2021年に亡くなられた熊本大学名誉教授の前田浩先生は、抗がん剤研究の世界的権威でした。
前田教授が万病の元である「活性酸素」の害を封じ込めるために開発し、毎日飲んでいたのが、多種類の野菜を煮たスープです。
その研究の確かさと人間性に魅せられ、前田美波里さんや姜尚中さんをはじめ、多くのかたかたが前田教授が遺した野菜スープを飲み続けています。なぜ、野菜はスープにしたほうがいいのか、そして驚くほど簡単な作り方を紹介します。
前田浩(まえだ・ひろし)
1938年、兵庫県生まれ。体の必要な所(例えばがんになった部位)に薬を届け効果的に働かせるドラッグ・デリバリー・システム研究の世界的なパイオニアで第一人者。1989年には、「ウイルス感染で宿主を殺すのはウイルスではなく活性酸素であること」を世界で初めて証明し、世界的に注目された。2017年、自身も毎日飲む野菜スープの作り方、効能を説いた『最強の野菜スープ』(マキノ出版)がベストセラーに。2021年5月、逝去。22年5月に出版された『あの人も飲んでいる 最強の野菜スープ』(マキノ出版)では、故・前田教授が遺した野菜スープを飲んでいる各界著名人や病気治療に取り組む人たちの、感謝に満ちた寄稿や体験談が多数紹介されている。
活性酸素を消す物質がスープに溶け出してくる
呼吸で取り込んだ酸素、紫外線、放射線、化学物質、排ガス、ウイルス感染のほか、タバコ、お酒、脂肪の多い食事、食品添加物、さらにはストレス、過労、睡眠不足、過度な運動により、私たちの体内では、日々、活性酸素が発生しています。
活性酸素は酸素が変質した攻撃性の高い猛毒物質で、体内に侵入してきたウイルスや細菌を殺す役割を果たしています。
しかし、必要以上に増えると、私たちの細胞内の遺伝子までも酸化して障害を招きます。
そのため、私たちの体には、不要な活性酸素を消し去る抗酸化物質を作る働きがあるのですが、この働きは加齢とともに低下し、活性酸素を処理しきれなくなるのです。
その結果、シミ、シワ、白髪、白内障などの老化現象のほか、がんや動脈硬化、アルツハイマー病などの生活習慣病を招きます。
実に、病気の9割は、活性酸素が原因と言われています。
体内の活性酸素を消去する役割が期待できるのが、故・前田浩教授が遺した「最強の野菜スープ」です。
もともと植物としての野菜には、厳しい紫外線や病原菌、害虫などから身を守るため、「ファイトケミカル」やビタミン類、グルタチオンなどの多種多様な抗酸化物質があります。しかし、それらの抗酸化物質は、非常に強固な細胞壁に囲われているので、野菜を生のまま噛んだり、ジュースにして飲んだりしても、抗酸化力はあまり期待できません。
しかし、野菜を煮ると、細胞壁が壊れ、細胞内の80%以上の成分が、煮汁(スープ)に溶け出すのです。
そして、野菜の抗酸化力は、生の汁(ジュース)に比べて10〜100倍に増強することが、前田教授が行った実験で確かめられています。
多種類の野菜を柔らかく煮るだけ
前田浩教授が遺した「最強の野菜スープ」の作り方は驚くほど簡単です。目的が、野菜の細胞壁を壊して、中の有効成分(抗酸化物質)を煮汁に溶け出させることなのですから、約30分を目安に、野菜が柔らかくなるまで煮るだけです。
その煮汁をまるごと、野菜スープとして1日に1〜2回いただけば、抗酸化物質の補充は完了します。
それだけなのですが、より効果的にするためのコツがあります。
それは、旬の野菜を使うこと。
そして、抗酸化物質の種類が多いとそれらの相乗効果が高まるので、なるべく多種類の野菜を使うこと。
さらに、野菜の抗酸化物質は、表面に近い部分に多いので、皮や切れ端もありがたく使うことです。
好みや目的により、野菜の形が残る「ごろごろスープ」としていただくか、滑らかでのどごしがいい「ポタージュスープ」としていただくかしてください。
最強の野菜スープの作り方
・緑の濃い葉物野菜を必ず入れる
ホウレンソウ、ブロッコリー、コマツナ、シュンギク、モロヘイヤ、シソ、パセリなど
