神様へのアクションは毎日でなくてもよい
台所にいらっしゃる三宝荒神さま。恵比須さんと大黒さん。弥都波能売神などの水にかかわる神様。そして、納戸神や座敷童のような妖怪的な存在――きさいち登志子さんが紹介される「家の中にいる神様たち」は皆、日本人の日々の暮らしの中で、いつもたいせつにお祀りされてきた神様たちです。
伝統的な暮らしでは、「神様のご利益を期待して」というよりも、むしろもっと自然な意識の中に、神様が存在していたと言えます。その中で、ときにご利益と考えられるような出来事も起きていたのではないでしょうか。
もしかすると、「ご利益はほしいけれど、神様をいつも意識するめんどう」というかたもいるかもしれません。それならば、神様を意識するのは毎月1日と15日だけなどでもだいじょうぶです。一般的に、神棚の榊などのお供え物を取り替えるタイミングも、毎月1日と15日とされています。
あるいは季節ごとの習慣としてもいいでしょう。日本には昔から、季節ごとに大小たくさんの行事や祭りがあります。日本人は古来、そうした行事に応じて特別なごちそうを作り、神様にお供えしてきました。神様にごちそうを食べていただく前には、場の「お清め」、すなわち掃除や片づけもたいせつです。
そうした習慣が、きさいちさんの提案される「神様を喜ばせる掃除術」のもともとの形だと考えられます。
「神様のおかげ」の声を全国で耳にしている
ところで経営者や商売人たちの中には、「神様を喜ばせたら、事業が好転した」 とおっしゃるかたは少なくありません。 私も仕事柄、全国各地の祭りを訪れたり、神様についての話を聞く機会が多いのですが、あちこちで「神様のおかげです」というようなエピソードを耳にしています。
神様を意識するという気持ちの余裕は、案外、成功の秘訣となるのかもしれません。金運が気になるかた、お仕事をされているかたは、場を清めて神様を拝む「神様掃除」の習慣を取り入れてみてもいいかもしれません。
その際、掃除を終えたら、柏手で、部屋にいらっしゃる神様を拝んでみましょう。部屋の空気もいっそう浄化されるかもしれません。手を打つことには、神様をお招きする合図の意味もあります。柏手を打つときは、一度両手を合わせてから左右に開き、「パン、パン」とよい音を立てましょう。(民俗学者/久保田裕道)