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【動脈硬化】を改善して寿命を10年伸ばす食事とは?

揚げ物が大好きな人は約13年寿命が短い!

 動脈硬化を進行させる食事、改善する食事について、T‐max値から推測される健康寿命と照らし合わせながら解説していきます。
 下にあるのが、「動脈硬化を促進する食事」と「動脈硬化を改善する食事」です。一言でまとめると、「油・脂はなるべく控えましょう」ということになります。

 揚げ物を「普通に好む人」と「大好きな人」とでは、当クリニックで集計してきたT‐max値で1.94㎜の差が出ます。「T‐max値が10㎜を超えると寿命になる」のですが、この差を健康な人の年齢に換算すると、約10~13年分に相当します。

 揚げ物が大好きな人は、普通の人より10~13年、寿命が短いのです。

 肉が大好きな人は、普通に好む人よりT‐max値で1.15㎜の差が出ます。これも同様に換算すると、肉が大好きな人は普通の人より8~10年、短命ということになります。

 誤解が多いのが魚です。一般的に魚、特に青魚を食べることは健康にいいと言われています。しかし、肉類の好みが普通以下の人たちで、魚の好みの程度とプラークとの関係を調べたところ、魚が大好きな人だけにプラークが多くたまっていました。

 魚の脂肪のうち、血液をサラサラにすると言われているエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が占める割合は10~20%にすぎません。そのほかの80~90%は動物性脂肪です。魚を食べるということは、この脂を食べることと同義なのです。

 避けてほしい油には、最近もてはやされている健康油の類も含まれます。オリーブオイル、アマニ油、エゴマ油、米油、ココナッツオイルなどは「健康によいオイル」として人気ですが、たとえ良質といわれる油であっても、油である限りはプラークを形成する原因になります。

塩は高血圧の原因ではない

 油以外になるべく控えてほしいのが、お酒と喫煙です。

 酒類が大好きな人と、酒類をほとんど飲まない人とでは、T‐max値に2・58㎜の差が出ます。これは、約15年分です。お酒が大好きというだけで、約15年も寿命が縮まってしまうのです。

 喫煙習慣が大いにある人は、ない人よりも、T‐max値に2・23㎜の差が出ました。これも約15年分にあたり、タバコが大好きというだけで、約15年も短命なのです。

 もう一つ、興味深いデータがあります。運動習慣について調べたところ、日頃、大いに運動している人は、普通の人よりもなんとプラークがたまっている傾向にありました。

 運動しているからと、油や肉をたくさん食べていれば、プラークはたまってしまうということです。

 意外なところでは、「塩」ではないでしょうか。「高血圧の最大の敵は塩」というのは医療の定説ですが、私が多くの患者さんの食事とプラークの堆積量を検証した結果、高血圧の主な原因は肥満、またはプラークでした。つまり、塩分と高血圧は無関係なのです。

動脈硬化にはところてんがお勧め

 さて一方、「動脈硬化を改善する食事」ですが、私が特にお勧めしたいのは、ところてんと海藻類です。

 私のクリニックで行っている食事治療では、ところてんが推奨食品の第一位です。

 私が最初にところてんに注目したのは、肝臓ガンの研究をしているときでした。ところてんはテングサなどの海藻類を煮溶かし、寒天質を固めた食べ物です。海藻類にはネバネバの元であるフコイダンという成分が含まれていて、これが免疫力を高めて白血球マクロファージ(貧食細胞)を活性化します。マクロファージはガン細胞を食べて、悪性腫瘍の発育速度を遅らせたり、縮小させたりするのです。

 ところてんの原料であるテングサにはフコイダンは含まれませんが、ほかの海藻類と同様にマクロファージを活性化します。

 そして、2008年、一生取り除くことができないと言われていたプラークが退縮して減ることを突き止めたとき、マクロファージがガン細胞を食べるならプラークも食べるのでは、と考えたのです。

 ガン細胞同様、プラークもまた体にとっては異物です。また、マクロファージが分化して破骨細胞というものが形成されるのですが、この細胞は文字通り、骨を溶かして破壊する細胞です。この破骨細胞が、硬く石灰化したプラークすらも食べてくれるのです。

野菜はトマト、タマネギ、根菜類がお勧め

 そして、なんと言ってもお勧めは野菜です。T‐maxによる調査で、野菜が大好きだと回答した人は、野菜が嫌いな人より、T‐max値で1・52㎜少なかったのです。これは健康な人の年齢で換算すると、約8~13年分に相当します。野菜が大好きなだけで、野菜嫌いの人より8~13年長生きできるのです。

 野菜のすごさはこれだけではありません。「動脈硬化を促進する食事」に、野菜の好み度を重ねて分析すると、野菜がいかに救世主であるかがわかります。

 揚げ物が大好きな人たちでも、野菜が大好きであれば、プラークのたまる量はかなり抑制されます。野菜がもたらすT‐max値の差は1・73㎜。これは健康な人の年齢で、約10年分です。揚げ物が大好きでも、野菜が大好きであれば、約10年寿命が伸びるのです。

 同様に、酒類が大好きな人でも野菜が大好きであれば、健康寿命は約12年伸びます。肉が大好きでも野菜が大好きなら寿命は約8年、魚が大好きでも野菜が大好きならなんと約16年も命が伸びるのです。

 冬の時期には、蒸し野菜を食べることをお勧めします。野菜を食べる量は多ければ多いほどOK。タマネギ、青ネギ、トマト、ナス、キャベツ、根菜類、キノコ類は、特に積極的に食べるようにしてください。

 このほか、小魚や卵もプラークを減らすのに役立つ食品です。プラークを減らすには、マクロファージやミトコンドリアの活性、血管内の酵素活性など、さまざまな要素が関与しています。頭も内臓もまるごと食べられる小魚には、これらに必要な成分もまるごと含まれていると考えられます。

 卵にも同じ理屈が当てはまります。小魚と同じように、栄養をまるごと取ることができます。

 治療目的で行うとなると厳格に行う必要が出てきますが、例えば、肉はたくさん食べないように、肉を食べるときは野菜もたくさん食べるようにしたり、ところてんや海藻類を食事に取り入れたりなど、意識して生活を変えるだけでも動脈硬化はかなり抑えられるはずです。できるところから一つずつ始めて、10年、20年と健康寿命を伸ばしましょう。