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【幸せを招く言葉】言霊学の泰斗が勧める日本古来の「やまと言葉」①

●本記事は『ゆほびかGOLD』2020年12月号の記事を再編集したものです。

①漢字の伝来前から存在した我が国の原始言葉

漢字の伝来前から存在した我が国の原始言葉日本人のDNAに刻まれ、つらいときや悲しいときに心を動かし、力になる言葉があります。それを「やまと言葉」といいます。

やまと言葉とは、漢字が伝わる前から存在した「日本独自の言葉」のことです。日本語には、中国から入ってきた漢語や外国からきた外来語とは別に、昔から使われてきた言葉があります。漢字でいうと音読みが漢語(中国から入ってきた言葉)、訓読みがやまと言葉に当たります。

やまと言葉とは、どのようなものなのでしょうか。それを端的に示すのが、『古今和歌集』(平安時代前期の和歌集)の序文に、歌人の紀貫之が記した、次の一文です。「やまとうたは、人の心を種として、万(よろづ)の言の葉(ことのは)とぞなれりける」

「やまとうた(和歌)」は「やまと言葉」を、「人の心」は「日本人の心(やまと心)」を意味します。つまり、やまと心から生まれた言葉がやまと言葉ということです。

やまと言葉が持つ力について、紀貫之は次のように記しています。「力をも入れずして天地(あめつち)を動かし、目に見えぬ鬼神(おにがみ)をもあはれと思わせ、男女のなかをもやわらげ、猛き武士(もののふ)の心をも慰なぐさむる」(力を入れないでも天地を動かし、目に見えない鬼神をも感動させ、男女の仲も穏やかにし、勇猛な武士の心もなぐさめる)。

現代に生きる私たちが普段何気なく使っている言葉にも、やまと言葉はたくさんあります。やまと言葉の背景にあるやまと心を理解したうえで、その心を言の葉に乗せることによって、あなたが発する言葉はさらに美しく、優しく、凛々しくなり、力強いパワーを発するようになります。

そして、やまと言葉の本質を正しく理解し、生活に取り入れることで、現在のような先行きの見通せない時期に、自分はもちろん周囲も幸せにすることができるのです。

言葉を含めてあらゆるものに神が宿る

古来、森羅万象に神の存在を認め信仰してきたことが言葉に反映されている

やまと言葉の種であるやまと心とは、どんな心なのでしょうか。そこには二つの要素があります。

一つは、「すべてのものに『命』が宿る」ということ。私たちの祖先は、豊かな恵みと、時には天災をもたらす四季折々の自然とともに生きるなかで、「森羅万象に神様が宿る」という八百万の思想を育んできました。

やまと心の二つ目の要素は、「すべてはつながって共生している」ということ。私たちは、人と人とのつながりはもちろん、自分の周囲にあるすべての物とつながって、ともに生きているという考え方です。

この二つを具体的に示すのが「もったいない」という言葉です。この言葉には、物に対する尊敬の心があります。すべては高貴な存在であり、物に神を見て命を感じるからこそ、その物を粗末に扱うのはよくないという想いが、もったいないという言葉に込められているのです。

英語で「もったいない」に相当する言葉はありません。あえて表現するなら「waste(無駄だ)」、「save(節約する)」という語を使うことになりますが、これらは損か得かの合理性を追求した言葉で、物に対する尊敬や、その奥にある輝く命を感じることはできません。

すべての物に命と感謝を見て、自分を含め、万物の命を生かし合う「万物活命(ばんぶつかつめい)」の思想がやまと心の本質といえます。

「森羅万象すべては神である」「すべては一体で共生している」という思想が、文化と言葉に反映されている。それが日本という国なのです。

(②に続きます)

Index

①漢字の伝来前から存在した我が国の原始言葉

②万物に尊敬と感謝を表す「おかげさまで」

③心の奥の崇高な想いに気づくことが幸せへの第一歩