寝不足に慣れて気づかない怖い「隠れ不眠」
日本人の1日の平均睡眠時間は6時間未満が約4割(2015年・厚生労働省調査)で、世界的にみても睡眠時間が短いと言われています。
「短い時間でもしっかり眠れていればいい」と思っているかたもいらっしゃるかもしれません。でも、それは間違っています。
短時間睡眠は、健康状態を悪化させたり、日中のパフォーマンスを下げることがわかっているのです。
深刻なのは、「睡眠時間が足りていない」自覚がないことです。こういうかたは、意識して睡眠時間を取ろうとしないため、知らず知らずのうちに仕事や勉強のパフォーマンスが落ちている可能性があります。
下のグラフは、4時間睡眠を続けたとき、「眠気」と「パズルを解いたときの成績」がどのように変化していくかを表したものです。眠気の自覚はなくても、脳は日を追うごとに疲労し、ミスをしやすくなっていることがわかります。
睡眠時間が短いと、病気のリスクも高まります。5時間しか眠っていない人は、7~8時間睡眠の人より糖尿病の発症リスクが2倍になるという研究報告もあります。
さらに、食欲コントロールのバランスが崩れて、過食に走るという傾向もあり、睡眠不足はダイエットにも大敵なのです。
また、睡眠不足はアルツハイマー型認知症のリスクも高めます。認知症の原因と言われている脳のごみ・アミロイドβは、眠っているときに排泄されます。
睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上の人と比べて、アミロイドβが脳内に多く蓄積することがわかっています。アミロイドβは、30~40代から蓄積されていくため、高齢になってから睡眠時間を増やしても手遅れなのです。
健康のためにも、日中のパフォーマンスのためにも、7~8時間の睡眠を取ることを心がけてください。
眠気の決め手の「深部体温」は普通はなだらかに下がる
睡眠時間を確保したい、ぐっすりと眠りたいと思っていても、「なかなかすんなりと寝つけない」というかたも多いでしょう。
そういうかたには、寝る前に深部体温を下げることをお勧めします。
深部体温とは、脳や内蔵などの体の内部の温度のことです。人間の体は、寝つく前に深部体温が下がることで眠気が起き、寝ている間はなだらかに下がり続けます。そして、起きる前には上昇することがわかっています。そのため、眠気を誘うためには、深部体温を下げることがポイントとなるのです。
深部体温を下げるというと、体を冷やせばいいと勘違いするかたもいますが、そうではありません。体を温めて、皮膚から熱を放つことで、深部体温は下がります。
深部体温を下げるために簡単にできることの1つは、寝る2~3時間前にストレッチなどの軽く汗ばむ運動をすることです。
一方で、夕方以降に激しい筋トレなどを行うと、興奮状態になり、深部体温が上がったままになるので注意してください。
38~40℃のぬるめのお湯に半身浴で30分が効果的
入浴は、深部体温をコントロールするのに、最もお勧めです。
眠りたい2時間ほど前に、38~40℃のぬるめのお湯に半身浴で30分程度つかります。
すると、体の芯まで温まり、ゆるやかに深部体温が下がって寝つきがよくなるのです。
一方で、熱いお湯に長く浸かると湯冷めしなくなり、深部体温がなかなか下がらず、寝つきが悪くなるので注意しましょう。
忙しくて湯船につかる時間がないときは、10~15分の足湯をしてから眠るのも効果的です。
帰宅が遅くなったのに、「入浴してから2時間後に寝る」と決めて、睡眠時間がかえって短くなるのはよくありません。そんなときはぬるめのシャワーでじゅうぶんです。
不眠のいちばんの原因は、「あれを必ずしなければ」とこだわりすぎることです。義務感が強くなると、緊張して、かえって眠れなくなってしまう可能性があります。
毎日、負担なく行える方法で、睡眠の質を上げてみてください。