新型コロナウイルスの感染予防のため、街じゅうで見かけるようになったアクリル板。いずれ、コロナ禍の終息とともに無用になることでしょう。
そんなアクリル板に命を吹き込むように絵を描くアーティストがいます。描くのはフェニックス。コロナ禍から未来に向かって希望の光を見出す荻野綱久さんの「フェニックスの絵」をご紹介します。
●本記事は『ゆほびか』2022年2月号の記事を再編集したものです。
②フェニックスが僕にもたらしてくれたご縁と神獣のアートたち
③「フェニックスの絵」に一目ぼれした私は旗艦店に3点の作品を飾っています
フェニックスがもたらしてくれたご縁と神獣のアートたち
僕のアトリエ(写真下)は、千代田絨毯という絨毯の輸入販売会社の倉庫の一角をお借りしています。

このご縁も、フェニックスがもたらしてくれたものです。2019年の年末に東京・お台場で展示会を開いたとき、僕の作品に目を留めた千代田絨毯の会長さんから「ペルシャ絨毯の図柄を描いてみませんか?」とオファーをいただいたのです。
もともと僕は、絵画だけでなく、いろいろなものに描いてみたい、表現の幅を広げていきたい、という思いを強く持っていました。絨毯絵師の経験はもちろんありませんでしたが、「おもしろい! ぜひやりたいです‼」と即答。2020年から本格的に制作を始め、現在は僕の描いた絵をもとに、イランの工房でペルシャ絨毯が織られている最中です。
アトリエにこもって絵を描くこと以外に、大好きなのがライブペインティング。お客さんの前で、その場で生まれたインスピレーションのままに筆を走らせます。音楽のジャムセッション(ミュージシャンが集まって即興的に演奏すること)と同じ感覚です。

2021年6月、ロックバンドLUNA SEAのギタリスト・SUGIZOとINORANのライブイベントに、ゲストとして出演、ライブペインティングを披露した。「僕から見るとSUGIZOさんはフェニックス、INORANさんはドラゴン。2人の演奏に合わせて、フェニックスとドラゴンが絡み合う絵を描きました」(荻野さん)
ライブペインティングでは、フェニックスを描き始めたのに、いつの間にかドラゴンの絵になっていったりと、その場やそこにいる人たちのエネルギーの影響を受けて、自分でも予想がつかない絵ができていくのがおもしろいです。
下の写真は、絨毯のために描いた最近の作品です。

(横1800㎜、縦1450㎜)。これが原画になりペルシャ絨毯が織りあがる
上の絵が第1号で、「宇宙」をテーマにしています。

上の絵は「日輪(太陽)」をテーマに、第1号のお披露目イベントでライブペインティングで描きました。人によっていろんな見え方がすると思いますが、ダイナミックで、絨毯に仕立ててもすごく映える絵になったと思います。
さらに、下の絵は、そのライブペインティングの最中に突然、ひらめきが降りてきました。頭の中に構図まではっきりと浮かび、第2号の作品とほぼ同時並行で描きました。宇宙が誕生し、生命が始まる瞬間の大きなエネルギーをフェニックスに感じて描きました。

本来、ペルシャ絨毯は汚れを気にせず床に敷いてガシガシ踏んで使用するものなので、この絵の絨毯の上に座ってヨガや瞑想をするのもよさそうだな、と思っています。
闇の中から光を感じてもらえる絵でありたい
僕の作品には、フェニックスやドラゴン、ユニコーンなどの神獣がよく登場します。僕の中でのイメージは、フェニックスは輪廻転生のシンボルであり、光を運ぶ存在。ドラゴンは、渦巻き、上昇するエネルギー。ユニコーンは、人間をより高い意識レベルへと次元上昇させる存在。いずれも目に見えない存在であり、人によって感じ方は違うと思いますが、僕がイメージとして見て感じたものを描いています。
僕は、輪廻転生や生まれ変わりをあたりまえのように信じています。僕がアートや音楽など、何かをクリエイトすることに魅かれ、学んだこともない絵を描いているのも、自分が過去生で見て経験してきたものが今の自分に「ひらめき」となって映し出されているのだと思います。
同じことは、僕の作品を見てくれるお客さんたちにも言えます。僕の絵を見て何かを感じた人は、過去生でお互いに見てきたものが、心の奥底の部分で共鳴し合っているのではないか——。そんなふうに感じるのです。

予め全身を黒く塗り、下絵することなくアクリル絵具で描いた。名前はない
闇の裏には光があり、光と闇は表裏一体です。僕は、音楽をやっていたころは、物事の暗い面ばかりに目を向けがちな人間でした。しかし、絵を描き始めてからは、人生が大きく変わり、闇ではなく光にフォーカスするようになりました。僕が描く絵も、見る人たちに、闇の中から光を感じてもらえるような絵でありたい、と願っています。
長引くコロナ禍で大変な思いをして、人生に絶望している人もいらっしゃるでしょう。しかし、人類史を振り返ると、コロナ禍のような大変な出来事を経験したあとには必ず、よい変化が起きています。
今は時代の大きな転換期であり、これから世界は必ず、よい方向へ進んでいく。闇の先には、いつも光がある。そのことを、どうか忘れずにいてほしいと思います。
(③へ続きます)
②フェニックスが僕にもたらしてくれたご縁と神獣のアートたち
③「フェニックスの絵」に一目ぼれした私は旗艦店に3点の作品を飾っています