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【腸のリンパ液を流す】と免疫力が上がる!あおむけでお腹をさするだけ

リンパ液を流すメリットはむくみとりに限らない

 今回皆さんに紹介する「腸のリンパ流し」は、腸(腹部)と足のリンパ液を、効率よく体中に流すための方法です。

 そもそも、なぜリンパ液を流すことがたいせつなのでしょうか。

 これまで、リンパ液の話といえば、足のむくみや顔のむくみの話が中心でした。「マッサージでリンパ液を流すと足や顔のむくみが取れる」という話を、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。

 しかし、むくみの解消は、リンパ液を流すことの利点のひとつに過ぎません。リンパ液を流すことには、もっと大きな意味があるのです。

 それは、リンパ液を流すことが、免疫力(異物を排除する力)の向上につながるということです。

 中でも、腸のリンパ液を流すことは、免疫力の向上に直結します。ではなぜ、腸のリンパ液を流すと免疫力アップにつながるのでしょうか。

 そもそもリンパ液は体液の一種で、体中に張り巡らされたリンパ管を通って体を流れています。一日に流れるリンパの量は、約2ℓです。

 注目すべきは、リンパ液のうち約8割が、腹部と足に集中しているという事実です。中でも腸は、人体最大のリンパ器官で、豊富なリンパ組織を持っています。

 腸を大別すると、小腸と大腸に分けることができます。小腸には、十二指腸、空腸、回腸があり、大腸には、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸があり、肛門とつながっています。

 小腸の長さは、成人なら6~7メートル。長い小腸は折りたたまれるように、腹部におさまり、その周りを大腸が通っています。

 長くボリュームのある腸が、ダラッと下がらず腹部におさまっていられるのは、腸の大部分を包む、腸間膜という組織のおかげです。

 腸間膜が、体の後ろ側の腹壁とつながっているため、腸は腹部に安定することができます。この腸間膜に、リンパ管とリンパ節(※1)が豊富に張り巡らされています。

 また腸間膜だけでなく、回腸の壁にも、特有のリンパ組織(パイエル板)がたくさんあります。

リンパ球の8割は腸に存在する

 このように豊富なリンパ組織をもつ腸には、免疫機能で重要な働きを担う「リンパ球」も、たくさん集まっています。

 リンパ球は白血球の一種で、体内をパトロールし、ウイルスなど異物を見つけたら、排除してくれます。

 先ほど挙げた腸間膜や回腸などに存在するリンパ球を合計すると、体内にいる全リンパ球のうち、約8割ものリンパ球が、腸にに集まっていることになります。

 ちなみに腸のリンパ球については、いまだわかっていないことも多く、最近になり、「ILC‐3 (イナード・リンフォイド・セル・スリー)」という、体の抵抗力を高めるリンパ球が腸で発見され、話題を集めました。

 腸のリンパは、最先端の研究分野でもあるのです。

腸は人体最大のリンパ器官

腸の大部分を包む腸間膜には、たくさんのリンパ管が張り巡らされている。また腸間膜や回腸には、多くのリンパ球が集まっており、人体の8割のリンパ球がここに存在している

外敵にさらされやすくリンパ組織が発達した

 では、なぜこれほど、腸はリンパ器官として発達しているのでしょうか。それは、腸が外敵にさらされやすい臓器だからです。

 私たちの日常的な感覚では、口から中は、自分の体だと思っています。しかし、医学的には、口から肛門までは、「体の外」とみなされます。

 私たちは、口を開けて外部から食物を取り込みます。それが胃腸を通って、肛門から出ていきます。

 つまり、口から胃、胃から腸、腸から肛門までの空間は、外部に接している世界と言えます。外界と接している腸は、それだけ有害物や病原菌にさらされやすい臓器です。

 こうした外敵を侵入させない(腸から吸収させない)ようにがんばっているのが、腸のリンパ球であり、腸のリンパ組織なのです。

 危機に立ち向かう前線基地。それが、腸がリンパ器官として発達している理由のひとつと考えられます。

乳び槽を刺激すると全身のリンパの流れが活発に!

