
口に出している言葉が今のあなたを作っている
あなたは、どんな言葉をよく口にしていますか? ついネガティブな言葉ばかり言ってしまっている人は要注意です。それはなぜでしょう?
私は長年、麻酔科医として臨床の現場に臨み、痛みを抱える多くの患者さんと接してきました。そしてつくづく思うのは、「人の体は、その人の思いや発言した言葉のとおりになっている」ということです。
日頃、「楽しいな」「気持ちいいな」と思ったり、口にしたりしている人は、実際に物事に楽しく取り組んでいるため、体もそれに反応して元気になります。
しかし、「私にはそんなことできない」「どうせ治らない」と思ったり、口にしたりする人は、本当に何もできないし、痛みも改善しません。思いや言葉が、私たちの体を作っていることの表れです。
難しく考えず、ただ気持ちいいと感じること、心が喜ぶことを口に出したり、取り組んだりしてみてください。そうすれば、体が緩み、痛みからも解放されやすくなります。
そもそも現代人は、周りの風潮に煽られてがんばりすぎていたり、頭で考えすぎたりする傾向にあります。その結果、交感神経(※)ばかりが過剰になり、体が緊張して痛みや不調を引き起こし、それらを治りにくくしています。もっと自分をいたわり、緊張した体を緩めてあげてほしいと思います。
※覚醒時に優位になる自律神経の一種。反対に、リラックス時や安静時に優位になるのが副交感神経。
多くの患者さんを診た経験から突き止めた治療地図
体を緩める方法の一つとして私がお勧めしているのが、「頭をもむ」ことです。頭をもむと、まず単純に気持ちがいいものです。気持ちがいいと副交感神経が優位になり、体がリラックスモードになります。すると、痛みの軽減はもちろん、自律神経のバランスが整い、血圧の安定や心が落ち着くなど、体調にさまざまないい影響が現れます。
「ああ、気持ちいい」「いつもがんばってくれてありがとう」と、体が喜ぶ言葉をかけながら頭をもむと、さらによいでしょう。
東洋医学の観点から見ても、頭をもむことは全身に影響します。
東洋医学では、「気」「血」「水」が滞りなく全身を巡ることによって、健康が保たれると考えられています。「血」は血液、「水」は血液以外の体液、「気」は生命の源となるエネルギーです。
私たちの体は、この気・血・水によってネットワークされていて、どこかに滞りがあると、それが全身に影響します。
逆に、気・血・水の流れをよくすれば、全身の健康に寄与します。なかでも重要なのは気で、気の流れがよくなれば、血や水の流れも自ずとよくなります。
そして、体のネットワークの中心となっているのが頭です。
30年ほど前、私はある中医学の先生から、頭に全身の健康状態が反映されていることを学びました。
例えば、ひざに痛みがあるとします。すると、ひざに対応する頭部の特定の場所にも、痛みやブヨブヨするなどの反応が現れます。そこをもんで頭部の反応が改善されると、ひざの痛みも改善するのです。
自分の体をいたわり頭をもんで自分で治す
こうして私はこの30年、多くの患者さんに頭もみを勧めてきました。その経験をもとに確立したのが上の「頭の治療地図」です。

患者さんに症状のある箇所を聞いて、対応する頭の場所をもむと、症状がなくなるので、とても驚かれます。
頭もみを勧めると、「自分で触ってもいいんですか?」と聞かれることがあります。ご自身の体ですから、どうぞ自分で触ってください。
お金も道具も必要ありません。何も考えず、ただ気持ちよく頭をもむだけでOKです。もむ場所も、だいたいの位置でかまいません。
たいせつなことは、自分の体をいたわり、自分でケアすることです。猫も毛づくろいをして、自分を可愛がっていますよね。それと同じように、私たち人間も、もっと自分を可愛がっていいのです。
「いつもありがとう」「もっと仲よくしようね」と言葉をかけながら、頭をもんで全身を緩めましょう。気持ちいいことを続ければ、体は必ず応えてくれます。私たちは、もともと治る力を持っているのです。
冒頭で述べたように、「自分にはできない」「そんなことしても治らない」と頭から否定するのではなく、自分を信頼し、自分で自分の体を癒やしてあげましょう。
多くの症状を招くモヤモヤを一瞬で取る「頭ほぐし」
一瞬で「頭のモヤモヤを抜く」頭もみメソッド
能見式「頭もみ」の原則は、難しく考えず、とにかく「気持ちいい」をやるだけです。
まずは考えすぎてゴチャゴチャになってしまっている頭の中のモヤモヤを取り、気の流れをよくすることから始めましょう。
やり方は、下の写真を見てください。これをやるだけで、不思議なことに頭がスッキリします。イライラや不安感も和らぎ、気持ちが落ち着くでしょう。考えがうまくまとまらないときにもお勧めです。


能見式「頭もみ」のやり方図解
だいたいの場所でよいので気持ちいい強さでもみほぐす
次に、症状別「頭もみ」のやり方です。体のどこかに痛みがあるときは、治療地図を見ながら、痛いところに対応するゾーンをもみます。症状別にやり方を紹介しましょう。
痛みを感じる体の部位と、対応する頭の場所は、左右逆になります。例えば、左脚が痛いときは、頭の右側の脚ゾーンをもみます。
もむ場所は、厳密でなくてかまいません。体の各部位はつながっていて、互いに影響し合っているため、痛みが出ているところが悪いところとは限らないからです。異常のある場所が頭に反映されるので、だいたいの場所を触ってみて、痛みやブヨブヨした感じのあるところを探してもむようにしましょう。
頭もみは、痛みのあるときはもちろん、いつ、どんなときにやっていただいてもけっこうです。とはいえ、強い力でグイグイもんだり、1日に何度もやりすぎたりするのはお勧めしません。多くても朝・昼・晩・寝る前の1日4回ぐらいを目安に、自分の体と相談しながら加減しましょう。
あなたの体は誰のものでもない、あなたのものです。ちょうどいい強さや回数は、あなたがいちばんよくわかっているのです。
「いつもがんばってくれてありがとう」と声をかけながらもむと、体はよりいっそう喜んで反応してくれます。
体幹ゾーン
【 効果のある症状 】慢性的な腰痛・首の痛み背中のこり

脚ゾーン
【 効果のある症状 】大腿から膝関節・足首、足指の痛み

右脚の痛みは頭の左側、左脚の痛みは右側をもむ
目ゾーン
【 効果のある症状 】白内障、老眼、かすみ目、飛蚊症

特に緑内障は、こめかみのところを緩める
神経ゾーン
【 効果のある症状 】坐骨神経痛・股関節痛・腰痛

腕ゾーン
【 効果のある症状 】慢性的な肩こり・五十肩、腱鞘炎、指の痛み

ぶよぶよとへこむ感じのある箇所を重点的にもみほぐす
循環器・内分泌ゾーン
【 効果のある症状 】高血圧・糖尿病

食事や運動にも気をつける