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【焚き火の音の効果】ハンドパン×焚き火の音で心身と脳を癒す

焚き火とハンドパン。焚き火の「パチッ、パチッ」という穏やかな音とハンドパンの幻想的な響きが癒しの相乗効果を生み出す

芸能界にもファンが多い焚き火の音

「パチッ、パチッ……」と、静かに燃える焚き火の音。焚き火の音を聞いているだけで心身が温まるような、癒されるような、そんな感覚があります。

コロナ禍に入ってから「ソロキャン」ブームの影響もあってか、「焚き火」も注目される機会が増えました。特に、焚き火の音は、その癒し効果からか、実はハマっている芸能人やタレントも多いことで話題となりました。

以前、入眠障害を告白したバンド「ゴールデンボンバー」の鬼龍院翔さん(現在は症状を克服)は、焚き火をこよなく愛していることで有名で、YouTubeでは自身で癒し&安眠のための焚き火動画をアップされています。

人気お笑いコンビ「霜降り明星」のせいやさんも、不安を感じたときなどは焚き火の動画をずっと見続けて気持ちを落ち着けたそうです。

YouTubeには、再生回数が数百万を超える焚き火の動画が何本もあります。そのコメント欄を見ると、「よく眠れるようになりました」「音が心地よいです」「イライラが落ち着いてきます」「うつうつとした気分が晴れた」「これを聞きながら勉強すると集中できる」などの喜びの声であふれています。

こうした声を受けて、『ゆほびか』2021年9月号では、私が演奏する「ハンドパン」という楽器と焚き火の音を合わせた「よく眠れる焚き火音楽」を読者限定のダウンロード企画でご紹介しました。

すると、過去の『ゆほびか』のダウンロード音源企画と比較しても、異例なほど多数のダウンロード数と反響をいただきました。

そこで今回は、もっと多くのかたにハンドパンの音色と焚き火の癒し効果を味わっていただけるよう、新たにCD特別付録として「焚き火の癒し音楽」を企画しました。

宮島・厳島神社の大鳥居をバックにハンドパン。見た目は金だらいを2つ貼り合わせたような形状

心地よい揺らぎの響きを発する楽器

私は、世界を旅するハンドパン奏者です。皆さんは「ハンドパン」という楽器をご存じでしょうか?

ハンドパンとはわかりやすく言うと、金だらいを2つ貼り合わせたような形状の、鉄でできた打楽器です。そのがっしりとした形とは対照的に、音色は繊細で美しく、演奏した空間はもちろん、聴く人の体の中にまで染みわたるような幻想的な響きです。

音楽の三大要素は、「リズム」「メロディー」「ハーモニー」です。そのうちの一つ「リズム」を担うのが一般的な打楽器ですが、ハンドパンはその常識を覆し、一台で「リズム」「メロディー」「ハーモニー」をすべて表現することができるのも大きな特徴です。

実はハンドパンは、まだ歴史の浅い楽器です。2001年頃に、もともとスティールパン(バチで叩いて奏でる、ドラム缶から作られた打楽器)を製造していたスイスの工房が開発したのが始まりで、「素手で演奏するスティールパン」ということで、ハンドパンと呼ばれるようになりました。

私がハンドパンを知ったのは、10年ほど前です。もともと世界の民族楽器に興味があって、その関連動画をよく見ていたのですが、その中にハンドパンがあったのです。

それまで私は、「ジャンベ」と呼ばれるアフリカが起源の打楽器を演奏していました。ジャンベは歯切れのよい、乾いた音が特徴です。

一方、ハンドパンは1回叩くだけで何重にも共鳴する音を発します。その音には何とも言えない心地よい揺らぎがあり、打楽器でこれほどの感覚を感じたことがない、知らない世界を体験した思いでした。
「すぐ演奏したい!」と思ったのですが、残念なことに当時はまだ日本では入手が困難だったため、その願いは叶いませんでした。

しかし、数年後、東京のある工房がハンドパンを作成し始めたことを知り、すぐに出かけて、生ハンドパンを体験しました。即座にハンドパンの音に魅了された私は、「この音色で、多くの人の心を癒やしたい」と強く感じ、ハンドパン奏者として活動するようになったのです。

峯モトさんは世界中の山、海、川、街中でもハンドパンを演奏する

ハンドパン一つで海外を放浪

2016年からはおよそ1年にわたって、ハンドパン一つだけを抱えて、世界13ヵ国をバスキングしながら旅をしました。多くの国を回って、たくさんの人々にハンドパンの音色を聴いてもらうことを願っての旅立ちでした。

