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【脂肪肝は立派な病気です】放置するとあらゆる生活習慣病を引き起こす

脂肪肝は立派な病気です

「脂肪肝」――皆さん、こう診断されても「またか」「仕事がら会食が多いので仕方ない」「もう10年以上、ずっと脂肪肝だよ」などと軽く考えていませんか。

ハッキリ申し上げます。「脂肪肝は立派な病気」です。

食生活の欧米化や生活様式の変化、運動不足、ストレスなどにともない、脂肪肝は増加の一途をたどり、今や日本人の4人に1人、つまり3000万人以上が脂肪肝を抱えていると言われています。

脂肪肝は、ごく軽い段階では血液検査の数値ではハッキリせず、超音波検査(エコー)の画像で診断されます。外見は肥満というほどでもなく、自覚症状もまったく現れないので、健康診断で脂肪肝を指摘されても、先述のように無対策で放置している人は多いと思われます。

肝臓という臓器はとてもタフで、一部の肝細胞が壊れても、残りの細胞で機能を補うことができます。さらに、壊れた肝細胞を再生する機能もあります。「沈黙の臓器」といわれる肝臓は、その7割以上が壊れないと自覚症状が出ないのです。手術で切除しても、やがて元の大きさに戻るほど肝臓は丈夫な臓器なのです。

しかし、脂肪肝のように肝臓を傷める原因を放置すると、肝細胞は破壊と再生を繰り返し、硬くなって働きが悪くなります。この頃になってようやく自覚症状が出てきますが、一度硬くなった肝臓を元通りに回復させることは非常に困難です。

脂肪肝は肝臓を傷めるだけではありません。脂肪肝が本当に怖いのは、ここからです。

実際、30年ほど前は、脂肪肝は医療現場でも、さほど問題視されていませんでした。しかし、専門医として脂肪肝が健康を害する要因になると疑っていた私は、5年間にわたって脂肪肝の患者さんの健康状態を追跡調査しました。

その結果、脂肪肝は、糖尿病、高血圧、心筋梗塞や狭心症といった心臓病、脳梗塞や脳出血、動脈硬化など、あらゆる生活習慣病の前兆であることがわかったのです。脂肪肝を長年放置すると、いずれはこれらの病気を発症することになります。

脂肪肝が進行すると肝硬変や肝臓がんに

脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまりすぎて起こる病気です。健康な人の肝臓には、3〜5%の中性脂肪があります。これが20%を超えた状態を脂肪肝と呼びます。

ではなぜ、肝臓に脂肪がたまるのでしょうか。それを解説する前に、肝臓の働きについて説明します。

私たちが食事でとった糖質や脂質は、小腸で吸収されて肝臓に運ばれ、分解されます。その後、中性脂肪やコレステロールを合成して、エネルギー源として血液中に放出されます。

このとき、糖質や脂質の摂取量が多いと、肝臓で合成される中性脂肪が増えすぎ、肝臓に蓄積されてしまうのです。

また、アルコールは肝臓で中性脂肪の合成を促進するため、お酒を飲みすぎると肝臓に中性脂肪がたまりやすくなります。

さらに、血糖値の急上昇も脂肪肝の原因です。食事で糖質が大量に入ると、血糖値が上がります。インスリンの働きで血糖値を下げて、血液中の糖分を一定に保とうとしますが、糖質をとり過ぎるとインスリンの働きが悪くなり、糖分は肝臓の中で中性脂肪に変換されて蓄積されます。

このようにして、肝臓に大量の中性脂肪がたまり、脂肪肝につながるわけです。

肝臓に脂肪分がたまっている状態では、血流が悪くなり、酸素や栄養素が行き渡らなくなって肝機能が低下します。この状態を放置すると肝細胞が炎症を起こして肝炎を発症し、やがて肝硬変、さらには肝臓がんへと進行する可能性があります。

また、肝臓に中性脂肪がたまっているということは、体に中性脂肪があり余っているわけで、内臓脂肪も増えているはず。これは高血圧や脳梗塞、心筋梗塞などの動脈硬化による疾患のリスクを高めます。これが、脂肪肝が、さまざまな病気の入口であるという理由です。

糖尿病や高血圧にも脂肪肝は深く関わる

生活習慣病の多くは、血圧や血糖値の悪化から始まり、その悪化の危険シグナルとして発信されるのが脂肪肝です。

健康診断の結果で、皆さんはまず何を見ますか。多くの人が真っ先に見るのは、血圧の数値でしょう。

血圧が上がる直接の原因は、血管の老化です。加齢とともに血管はガチガチに硬くなり、心臓が拍動するたびに、血管壁に高い圧力がかかるようになります。これが高血圧のメカニズムです。

脂肪肝の人は血中の中性脂肪やコレステロールも多いので、それらが血管の壁にこびりつくと血管はいっそうこわばり、動脈硬化になってしまいます。これは、血管障害系の病気の引き金にもなります。

そして、高血圧と並んで血管を老化させる大きな原因が、糖尿病などによる高血糖です。血糖値が高くなると血液がドロドロになり、流れが悪くなって血管を傷めます。特に毛細血管は、詰まったり、破れたりしやすくなります。

脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまった状態です。一方、糖尿病は血液中に糖質が過剰に流れ込んで発生する病気です。脂肪肝と糖尿病は、実は極めて関連性が深く、両者は表裏の関係にあります。多くの人は、糖尿病を膵臓の病気だと思っているでしょう。実は、違います。糖尿病は、肝臓の病気なのです。

血糖値が高くなり、血液がドロドロになると膵臓からインスリンが分泌され、糖質を肝臓に取り込みます。肝臓は糖質を中性脂肪として蓄えるので、糖尿病で血糖値の高い状態が続くと、肝臓の中性脂肪がどんどん増えていきます。

さらに、肝臓が糖を蓄えられなくなると、糖尿病も進み、負のスパイラルに陥ります。

脂肪肝はなりやすいが治すのも簡単

ここまで読んで、脂肪肝に恐怖を覚えたかたもいるでしょう。しかし、ご安心ください。脂肪肝は、とてもなりやすい一方で、治りやすいという特徴もあります。原因も改善法も、ハッキリしているので、習慣を改めれば、軽い人なら1週間、中程度の人でも3週間ほどで改善します。

やり方はとても簡単。しかも、脂肪肝が改善するということは脂肪が落ちるということですので、自然とダイエットにもなります。次の記事ではそのやり方を解説していきます。

この記事は『ゆほびか』2023年2月号に掲載されています
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