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血管のゴミを消す【RAP食】で「油と脂」を減らせば進んだ動脈硬化すら回復!

動脈硬化の犯人は「油と脂」

 血液・血管の世界では、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が悪者にされています。LDLが血管壁の内側にへばりつくことでプラーク(動脈硬化)になる、というのが医療の定説だからです。

 しかし、ほんとうにそうなのでしょうか。私は、スタチン剤(コレステロールを下げる脂質改善薬)を服用していなかった男性1290名を対象に、T‐max検査を行い、動脈硬化の進行度を調べました。

 この結果、LDLの値と血管プラークの進行度にはまったく関連性がないことがわかりました。「LDL値を下げなければ、動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞になる」、あるいは「LDLが血管プラークとしてたまる」といった医療の定説は誤りだったのです。

 それでは、プラークとは何者なのでしょうか。私は、血管エコー検査とともに、患者さんの食生活についても分析した結果、ついに真犯人を見つけ出すことができました。それは、植物性油と動物性の脂、つまり「油と脂」です。

 揚げ物や肉、マヨネーズなどの食品から体内に入った脂肪や油は、超微粒子脂肪滴となり、血流に乗って全身に運ばれます。微細な脂肪滴は、鎖骨やあごの下、太ももの分岐部分など、体の構造上たまりやすい部分の血管壁に積もり、これがプラークとなるのです。

 簡単に言えば、プラークは血管壁内に堆積した油脂であり、単なるゴミなのです。汚れた川の底にはゴミがたまります。それと同じ現象なわけです。

動脈硬化は自分で治せる!

 ここで、もう一つ疑問が浮かびます。「進行した動脈硬化は治らない」というこれまでの医療の常識です。プラークが単なるゴミだとすると、それを取り除くことはできるのではないでしょうか。

 私は長年の研究の結果、食事から取る油や脂の量を極力減らし、マクロファージの働きを活性化させれば、体の自浄作用でプラークは取り除かれ、血管の詰まりは解消していくことを突き止めたのです。

 血管プラークを減らすための食事療法を「RAP食」と名づけました。私のクリニックでは、動脈硬化が認められた患者さんにはRAP食を実践していただいています。

 RAP食を実践すれば、プラークが小さくなるだけでなく、相当に進行し、石灰化した動脈硬化であっても、治すことができることを確認しています。

 プラークが消えれば、心筋梗塞や脳梗塞を完璧に予防できます。また、動脈硬化があると血圧が上がりやすいので、動脈硬化が治ることで、高血圧も治ります。

 ここも誤解のポイントです。高血圧が動脈硬化を引き起こすのではなく、血管内にプラークがたまる、つまり動脈硬化になることで高血圧になるのです。

 私のクリニックで、RAP食を中心とした治療を受け、指導された食事をきちんと守った人だけで見ると、100%プラークが小さくなっています。

石灰化した動脈硬化も大改善した!

 上の症例1は、当クリニックで動脈硬化を治療した52歳の男性の血管エコーです。初診で計測した左頸動脈のプラークの厚さは3・23㎜でした。すぐに食事指導などの治療を始めて、約2年後に同じ部位のプラークを計測すると、1・55㎜に退縮していました。なんと1・68㎜も小さくなっていたのです。

 この男性は初診時には血圧が高めでしたが、半年後には正常になりました。動脈硬化が改善したためです。また、体重が8㎏減り、肩こりと睡眠時無呼吸症も消えました。

 また、症例2は67歳の女性の血管エコーです。右鎖骨下動脈ですが、2008年の時点でかなり動脈硬化が進み、プラークは4・2㎜にも達して、一部が石灰化しています。

 しかし、治療を始めて9年後の2017年1月には、なんと3・21㎜までプラークが小さくなっていたのです。「石灰化したプラークも退縮する」という事実は、医学的にも非常に意味のある発見です。かなり進行した動脈硬化でもあきらめずに今から食事を変えれば、寿命を大きく伸ばすことができるのです。

 身内に脳梗塞や心筋梗塞で倒れた人が多くいると、「家系的に自分もそうなるのでは」と恐怖心を感じると思います。しかし、プラークのできない食生活に切り換えれば、動脈硬化がもたらす病気や寝たきりの状態、突然死も完全に防ぐことができます。

 生物には、元来「障害の原因が取り除かれれば、元に戻る」という不思議な力が備わっています。人間の血管にもそれがいえるのです。

 血管内のプラーク年齢が若ければ、そのぶん長生きできます。

 以前、当クリニックを訪れた88歳の女性は、血管障害系の病気への不安を強く抱いていました。父親が62歳で脳卒中と心筋梗塞を起こして急逝し、夫は75歳で脳梗塞による半身不随となり、80歳で他界していたからです。

 しかし、T‐max検査を行ってみると、女性の血管内プラーク年齢は30代のレベルでした。

 女性に食習慣を尋ねると、ごく一般的な食事なのですが、揚げ物の衣をはずして食べる習慣がありました。また、刺身と野菜が好きで、肉類はほとんど食べないということでした。血管だけを見れば、あと50年は生きられるほどです。

 この女性は極端なケースではなく、誰でもなることが可能です。放っておけば病気になる手前の状態を「未病」と言いますが、食事を変えれば、「未病を防ぐ」のではなく、「未病そのものを消す、未病を治す」ことができるのです。