去る2021年6月5日に、マキノ出版とエルアウラの共催で「こころとからだのセルフケアエキスポ2021」が開催されました。登壇者の一人、井上裕之先生は世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト公認グランドマスター。
潜在意識とは何か、そして潜在意識を活用して最高の人生を生きるための方法とは——願いを叶えるためにほんとうに役に立つ、とっておきのお話をいただきました。「仕事、お金、愛、健康」のそれぞれに潜在意識とミッションを設定せよ!
潜在意識の正体は過去の経験や記憶の貯蔵庫
「潜在意識」という言葉を聞いたことがあっても、その実態については把握できていない人は少なくないのではないかと思います。それは、すごく惜しいです。なぜなら潜在意識は、不安を解消し、あらゆる願望の実現につながるからです。
潜在意識を把握していない人には、「どんな夢も叶えてくれる魔法の方法だ」と過信している人と、逆に、宗教的だとかオカルトチックだとか位置づけて端から信じようとしない人と、2つのパターンがあります。
前者の人たちには、占いやスピリチュアルな世界に関心が高い傾向があります。そして「私は潜在意識をよく理解している」とおっしゃるのですが、手法に依存している限り、残念ながら、人生を好転させることはできません。
後者の人たちには、潜在意識は現実的な世界の話だし、実際、科学的に解明できるとお伝えしたいと思います。潜在意識を科学的に捉えるには、脳に目を向けてみましょう。
脳の中には「海馬」という器官があり、短期記憶から長期記憶へ、情報をつなげる役割を担っています。
短期記憶とは、今、自分が意識している領域の記憶。「顕在意識」とも呼ばれます。一方の長期記憶は、それまでの経験や記憶の貯蔵庫のようなもので、深層的で、感覚的で、自分では意識できない領域です。これが「潜在意識」の正体です。
ひらめきやシンクロは科学的に起きうること
人が潜在意識にコントロールされて生きているということには、心理学者のフロイト(1856~1939)やユング(1875~1961)がいち早く着目しています。
仮にあなたが「事業で成功して大金を稼ぎたい」と願っているとしましょう。その場合、大金を手にして喜んでいる自分の姿を、強く思い描くと、海馬はそれを「重要な情報だ」と判断し、長期記憶、すなわち潜在意識に保管します。
すると脳は自動的に「願望を叶えるためにはどうしたらよいのだろうか?」と働くようになり、その結果、願望成就につながる情報に気づきやすくなる。気づきでなく「ひらめき」と言うこともできるでしょう。ひらめいたことを行動に移せば、願望実現に近づくのは当然です。
また、「会いたいと思っていた人から、たまたま連絡があった」「悩んでいた問題のヒントが、たまたま手にした本にあった」のようなシンクロニシティも起きやすくなります。
ひらめきやシンクロは、科学的に起きうること。潜在意識がうまく働いている証拠のようなものです。
潜在意識を一般の人に広めたのは、潜在意識の権威であるジョセフ・マーフィー博士(1898~1981)です。マーフィーは「潜在意識には無限の可能性が秘められている」と説いています。
ただ、私としては「潜在意識を学べば、どんな願望も、“それがミッションに基づいたものであるならば”実現する」と考えています。
潜在意識だけでは夢は実現しない
ミッションに基づいたものであるならば——というのがポイントで、潜在意識だけでは夢は実現しません。「潜在意識+ミッション=願望実現」だということです。
ミッションとは、人生の理想であり、明確な目的です。ミッションは、あなたの持つ本来の力を最大限に引き出します。要は、ミッションがあるかないかで、生き方、収入、スキル、社会貢献度、日々の充足感……あらゆる観点から大きな差が生まれるということ。
偉大な経営学者であるピーター・ドラッカー博士(1909~2005)も、「ミッションがあれば、とるべき行動は明らかになり、常に正しい行動をとることができる」と述べています。
ミッションを見つけるには、今の自分の仕事や生き方について、
「心からワクワクしているか」「ほんとうにやりたいことか」
「たいせつな人を喜ばせているか」「社会に貢献できているか」
を問い続けることが重要ですが、この話は、ぜひ私の著書も参考にしていただければと思います。
不幸な成功者は少なくない
潜在意識とミッションを、あなたの人生のあらゆる面でバランスよく活かせば、最高の人生が叶います。具体的には、「仕事、お金、愛、健康」のそれぞれについて、潜在意識とミッションを設定すればいいのです。そうすれば、理想を叶える過程で予期せぬことが起きても、ブレたり、不安になったりすることはありません。
ところで、私はこれまでに膨大な時間とお金をかけて成功哲学を勉強してきましたが、成功者と呼ばれる人には、不幸なまま人生を終えた人が少なくありません。
例えば、かの有名な起業家で経営者のスティーブ・ジョブズ(1955~2011)は、『最後の言葉』という手記にこんな言葉を残しました。
「他人の目には、私の人生は典型的な成功例に映るだろう。しかし仕事を除くと喜びの少ない人生だった。私は気づいた。死ぬときに持っていけるのは、愛にあふれた思い出だけなのだ」——。彼は人生の全体的なバランスを欠いていた、ということです。
今すべき価値ある行動を冷静に緻密に探し出す
ここまでで、「仕事、お金、愛、健康」のそれぞれについて、潜在意識とミッションを設定することが、最高の人生には不可欠だと、お話ししてきましたが、真の意味で成功している人には、この点以外にも、重要な共通点があります。
それは「やるべきことをやっている」という点。彼らは、やらない理由を見つけません。
ただし、決して「行動が大事」と言っているわけではないのです。そんな考え方では、絶対に成功できるわけがありません。そうではなく、正しくは「緻密に考えた価値ある行動を、やり尽くすのが大事」。
例えば、あなたが40代後半だとして、まだ小説を一文字も書いていないのに「ベストセラー作家になりたい!」という夢を持っていたとします。周囲の人は「絶対に無理」と反対するでしょう。しかし、この世に絶対はありません。そもそも、無理だというのは他者の価値観。あなたの価値観ではありません。
他人の意見を疑いもなく「受け入れる」のではなく「受け止め」、ほんとうにそうなのか熟考し、冷静に、緻密に、今すべきことを考えましょう。
がむしゃらに書く努力をすればいい、というわけではありません。恐らくそれでは、迷うし、悩むし、やり尽くすことはできません。
そうでなく、願望実現において真に価値がある行動なら、迷いや悩みなく、取り組み続けられます。努力しているという感覚もなく。あるのはワクワク感だけです。だから、淡淡とやり尽くせるのです。
行動に一貫性があれば応援してくれる人も現れる
すべきことをしていると、自分のミッションがより明確になります。すると、行動に一貫性ができるので、周囲との信頼関係にも直結します。逆に、ミッションがない人は、優柔不断でコロコロと言うことが変わるので、信頼しづらいものです。
あなたのミッションが明確で、行動に一貫性があれば、応援したいという人も現れるでしょう。こうなれば、願望実現は大きく近づきます。