運動は「時間をとって行う特別なもの」だけではない
血糖値がちょっと気になる、あるいは糖尿病になってしまったというかたに役立つお話です。
血糖値を改善するためには、食事の見直しとともに、もっと運動をするようにと指導されますよね。
運動は、たしかに血糖値を改善するのに大きな力を発揮します。
でも、だからといって「1日1万歩歩きなさい」と言われても、それがストレスに感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
運動は、「そのために時間をとって行う特別なもの」だけではありません。
私たちは、日常生活の中で、家事や仕事をしたり、通勤・通学のために歩いたりと、さまざまな形で体を動かしています。
これらも、「筋肉の収縮を伴い、安静時よりも多くのエネルギーを消費する」という意味で、りっぱな運動なのです。
こうした日常生活でいろいろ体を動かすことを、「身体活動」と言います。
厚生労働省は、さまざまな身体活動の強度を示す「METs(メッツ)」という指標を作り、健康維持のためにこうした身体活動を増やすことを推奨しています。

METsとは、例えば、
「静かに座って(あるいは寝転がって)テレビ・音楽鑑賞。車に乗る」これを基準として
1METs
「静かに立つ」と
1.2METs
「立って会話、電話、読書、手芸をする」と
1.8METs
「料理をする」と
2METs
「皿洗い、洗濯物の片づけ、立ってコピーする、立って接客する」と
2.3METs
「掃除機をかける」と
3.5METs
「庭の草むしり」をすると
4.5METs
「雪かき」をすると
6METs
「階段を上がる」と
8METs
その活動で消費されるエネルギーを数値化しています。
立つだけで1.2倍に、料理をすると2倍に、掃除機をかけると3.5倍に増えるんですね。
でも、草むしりや、雪かき、階段を上がるというのは、ちょっとキツそう……。
では、具体的に日常生活のなかで、ストレスを感じることなく身体活動量を増やすのには、どうすればいいのでしょうか?
じっとする時間を減らすだけでインスリンの働きが上がる
脂質代謝や動脈硬化の研究が専門で、芝浦スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生は言います。
「身体活動量を増やすコツは、とにかく、座ってじっとしている時間を少しでも減らすこと。立っている時間を1日2時間増やすだけで、インスリンの働きは3割ほどアップするとの研究報告もあります」(板倉弘重先生)
なるほど、「立って何かをする」機会を増やすといいのですね。
「腰を反らしたり、手足のグーパー運動をしたり、血行をよくする働きかけも有効です。手足のグーパー運動なら、テレビを観ながらでもできますよ」
(板倉弘重先生)

そうか、糖を細胞に届けて消費するのにも、血行が滞っていたらできないですもんね。
例えば、テレビを観るときは、手首をグルグル回したり、足指と手指を絡めてギュッと握ったり、手足をグーッと握ったり、パッと開いたりする癖をつけるとよさそうですね。
現在発売中の『ゆほびか』2021年11月号では、「血糖値を下げるのに特別な運動は不要! 日常の身体活動量を増やす5つのアイデア」という記事を、METsの一覧表や、具体的な動作の写真とともに紹介しています。
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