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【姿勢をよくする体操】背骨の自然なSカーブを取り戻す「トントン体操」のやり方

姿勢をよくすると体じゅうが健康に!

「頭をよくしたいなら、まず姿勢をよくしなさい」

大阪にあった有名な学習塾・伸学社(昭和32~61年。通称「入江塾」)の塾長、入江伸氏は、こう言っていたそうです。入江塾は小さい塾でありながら、毎年、灘高を始めとする難関校に多数の合格者を出すことで有名でした。

姿勢をよくすると頭がよくなるというのは、体のしくみからいえば理にかなっています。
姿勢が悪いと、血液、リンパ液、脊髄液(脳~脊髄に流れる液)などの循環が悪くなります。
当然、集中力や記憶力、読解力、直感といった脳の働きにも悪影響が及びます。逆に言うと、姿勢をよくすることで、それらの力を高めることができるのです。

姿勢をよくすることの効用は、子どもの学習能力に限りません。姿勢がよくなると、年齢を問わず、よいことがどんどん起こります。

正しい姿勢は、酸素や必要な栄養素を運び、不要なものを運び去る血液の流れをスムーズにするため、心身の健康度が増すからです。

たとえば、血圧が高すぎる人なら、正常値に近づきます。また、肌のツヤがよくなって若返りますし、体が軽くなってよく動けるようになります。むくみや便秘、不眠なども改善します。

加えてリンパ液の流れがよくなることで、免疫力もアップします。脊髄液の流れがよくなるので、大人でも脳の働きが高まり、脳の老化やうつ、認知症などの予防に非常に役立ちます。

姿勢をよくするだけで、そういったさまざまな恩恵にあずかることができるのです。

背骨に緩やかなS字カーブが必要な理由

しかし、ここで、ふと疑問に思うかたもおられるでしょう。

「そもそも“いい姿勢”ってどんな姿勢? どうすれば、そのいい姿勢になれるの?」と。

ひと口に「いい姿勢」といっても、いろいろな観点がありますが、私がお伝えしたいポイントはただ1つ。それは背骨の「生理的湾曲」を取り戻す・保つということです。

「いい姿勢」という言葉からは、「まっすぐな背骨」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実は、まっすぐな背骨は「悪い姿勢」です。

左のように自然なアーチがあるのがよい姿勢

健康な背骨は、横から見ると緩やかなS字カーブを描いています。首と腰の部分は軽く前弯(前方に向かってカーブを描く)し、背中部分は緩やかに後弯(後方に向かってカーブを描く。)して、緩く、波打つような形をしているのです。

このカーブは、
・衝撃を吸収して脳を守る
・重力を分散して背骨の負担を減らす
・神経の伝達をスムーズにする
などの役割を持ち、とても重要です。ところが、スマホやパソコン作業などで前かがみになる時間が長く、運動不足に陥りやすい現代人の多くは、このカーブを失って直線に近い背骨になっています。

首が直線に近い状態になることを「ストレートネック」といいます。整形外科や整体院、接骨院などでストレートネックと言われたことがある人も多いでしょう。

実は、ストレートネックの人は、背骨全体も生理的湾曲を失っていると考える必要があります。
ストレートネック=「ストレート背骨」で、危険な姿勢ととらえてください。
先にあげた高血圧を始め、さまざまな不調に悩まされている人も、その一因として、「ストレート背骨」という悪い姿勢が関わっている恐れが大です。

そんな人にぜひお勧めしたいのが、私が考案した「トントン体操」と「おじぎ体操」です。簡単にできて、背骨の生理的湾曲を取り戻すのに有効です。トントン体操を1日5~7回行うことで、背骨の生理的湾曲を取り戻すことができます。

特に、動作のうち、3番目の行程で「ハッ!」と勢いよく息を吸うのがポイントで、これによって背骨の1番上の骨である「頸椎1番」に刺激を加え、背骨全体を整える効果が得られます。
頸椎1番は脳へも影響するので、この体操は精神面を安定させるためにも効果的です。

同時に、かかとを上下させることによって、「オステオカルシン」という物質の分泌が促されます。
オステオカルシンは、別名「若返りホルモン」とも呼ばれており、骨の強化や筋肉増強、脳の活性化などに役立ちます。トントン体操を行うと、こうした若返り効果も期待できるのです。

「トントン体操」のやり方

①両足を肩幅程度に開き、足の中指が前を向くようにして立つ①
②おなかの前あたりで左右の腕を交差させ、鼻から息を吸いながらTシャツを脱ぐときのような動きをし、上を向きながら前腕を上に向ける
③ひじを曲げて肩の高さで真横に開き、手は親指を中に入れて軽く握って、「ハッ!」と勢いよく口から息を吸う
④口を閉じ、息を止めて、かかとをトントントンと7回上げ下げしながら、ひじをゆっくり下ろす
⑤最後に腕を完全に下げ、顔を前に向けて①の姿勢に戻し、「フゥー」と息を吐く
※①の姿勢に戻り、②~⑤を5~7回繰り返す

「おじぎ体操」のやり方

①正座をして、両ひざに左右それぞれの手を当てる。両足先は内側に向け、お尻の下に収める
②背すじを保ったまま、腰をストンと下に落とす(背中は丸めない)
③両手を前に出して、指先を近づけて床に置き、おじぎをするように頭と背中をゆっくり下げていく
④頭が手に着きそうになるくらい下げたあと、ゆっくり上げて②の姿勢に戻す
⑤下げた腰を引き上げて①に戻す
※①の姿勢に戻り、②~⑤をもう2回繰り返す
この記事は『ゆほびか』2022年12月号に掲載されています。