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【頭皮セラピー】整形外科医も太鼓判!頭のマッサージで乱れた自律神経が整う

頭をもむだけで脳がリラックスし体が変化

当院は整形外科を専門にするクリニックですが、希望する患者さんには頭のマッサージ(頭皮セラピー)を勧めています。

「整形外科で頭のマッサージ?」と不思議に思うでしょうが、実は頭皮には体の状態が如実に現れます。頭は体からの情報をキャッチするアンテナのようなもので、その人の体がどのような状態にあるのか、頭皮を触るだけで推測できるのです。

そもそも私が頭のマッサージを医療に取り入れようと思ったのは、私自身の体験があったからです。

20年ほど前、首や肩のこりに悩んでいた私は、試しにヘッドスパで頭のマッサージを受けました。すると、頭の疲れが即座に取れてリラックスし、首や肩を直接もむよりずっとこりが軽くなったのです。

頭をもみほぐすだけで、体が変化する。それを実感した私は、整形外科でも頭のマッサージを応用できると考えました。実際に実践すると、いろいろな形で患者さんの体の変化を感じられ、患者さん自身もその変化に驚いています。

頭をもむいちばんの効果は、自律神経(※)のバランスが整うことで、〝脳疲労〟が改善することです。当院では頭をもむ前後に自律神経の状態を測定し、それを確認しています。

※内臓や血管の働きを調整する神経

また、ふだんこっていないと思っていても、頭をほぐすと体が楽になり、「こんなに体がこっていたんだ」と、気づかされることもあります。

患者さんからは、「視界が明るくなった」「不眠症がよくなった」「薄毛が改善した」「肌にハリが出た」……など、いろいろな声を聞きます。体の変化を感じることで、脳は自分の状態を認知できるのです。

脳と体をつなげて体からの情報を取り入れる

しかし今、脳と体のつながりが弱くなっている人が増えています。

健康な人は、体からの情報を脳が受け取って、自律神経系・内分泌系・免疫系などを調整し、ホルモンバランスや自律神経を調整し、体をよい状態に保っています。ところが、体が発する情報を、脳が受け取れなくなっているのです。それは、脳が体を仕切っているからです。

何かをするとき、私たちは体が発する情報に耳を傾ける前に、頭で考えて、「こうしよう、こうするべきだ」と体に命令しがちです。社会生活を営む人間にとって、頭で考えることは人間の証であり、喜びでもあるので、ある程度、これは仕方のないことです。

しかし、脳が一方的に体をコントロールしていると、体からの情報が届かず、今、体がどんな状態なのか認知できなくなってしまいます。そして、脳と体がどんどん乖離していきます。

コロナ禍で、その傾向が顕著になりました。外出の機会が減って体を動かさなくなると、身体感覚が欠如して、五感からくる情報が脳にインプットされなくなります。すると少ない情報を補うように、ますます頭で考えるようになり、脳と体の乖離が進んでいきます。

人間は、体が発する痛みやこり、疲労を感じることによって、体の不調に気づきます。しかし脳のコントロール下では、体の状態がわからないままがんばってしまうので、体はどんどん悪くなります。脳に疲労がたまると、そういう変化にますます気づかなくなります。

頭をもむことは、その乖離した体と脳を統合させる大きな助けになります。体と脳がフィットすれば、体の状態を脳が正しく認識し、多少の不調があっても、自律神経、内分泌、免疫機能を微調整し、本来の自然な状態に戻してくれます。無意識のうちに、体を治癒してくれるのです。

呼吸に合わせて行うと心を安定させるホルモンが活性化

頭皮をもむと全身の筋膜を調整できる

ここまで理解していただいたところで、ご自分の頭頂部に触って、頭皮の状態をチェックしてみましょう。

カチカチですか? それとも、ゆるゆるですか? 

この頭皮の状態が、全身の状態を反映しています。

私たちの体は、筋膜が全身をボディスーツのように覆っており、頭頂部には帽状腱膜という筋膜があります。そこから全身の筋膜につながっています。

頭は、脂肪も筋肉もないので筋膜に触れやすく、筋膜の状態がよくわかります。ここがカチカチなら全身の筋膜も張り詰めていて、腰もカチカチです。逆にゆるゆるなら、全身の筋膜も緩んでいます。

頭皮をもむと、全身の筋膜をよい状態に戻します。それによって脳と体をフィットさせ、体からの情報を入れやすくします。

頭をもむメリットは、筋膜に触りやすいだけでなく、頭皮がじかに骨に接しているので、押圧の効果が大きいことです。

ある化粧品メーカーの研究によると、腕と頭のマッサージを比較したところ、腕は強く刺激(さする、押すなど)しないと血流がよくなりませんでしたが、頭皮は軽い圧迫だけで全身の血流がよくなりました。

頭には心臓からたくさんの血液が流れていますが、頭皮を流れる静脈には二つの特徴があります。
一つは、静脈の約半分が逆流防止弁のない無弁構造で、うっ滞しやすいこと。もう一つは、頭皮と脳がつながっている静脈があることです。

つまり、頭皮をほぐせば、頭皮のうっ滞が取れて血流がよくなりますし、頭皮とつながっている脳の血流もよくなるのです。

また、脳には、脳脊髄液の循環により、老廃物の排出を促すシステムがあると言われています。この作用は睡眠によってもたらされますが、頭皮をもむことで頭皮のうっ滞が取れ、脳の静脈の循環がよくなれば、脳脊髄液の循環もよくなります。

それによって老廃物が排出され、脳が洗浄されると、脳環境がよくなります。すると、さまざまな神経伝達物質が関与する広範囲調整系、そして自律神経系に影響して、血圧の安定や不眠症の改善、免疫力アップ、認知症の予防など、多岐にわたる効果につながると考えられます。

頭をもむやり方は、別記事をご覧ください。頭皮(前頭筋、側頭筋、後頭骨の下の後頭下筋群)をソフトな刺激でほぐします。また呼吸に合わせて刺激すると、心を安定させるセロトニンというホルモンの活性が促されます。ぜひお試しください。

この記事は『ゆほびか』2022年7月号に掲載されています。

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