Q①「稲荷神社」は、なぜ鳥居や屋根が朱色のところが多いのでしょうか。
主として三つの説がある
朱色の意味は諸説ありますが、よく言われるのは三つです。
まず一つは、朱色が持つ力。朱色は生命の息吹や躍動を意味し、同時に災厄から守る力があるとされている考え方からです。
二つめは、鳥居などの建造物に使われる木材の防腐用塗料が朱色であるという説です。
防腐剤の原料は硫化水銀で、この水銀の色が朱色だからです。水銀は触れると有害であることから、外敵や魔力から社を守る魔除けの意味合いもあったようです。
三つめは、神様が好む色という説です。稲荷神社の神様は基本的に女神様で、赤系の色は、特に女性に好まれていたという理由だといわれています。
Q②「稲荷神社」というと狐が連想されます。稲荷神社と狐との関係、お供えの選び方についてお教えください。
狐は五穀豊穣をもたらすたいせつな存在
稲荷神社の神様は狐だと思っているかたも多いようですが、狐は稲荷神社の神様ではなく、神様のお使い(眷属)です。
狐は神様のお使いとして、国の平和や人々を守るために動きます。願いを叶えてもらった人は、油揚げを供えて狐に感謝するようになりました。このことから、いつしか狐は稲荷神社の神様と思われるようになったようです。
稲荷神社は五穀豊穣の神様が祀られていて、稲荷の語源は稲成りとも稲生りとも言われています。
昔の日本は、稲作をはじめとする農業が主産業であり、稲を食い荒らすネズミを駆逐してくれる狐は、農家にとってたいせつな存在でした。
そのことから、平安時代の頃を境に、狐が稲荷神の使いとして位置づけられたようです。実際、全国の稲荷神社は狐が棲んでいた場所に建てられていると見受けられます。
稲荷神社によっては、狐が棲んでいたとされる穴が伝承として起こっているところもあります。
普段の進物同様に相手が喜びそうなものを選ぶ
仏教系の稲荷神社では、もともと狼やジャッカルがその役割を担っていましたが、中国に仏教が伝わった際、中国には狼やジャッカルがいなかったことから狐が代わりとなり、そのまま日本へ伝わったともいわれています。
稲荷神社にお供え物を持参される際は、狐用と神様用とを分けて考えたほうがいいでしょう。
狐に供えたいときは油揚げ、神様用のお供えには、女性が好きな食べ物のほか、化粧品などもよいかもしれません。
普段の進物と同じで、相手が喜びそうなものを選ぶことがたいせつです。
Q③「稲荷神社」の神様についてお教えください。
神道系と仏教系の神様に大別される
稲荷神社の神様は女性で、神道系の神様と仏教系の神様がいらっしゃいます。神道系は、国を見守る穏やかな日本の神様(宇迦之御魂=うかみのたま)で、伏見稲荷大社が起源とされています。
お願いごとをすると、解決するヒントを授けてくれ、道を指南してくださる、母のような神様です。
一方仏教系は、無理難題なお願いごとでも叶えてくださいますが、願いの規模が大きければ大きいほど見返りもそれなりのものを要求される、ビジネス的な考えの強いインド(ヒンドゥー教・荼枳尼天様)の神様です。愛知県の豊川稲荷に代表されます。
伏見稲荷大社の有名な千本鳥居をはじめ、全国各地の稲荷に大小の鳥居が所狭しと並んでいる神社がありますよね。あの鳥居も、願いを叶えてもらったかたがたからの奉納で作られています。
(次回:Q④~⑦に続きます)