毎日歩くだけで降圧剤を減らせた人も
「血圧を下げるには運動が効果的」ということがわかっていますが、「歩く」だけでもその効果はじゅうぶんに得られます。1日の歩数が1万歩の人は、2000歩の人よりも血圧が低めであるというデータがあります。
ある72歳の男性の高血圧患者は、歩く習慣がありませんでした。しかし、まず1日2㎞を目標とし、1日4㎞歩くようになってからは、高血圧が改善していきました。
最初は4種類の降圧剤を飲んでいましたが、歩くことを継続するうちに1種類の降圧剤の半分まで減らすことができたのです。「大阪ヘルスサーベイ」という大規模調査でも、よく歩く人ほど高血圧のリスクが少なくなることが立証されています。
血圧を下げるツボ「合谷」を押す
もう一つ、高血圧を改善する手法として「手もみ」が有効です。高血圧を下げる手もみのやり方は、「合谷」という、両手の親指と人さし指が交差するところにあるツボをもみほぐします(合谷の位置ともみ方は下ページ参照)。
手もみについては、実際に私が高血圧の患者さんに試しました。その結果、1回10分の合谷への指圧で、平均10㎜Hgも血圧が下がったのです。1回合谷をもむと、4時間くらい降圧効果が持続します。ですので、4時間以上時間を空けて、1日に数回合谷もみを行うのがお勧めです。
合谷もみもタオル握りと同様、強く押しすぎると逆に血圧が上がります。「痛気持ちいい」程度の強さでもむようにしてください。東洋医学では合谷のツボを刺激すると、さまざまな不調や痛みが改善するとされます。実際、合谷を押しもみすると、が緩和され、血管が拡張して全身の血流がよくなります。
その結果、血圧だけでなく、肩こり、頭痛、目の疲れなども改善すると言われています。患者さんに合谷もみをすると、「体がポカポカして気持ちいい」という人がいます。これは全身の血流がよくなることで、体温が上昇するのだと考えられます。
実際に、私が患者さんに合谷もみをしたとき、レーザー体温計で測定を行いました。すると、体温が約1℃上昇していることが確認できました。
「私は若い頃から血圧が低いからだいじょうぶ」と、長い間血圧を測っていない人は要注意です。女性の場合、20~30代は血圧が低くても、40代になって女性ホルモンが減少すると、血圧が高くなります。
「体調が悪い」とやってきた40代後半の女性の患者さんの血圧を測ると、最大血圧が200㎜Hgもありました(最高血圧の正常値は120㎜Hg未満)。降圧剤を処方しましたが、話を聞くと「昔から血圧は低かったので、しばらく測っていなかった」とのこと。
血圧はなるべく定期的に測定するようにしましょう。正常値を超える数値が出た場合、放置せずに医師に相談するようにしてください。
高血圧を改善!頭痛・肩こり・目の疲れにも効く合谷もみのやり方
親指と人さし指のつけ根が交差するところにある合谷のツボを、反対の手の親指を当て、合谷とその周辺を痛気持ちいいくらいの強さでもみほぐす
※1回1~3分程度、4時間程度空けて行うと効果的
夏は上着を用意。冬はすぐコートを脱がない
血圧の乱高下を防ぐには、寒暖差に注意が必要です。
夏場は外気の高い場所から急に冷房の効いた場所に移ると血管の収縮が起こり血圧が上昇します。上着を用意して、寒い場所に移るときは羽織るようにしましょう。
冬の日常生活でも、急に寒い場所へ移動して、血圧が急激に上がる、ヒートショックに注意が必要です。
家の中でも、玄関、浴室、トイレなどの寒い場所に、薄着のまま行くのは危険です。また、外から帰ってきたときにすぐにコートを脱ぐ人がいますが、家の中が冷え込んでいる場合、暖房で部屋が温かくなるまで、コートは着たままでいましょう。
「こたつが暖かいからじゅうぶん」と、暖房をつけない高齢者も多いようです。しかし、前項で述べた通り、室温が低いのは血圧が上がる原因になります。寒いときはちゃんと暖房をつけ、室温は18℃以上を保つようにしてください。
あと、基本的なことですが、特に女性のかたは体を締めつける衣類を避けることもたいせつです。きつい下着や衣服を着用すると、物理的に締めつけられるだけでなく、ストレスによって血圧を上げるホルモンのノルアドレナリンが上昇し、さらに血圧が上がってしまいます。
補正下着やベルトなどを着用している人は、体を締めつけないファッションでおしゃれを楽しむのが、血圧を上げない生活のコツです。