腸と足のリンパは乳び槽に集められてから、胸管を通って、左静脈角から血液中にそそぎこむ

リンパ球を体じゅうに届ける腸のリンパ流し

 腸のリンパ液を流すことは、腸に集まる豊富なリンパ球を、体中に行き渡らせることにつながります。

 外敵と戦う兵士とも言えるリンパ球が、全身を隈なく巡っている状態になるので、免疫力が高まるというわけです。

 そして、腸のリンパ液を効率よく流す方法が、今回紹介する、腸のリンパ流しです。

 腸のリンパ流しは、あおむけになったまま腹式呼吸を行い、深い呼吸で腹部に圧を加えることで、リンパの流れを促します。

 腸のリンパ流しのしくみはこうです。まず、腸のリンパ液はすべて、リンパ液のプールである「乳び槽(にゅうびそう)」に流れ込みます。このとき腸のリンパ球も、乳び槽へと入ってきます。

 乳び槽にたまった腸のリンパ液は、胸管を通り、血液に流れ込みます。

 胸管は、リンパ液の大量輸送道路のようなもので、乳び槽から胸管にうまくリンパ液を送り出すことができれば、リンパ液の流れが促され、リンパ液をどんどん血液に送ることができます。

 ところが、乳び槽は後腹膜腔(※2)にあるため、立ったり座ったりしたままでは、重力の影響を受け、リンパ液を効率よく胸管に流せません。

※2:腹膜の後ろにある空間

 そこで、腸のリンパ流しの出番です。まず、あおむけになることで、リンパ液が乳び槽から胸管へと、自然に流れ出すのを促進できます。

 さらに、腹式呼吸を行って、下腹部を刺激します。こうすれば、乳び槽に圧が加わり、勢いよく、リンパ液を流すことができるのです。

 このとき、足のつけ根からへその下へと、なで上げるように手を動かせば、足のリンパ液も乳び槽に流すことができ、一石二鳥です。

 腸のリンパ流しの効果を確認するために、私は、ある実験を行いました。腸のリンパ流しを行う前後で、被験者の血液成分にどんな変化が起こるかを調べたのです。

 腸のリンパ流しを行った後では、被験者のさまざまな血液成分の濃度が低下していました。リンパ液は最終的に血液の中にそそぎ込まれるので、腸のリンパ流しによって、リンパ液の流れが活発になった結果、血液が薄まったと考えられます。

「腸のリンパ流し」でリンパの流れが活発になる

あおむけで腹式呼吸(腸のリンパ流し)を行った被験者は、血しょうたんぱく濃度、アルブミン(血しょうたんぱくの主成分)濃度、赤血球数、ヘマトクリット値(血液中にある血球成分全体の比率)が低下。これはリンパ液の流れが活性化した可能性を示す

おしっこの近さでリンパ液の流れ具合を確認

 腸のリンパ流しを行えば、リンパ液に含まれる豊富な腸のリンパ球も体中に流れ、あるものは細胞の組織間隙(※3)に留まり、それ以外のものはリンパ管を通って、リンパ節に入ります。

 いわば、リンパ球によって体中がパトロールされ、異物を排除する臨戦態勢が整っている状態になるのです。この状態をつくることが、免疫力を高めることになリます。

 免疫力が高まるということは、周りはカゼを引いていても、自分はカゼをひかないということです。実際に私が調べたところでも、リンパ液の流れがよい人は、カゼを引きにくく、ガン細胞などを殺すリンパ球の活性が高いことがわかりました。また口内炎や口角炎にもなりづらいです。

 こうした丈夫な体でいられることの最大のメリットは、不調を感じることが少ないため、人生に意欲が持てるようになるということです。

 意欲があれば行動が生まれます。免疫力の高さは、アクティブで充実した人生の土台と言えるものなのです。

 最後に、腸のリンパ流しで、実際にリンパ液の流れが活発になっているかを、自分で確認する方法を紹介しましょう。

 リンパ液の流れが活発になると、リンパ液が血液にそそぎ込まれるので、そのぶん血液が薄められるというのは、お話しした通りです。

 血液が薄められると、ADHという「尿を出すのを抑えるホルモン」の分泌が減ります。尿を抑えるホルモンが減るわけですから、現象としてはオシッコが近くなります。

 ですから、「オシッコが近くなってきたな」と感じたら、それはリンパ液が活発に流れて、免疫力が高まってきているということです。

 体の変化を感じながら、腸のリンパ流しを続けてみてください。

リンパ球を体中に届ける免疫力があがる!【腸のリンパ流し】のやり方

食事をしてから2 ~3 時間後に、20 分ほど行うとよい

①鼻から深く息を吸い1 込み、横隔膜を下げて、おなかをふくらませる。

②口から息をフーッと吐きおなかをへこませる。これを1 分間に2 ~3 回を目安に繰り返す。このとき、足のつけ根のところから、へその下に向かって、優しくなで上げるように両手を動かすと、腸のリンパだけでなく、足のリンパもいっしょに流れるので、さらに効果がある。