・野菜は旬の野菜を中心に5〜6種類以上を使う
多種類の抗酸化物質を摂取できて相乗効果が高まる
・水の分量は野菜の3倍が目安
例えば野菜が300ℊなら水は900㎖
・野菜の皮や切れ端も使う
抗酸化物質が豊富で、スープにすれば野菜のフードロスもない
・定番の野菜として常備しておく
タマネギ、ニンジン、カボチャ、キャベツ、ジャガイモなど
【 材料 】(できあがり800〜900㎖)
・野菜 約300g
・水 900㎖(好みで調整)
〈memo〉
・野菜はよく洗っておく
・ニンジンは葉付きがよい
【 作り方 】
①野菜を切る
〈memo〉
・野菜の切れ端は捨てない
②水を入れて煮る
ごろごろスープを作るときは、野菜の切れ端は、だしパックや不織布などの袋に入れた状態で一緒に煮て、後で袋ごと取り出す
ポタージュスープを作るときは、野菜の形が残らないので、切れ端もそのまま一緒に煮る
〈memo〉
固い野菜や茎は、軽く油で炒めてから煮るとよい
③柔らかくなるまで煮る
吹きこぼれないように沸騰する直前に火を弱め、約30分煮る
④かくはんする
❸が冷めてから、ミキサーか
ハンドブレンダーでかくはんする
食べる回数と量
1日に1〜2回食べる。1回に食べる量の目安は250〜300㎖
味に変化をつけるのも自在
作りおきもできる
前田浩教授が遺した「最強の野菜スープ」は、何の味つけをしなくても、それだけで旬の野菜のおいしさをしみじみ味わえます。
味に変化をつけて楽しむことも簡単です。出来上がった野菜スープにお好みの調味料を隠し味程度に少し加えたり、煮込むときにお好みのだしを加えたりするだけ。
それだけで、料理としての味わいがグッと広がり、野菜以外の栄養成分を加えることもできます。
そして、「最強の野菜スープ」が優れているのは、作りおきができることです。
スープに溶け出た抗酸化物質は、冷蔵しても冷凍しても、その効果はあまり失われません。
大きな鍋で、野菜1に対して水3の分量を目安に1週間分まとめて作り、保存容器や空いたペットボトルで冷蔵、または冷凍保存しておくと、いちいち作る必要がないので毎日の習慣にしやすいでしょう。
味に変化をつけたい場合
味つけしなくてもしみじみおいしいが、味に変化をつけたいときや物足りないときは、味つけしてよい
だし
風味やコクが増し、栄養のバランスもよくなる
保存方法と食べきる目安
作りおきができるのが、野菜スープの大きなメリット。
毎日作らなくてもいいので負担にならず、習慣化できる
人の命を救いたいという思いが詰まったスープ
2017年に『最強の野菜スープ』が出版されてから、その研究の確かさと前田浩教授の人間性に引かれ、多くのかたがたが前田教授の「最強の野菜スープ」を、日々の食生活に取り入れてきました。
女優の前田美波里さん、東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長の姜尚中さんもそう。
前田美波里さんは、以前は野菜は生のままサラダにしてとっていたのですが、4年前から野菜スープにすると、体がポカポカ温まり、元気が湧いてくると言います。
姜尚中さんは、コロナウイルスが世界で猛威をふるうようなってから、原因不明の体調不良に悩まされていました。それを心配した奥様が作る野菜スープを、前夜の早めの夕食から16時間後の朝食時に飲む食習慣にすると、3カ月が過ぎた頃にはみるみる元気になり、まるで「二度生まれ」のような新鮮な感覚を取り戻しました。姜さんは「前田教授に感謝の気持ちを伝えたかった」と哀悼の意を表しています。
ほかにも、固形物がのどを通らないほど肥大化した喉頭がん患者の命をつないだり、子宮頸がんの希少な小細胞がんと闘病する患者の命を支えたり、その恩恵を受けているかたは枚挙にいとまがありません。
前田教授は、抗がん剤研究の道半ばで逝去されましたが、人の命を救いたいという思いは、野菜スープの形で私たちに遺してくれています。
作ってみると、驚くほど簡単。しかも、しみじみおいしい。どうぞあなたの体にもお役立てください。