バスキングとは、ストリートパフォーマンスをして生活資金を稼ぐことです。私も、いろいろなところで演奏しました。

外国の街角で黙々と演奏していると、音色に惹かれて集まってくる人、初めて見た楽器への物珍しさから寄ってくる人、さまざまでした。また、リズムに合わせて体を揺らす人、踊り出す人もいました。言葉が通じなくても、音楽は世界どこでも通じるのだと肌で感じました。

海外を回っているうちにもう一つ、感じたことがありました。それは、日本人がすごく真面目だということです。もちろん、それはとてもいいことでもあるのですが、真面目さゆえに窮屈になっている、自分を追い詰めている人も多いのでは……と感じました。

それほど、外国の街中で会う人、ハンドパンの演奏に集まってくる人たちは、ゆったり自由に生きているように思えました。

日本に帰国して、周囲のストレスや疲れをため込んでいる人を見ると、もっと肩の力を抜いてほしい、彼らを何とか癒せないかと思いました。

そんなことから、東京でもバスキングをするようになり、たくさんの人にハンドパンの音色を届けてきました。22年の秋からは、広島県の江田島に移住し、自然豊かな環境の中で、都会とはまた違った創作活動を始めています。

石造りの倉庫の中で天然の響きを収録

ハンドパンの音色は、自然音ともよく合い、共鳴します。風や波の音、鳥の鳴き声などとハンドパンの音色を融合させた楽曲は、これまでにも紹介していました。特に、雨音とハンドパンを合わせた曲は、大きな反響がありました。

ほかにもハンドパンと合う音があるかもしれない、とSNSでアンケートを募ってみたところ、多くのかたから回答があったのが「焚き火」でした。「なるほど」と思い、焚き火の音とハンドパンの音色を合わせたCDを制作したところ、これもたいへん好評でした。それが「焚き火の癒し音楽」の始まりです。

今回の「焚き火の癒し音楽CD」には、焚き火の音、落ち葉を踏みしめる音、焚き火のはぜる音といった自然音が入っています。前回のダウンロード音源は、夏発売の号だったため、夏の静かなキャンプの夜をイメージして、それを表現しました。今回は、冬の穏やかな陽射しの中での落ち葉焚きのイメージで制作しています。

普通、CDにレコーディングする際、「リバーブ」と呼ばれる人工的な響きを加えて、空間的な深みや広がりを出しています。しかし、今回のCDは、江田島の石造りの倉庫で演奏することで、音を反響させ、天然の深い響きになっています。

焚き火の音、落ち葉の音、そしてハンドパンの自然な響きが相まって、不眠やストレス、不安、イライラの解消などに大きな効果が期待できると思います。

ハンドパンを演奏する峯モトさん。演奏中は自身も無心になり、瞑想状態に入るという

脳を休息させリラックスさせる効果も

最近では、ハンドパンの癒し効果が科学的にも解明されてきています。ある脳科学者から聞いた話では、癒されるいちばんの理由は、「倍音」にあるとのことでした。

倍音というのは、音を鳴らしたときに、その音の振動数の整数倍の音が自然に発生することをいいます。倍音が多く含まれる音ほど心地よいとされており、ハンドパンの1つの音には3つの倍音が含まれています。

例えば、「ド」の音を出したとき、同時に1オクターブ高い「ド」と、そこから5番目の音である「ソ」の音が出るのです。それらが共鳴して響いている間に次の音を奏でることで、さらに別の倍音が出て、それらがまた共鳴する……という具合に、次々といくつもの倍音が共鳴し合うことになります。

また、ハンドパンの発する複雑な音色には、脳を休ませる効果もあるそうです。ハンドパンの音色は、人間の脳では処理しきれず、それが脳の働きを止め、休息させるということです。その結果、全身から余分な力が抜けてリラックス状態となるとのこと。

これを聞いて、私も納得しました。というのも、ハンドパンを演奏している私自身、頭が空っぽになって瞑想しているような状態になり、気持ちよくなってくるからです。

今回のCDも、きっと皆さんの心身と脳を休ませてくれることと思います。眠れない夜や、ストレスや疲れ、不安で心が重くなったとき、あるいはテレワークで仕事や勉強に集中したいときなどにぜひご活用ください。

『ゆほびか』2023年3月号付録のCD

山の声  
収録時間 16分5秒

ハンドパン演奏
峯モトタカオ
作曲・録音
峯モトタカオ

聴き方

眠れないとき、リラックスしたいとき、不安・イライラなど心が落ち着かないとき、仕事や勉強に集中したいときなどにCDをかける

この記事は『ゆほびか』2023年3月号に掲載されています