いて検討する。そのトレーニングによって、自分軸を取り戻し、安さに振り回されなくなります。

セールで得ているのはモノではなくおトク体験

セールに出かけて、2割引になった商品を買って、「安くモノが買えた!」と喜ぶ人も多いはず。

どうしても欲しかったモノを安く買えたのならいいのですが、「安くなっていたから」という理由で、たいして欲しくもなかったモノを買っていませんか?

セール品を買って喜ぶ人は、モノそのものが欲しいのではなく、「おトクな買い物をした」という体験が欲しいのです。

そういった体験をなぜ求めるのかというと、「私の人生は悪くないけれど、決してツキまくった、恵まれた人生ではない」という思いがそこはかとなくあるからです。

小さなおトク体験に喜びを見出し、たいして欲しくはないモノにお金を使って、「安く買えた!」と喜んでいるわけです。

安い高いではなく、本当に自分のためになるモノを買っているか、一度、振り返ってみる必要があります。

節約の檻から抜け出すお金の絶対感覚と量の俯瞰

「お金を貯めたいから節約しなくちゃ」と考える人もいますが、「節約するための努力」と「貯まる金額」が見合っているかは疑問です。

10円でも安い野菜を探して買い求めながら、「3万円の洋服が1万5 000円だった!」と購入する人がいますが、万単位のお金をさらりと使えるのなら、10円節約することに何の意味があるでしょう。

また、近くのスーパーより、遠くのスーパーのほうが野菜が30円安いからと出かけたとき、安く買えても、時間と労力はかかっているわけです。その時間と労力は、30円に見合っているでしょうか。

さらに、食費を削って、食べたいものをがまんしていると、心が満たされることがなく、ストレスがたまって、ある日、どかっと買ってしまうという行動もありがちです。

毎日ちょこちょこ節約しても、たまに大きなお金を使うことを繰り返していると、お金もたまらず、虚しい節約行動がいつまでも続きます。

結果、「節約しないと暮らせない私」を意識の中に刷り込むことになり、節約という檻の中で、満たされることがない生活が続くのです。

食卓の豊かさは、幸せに直結します。食費を切り詰めるのではなく、ほかに無用な買い物をしていないかどうか「お金の絶対感覚」を養って、ちまちました節約にどんな意味があるのか自分に問いかけていく。

また、「量」の概念を持たず、食費を無駄遣いしている人も少なくありません。

例えば、調味料は、容量の多いモノのほうが金額的にはおトクですが、使いきれず賞味期限切れになることも多いはず。自分の使う量と頻度を把握していれば、冷蔵庫はスッキリし、スーパーで「そういえばあれはあったはずだ」と瞬時に判断できて、二重買いすることもなくなります。
「量」の概念を持たないかぎり、どんなに安く買っても、かえって無駄が増える、ということを意識しても、しすぎることはありません。

「お金がない」は、自分には「自由がない」と感じている

実はお金はあるのに、「自分のために自由に使えるお金がない」と感じて節約している人がいます。

特に家計を預かる主婦は「自分の趣味や愉しみのためにお金を自由に使っていいのだろうか?」と、使うことに抵抗感を持ってしまう。
「金運をアップしたい」と願う人は、実はお金そのものの獲得ではなく、労働や節約、あるいは家族関係からの「解放」を願っているのです。

つまり、「お金がない」=「自由がない」という思い込みの中にいるのであれば、逆に、日頃から自分が自由でいられるほうを選べば、「お金がない」「節約しなくちゃ」という思考の癖から脱出できるのです。

自由になりたかったら、まず空間の自由度を高めること。モノを絞り込み、空間にゆとりを創出すれば、自由に動くことができ、思考もより自由になります。すると、モノの誘惑や意味のない節約から自由になり、お金が巡り出してくるのです。

この記事は『ゆほびか』2022年12月号に掲載されています。