一生現役で働くことはやりがいにもつながる
前回は、老後のお金についての基本的な考え方をお話ししました。でも、私が家計相談を受けてきた中で実感するのは、お金は確かに重要なのですが、それだけでは幸せな老後は得られないということです。
私は、老後の人生には、たいせつな3つの柱があると考えています。「やりがい・健康・お金」です。これら3つの柱は、持ちつ持たれつです。1つがしっかりと立っていれば、すべてがよい方向に向かっていきますし、1つでも倒れれば、全体的にうまくいかなくなります。
3つの柱すべてがしっかりと立っていれば、生活の質が高まり、充実感が生まれます。この充実感こそが、幸せな老後生活のバロメーターだと言えるでしょう。
ですから私は、老後のお金について相談に来られるかたがたに「一生現役で、細く長く働く」ことをお勧めしています。
これはもちろん、年金以外にも収入源を得たほうがいいからですが、それだけではありません。働くことで体を動かし、やりがいを感じられれば、人生の3つの柱すべてにプラスの影響を与えられるかもしれないということです。
生活のためにいやいや仕事することは、幸福とはいえないでしょう。でも、働いて人の役に立つことが喜びや生きがいとなり、同時に収入につながるのであれば、とてもすてきではないでしょうか。
得意なことを見つけ 積極的に交流をする
高齢になっても働き続けるためには、40代、50代のうちから自分の得意なことや好きなことを見つけ、人との交流をしておくことが重要です。
例えば、家計相談に訪れたかたからは、こんなお話をうかがいました。
「あるとき、知人に頼まれてパソコンの設定をしてあげたら、とても感謝されたんです。私にとってはなんでもない簡単なことでしたが、同年代にはパソコンがまったくわからない人も多いんだなあと。そこで、定年後には高齢者向けのパソコン教室を開こうと思いついて、今はそれが目標になっています」。
あなたにも、得意なことや人に喜んでもらえることがきっとあるはずです。それは、いくつになってもやりがいのある仕事につながる宝ですから、ぜひ、たいせつにしていただきたいと思います。
健康こそが老後のやりがいと収入の源
老後に働いてやりがいと収入を得るには、健康であることも大前提です。もし健康を損ねてしまうと、働いて収入を得ることが難しくなり、重ねて、医療費の負担が家計にのしかかってきます。
これは私自身の例ですが、糖尿病を患った際、治療費と薬代で毎月1万5000円のお金がかかりました。単純に計算すると、年間18万円という額になります。そのまま治療が10年間に及べば、180万円という大金になります。
健康であれば、こうした治療費はいっさい生じないわけですから、節約の観点から見ても健康であることは間違いなくたいせつです。
このように、健康とお金は連動して老後の生活に大きく影響しますから、健康を管理することも、いわば老後のための投資であると考えて、おろそかにしないことです。
とはいえ、誰でも加齢によって体が衰えていくので、健康に気を配っているつもりでも、調子を崩してしまいがちです。厚生労働省の調査を見ても、65歳以上になると医療費が顕著にふえる傾向にあります。残念ですが、人間ですから当然と言わざるを得ません。
では、どうすればよいのでしょうか。健康とお金は、日々の積み重ねによるところが大きいという点で似ています。実際、これまで家計相談に訪れたかたの中で、お金の管理がきちんとできているかたは、健康の管理もできていることが多いと実感しています。
お金の管理の基本は、「自分が何にお金を使っているのか」を把握することです。同じように、健康管理の基本も、毎日の食事、運動、睡眠など、健康に影響を及ぼす要素を日々、きちんと意識することだと思います。ぜひ、お金の管理力を健康にも生かしてくださいね。