
5人に1人が「繊細さん」
私は産婦人科医をしながら、トラウマ(心の傷)を解消するヒーラーとしても活動しています。
一般的にトラウマは、心や体に強い衝撃を受けたときにできます。大人の場合はそうなのですが、実は、心も体も未熟である子どもの場合は少し違います。
例えば、「抱っこして欲しいときにしてもらえなかった」「褒めて欲しいのに否定的な言葉をかけられた」といった、大人からすれば些細なことであっても、傷つきトラウマとなってしまうことがあります。
つまり、トラウマは、子どもが傷ついたり、欲求が満たされなかったりしたときにできるのです。子どもは心が未熟なので、傷ついたときに感じた恐怖や不安といった感情が大きすぎると処理できません。
そこで、そのときの体験の記憶や感情などを潜在意識の奥底に閉じ込め、トラウマ体験をなかったことにして、乗り越えようとします。
つまり、心の防御反応としてトラウマができてしまうのです。また、トラウマができるには、親や環境などの外的な要因と、生まれ持った気質などの内的な要因の両方が関係しています。
例えば、生まれつき敏感な気質を持った、HSP(※)といわれる「繊細さん」は、統計的には、人口の15~20%、約5人に1人いるといわれています。
※生まれつき視覚や聴覚などの感覚が敏感で、感受性が非常に豊かという特徴を持っている人
「繊細さん」は、親の些細な言動に傷ついたり、わずかな音や光や匂いなどの刺激でストレスを感じてしまったりします。
親が自分の子どものこういった敏感さに気づき、配慮してくれた場合は、子どものトラウマはそこまで多くなりません。
逆に、わが子の敏感さに気づかず、普通の子どもと同じように育てた場合、子どもはたくさんのトラウマを抱えることになるでしょう。
感受性豊かで繊細な性質の「繊細さん」は、親の理解や支えがなかったというだけで、トラウマを多く抱えがちになってしまうのです。
普通の家庭で育ったのに、生きづらさを抱えている場合は、内的な要因で、知らず知らずのうちにトラウマが多くなってしまっているのかもしれません。
私自身が生きづらかった
トラウマは、トラウマができたときと同じような危険が迫った場合には、恐怖や不安という感情を心に再現させることで、私たちが危険に近づかないようにしようとします。
しかし、もう大人になって、守ってもらう必要がなくなっても作用し続けるため、自分らしい人生、本来の人生を生きる妨げとなるのです。
トラウマが少ない人は、ふだんからリラックスした状態で過ごせます。問題が起こったとしても、冷静に対処できるため、人生はスムーズです。
一方でトラウマの多い人は、自分が安全な世界にいると感じられず、常に緊張しています。「がんばっているのに何か満たされない」「人の顔色をうかがってしまい本音が言えない」といった生きづらさを感じています。
実は私も、ずっと生きづらさを抱えていました。子どもの頃から、「死にたい」「消えてしまいたい」「自分の居場所がない」と感じることが多く、心の中は常に戦場のような状態でした。
しかし、家族から虐待を受けた経験などはありません。それなのに、どうしても生きづらく、悩んでいたときに、古神道の流れをくむ「一悟術」(※)というヒーリングに出会いました。
※日本に古くから伝わる精神成長に関わる方法論を、現代に活用できる形に復興し再統合したもの
そこで丹田(指幅4本分おへその下にある部分)に空気を送りこむ呼吸法を教えてもらいました。
ヒーリングを受けたあと、この呼吸法を寝る前やストレスを感じたときに繰り返したところ、心にあったトラウマが不思議と薄れ、安心できる感覚を取り戻すことができたのです。
その結果、生きづらさを感じることがなくなりました。これに感動した私は、一悟術を学び、ヒーラーとして活動するようになったのです。
潜在意識のトラウマが癒やされる
今回お教えする「心のデトックス呼吸」(以下、デトックス呼吸)とは、トラウマにとらわれ、生きづらさを抱えている人が楽になり、さらに自分の本質にも目覚める呼吸法です。
トラウマがあると、魂の周りにもやがかかったような状態になって本来の輝きを失っています。しかし、このデトックス呼吸を行うと、その魂を覆うもやが消えるのです。まさに、魂のデトックスといえるでしょう。
トラウマは、単純になくせばいいものではありません。トラウマは、自分らしい人生を生きる妨げになる一方で、これまで自分を守ってくれた鎧でもあります。
一気になくそうとすると潜在意識が抵抗し、うまくいきません。長年自分を守ってくれたものを手放すのですから、少しずつ、根気よく取り組むことで、必ず自分らしく生きられるようになるでしょう。
トラウマの多い人は、緊張していることが多いため、視野が狭くなりがちだったり、ちょっとしたことで怒りやすくなったり、不安を感じたりするので、いつもピリピリしています。
デトックス呼吸を行うと、リラックスを司る副交感神経が活性化し、脳が「今は安全な状態だ」と判断します。晴れやかな気持ちになります。
すると、自分の内面を見つめる余裕もできるため、潜在意識に潜むトラウマが少しずつ癒やされていくのです。結果、自分を客観視できるようになってきます。
そうなって初めて、自分のトラウマを作った原因がわかってきます。また、トラウマを抱えた自分に気づくことで、生きづらい感覚はなくなっていくのです。
生きづらさで悩む多くの人が、デトックス呼吸で、自分らしい人生を生きられることを願っています。
魂のもやが取れて自分らしく生きられる!心のデトックス呼吸のやり方
「丹田呼吸」を行うタイミング

朝起きたとき、寝る前など、いつ行ってもよい。イライラしたときなど、気持ちを落ち着けたいときもお勧め
丹田の位置

寝転がって行う「心のデトックス呼吸」のやり方

①寝転がって足を肩幅程度に開き、ひざを立てて両手は丹田の横に置く。口から息をすべて、ゆっくり吐き切る

②鼻から息をゆっくり吸い込み、おなかをふくらませる。このとき、吸った空気が、骨盤の底(恥骨の裏付近)から少しずつ横隔膜方向にたまっていくイメージをしながら、鼻から息をゆっくり吸い込む。
恥骨の上付近から少しずつおなかがふくらんでいくことを手で感じる。骨盤の底から横隔膜付近まで空気がたまるまで吸い込む

③再度、口からゆっくり息を吐く。横隔膜側から少しずつ空気を吐いていくとよい。最後に骨盤底にたまった空気を吐き切る
※1~3を1日10回行う。慣れてきたら1日10分程度行うとよい
立って行う「心のデトックス呼吸」のやり方

①両足を肩幅程度に開き、姿勢よく立つ。両手は丹田の横に置く。口からゆっくり息をすべて吐き切る

②鼻から息をゆっくり吸い込み、おなかをふくらませる。このとき、吸った空気が、骨盤の底(恥骨の裏付近)から少しずつ横隔膜方向にたまっていくイメージをしながら、鼻から息をゆっくり吸い込む。恥骨の上付近から少しずつおなかがふくらんでいくことを手で感じる

③骨盤の底から横隔膜付近まで空気がたまるまで吸い込む

④吐くときは、横隔膜側から少しずつ空気を吐いていく。最後に骨盤底に溜まった空気を吐き切る
※1~4を1日10回行う。慣れてきたら1日10分程度行うとよい

慣れてきたら、イスに座り目を閉じて、丹田にソフトボール大の白い光の玉があるのをイメージする。その白い光の玉が明るく輝くのをイメージしながら、腹式呼吸を行うとさらにデトックス効果が高まる