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【閻魔さま】【開運のキホン】ほんとうは怖くない⁉裁きもするが救済もする地蔵菩薩の化身

巨大な閻魔像がある古刹深川の法乗院ゑんま堂

 皆さま、はじめまして。運命学カウンセラーの菜奈実と申します。私は20代から仏道修行を始め、30代で出家得度。現在は運命学の観点からの鑑定やカウンセリングを行う傍ら、神社仏閣への開運ツアーを行っています。

 その中でもご好評をいただいているツアーの1つが、東京・深川にある法乗院ゑんま堂という閻魔さまのお参りです。

 除けと封じをはじめとした閻魔さまのご利益は有名で、こちらは江戸時代初期から「深川の閻魔さま」と親しまれ、平成元年には現在の閻魔像が建立。全国でも有数の大きさを誇るだけでなく、日本随一のハイテク閻魔さまと呼ばれています。

真言宗豊山派 賢臺山 法乗院
「深川の閻魔さま」と呼ばれ江戸時代初期から親しまれる。
写真右側が本堂、左側がゑんま堂。日本随一のハイテク閻魔さまといわれる

 その目前にはご祈願ごとに19のお賽銭入れがあり、お賽銭を投入すると、様々な説法が音声で流れ、その場で閻魔さまからのお告げをいただくことができるのです。

 本堂には江戸後期からご本尊となった大日如来が祀られている傍ら、天明四年に宋庵という絵師によって描かれた全16枚におよぶ地獄極楽図が展示されています。週末などには地獄についてのビデオ映像も流され、地獄巡りさながらのお参りができます。

江戸時代の賑わいを今に伝える閻魔さま

 江戸時代から大正時代にかけては閻魔さま参りがとても盛んで、江戸だけでも百カ所以上の閻魔さまがあり、それぞれ縁日には多くの人で賑わったといいます。

 中でも、現在は西巣鴨にある善養寺、浅草橋から関東大震災で杉並区に移された華徳院、新宿の太宗寺は、閻魔さまの大きさから江戸三大閻魔とされ、今でもそれぞれに大きな閻魔像を堂宇にたたえています。

 また、大きな像こそないものの、閻魔さまを中心に今も商店街が賑わう小石川の源覚寺こんにゃく閻魔や、1月と7月の縁日には露店が並ぶ北千住の勝専寺も有名でしょう。

 こちらの法乗院ゑんま堂も、長い歴史とその賑わい、知名度では江戸三閻魔にも挙がるほど。弘法大師ゆかりの御府内八十八箇所霊場にも名を連ね、ましてや壮観の地獄極楽図あり、ハイテクありとなれば、訪れたくもなろうというものです。

法乗院ゑんま堂の本堂1階では16枚の地獄極楽図を展示。
死後の裁きの様子を見て善行の必要性に思い至る

 ツアーではまず、なかなか見ることのできない「地獄とは」「死後の世界」について本堂内でビデオ観賞。

その後、地獄極楽図を見ながら、輪廻転生や魂の境涯、功徳や因縁、浄化についてお話しています。

 そして、大日如来や観音様、お地蔵様や明王様など祀られている仏様に、しっかりと「御真言」を唱えてのお参り。

 最後はゑんま堂に向かい、みんなでそれぞれに「お告げ」を受けます。閻魔さまの前にある19のお賽銭入れで、お言葉とともに除けと封じのご利益をいただくのです。

 神社仏閣は1人で訪れてもよいのですが、いざ現地に着いても入りにくかったり開いていなかったり、予備知識が足りなかったり、ということもよくあります。

 ツアーでは、お寺様にはお話をしてありますし、お参りの仕方も改めてご説明しています。また、グループでお参りをすることで、自分へのお告げだけでなく、参加されたほかのかたへのお告げも、偶然にも自分と居合わせたご縁あるかたへのものとして拝聴でき、参考にもなります。

 じっくりと地獄巡りをして、自分の生き方をふと振り返る機会を閻魔さまからいただけるのです。子どもに地獄についてのお話をするにもいい、という声も届いています。

死後の行き先を決める「地獄の十王」の一王

 さて、そもそも閻魔さまというのはどのような存在なのでしょうか。子どもの頃に、「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれるよ」と言われたことがある人も多いでしょう。

 地獄という概念はさまざまな形で世界的にありますが、閻魔さまの起源は、古代インドの信仰において、人類で最初の死者となり、死者が進む道を見出した死者の国の王、ヤマとされています。

 その後、仏教に取り入れられて地下の暗黒世界の主、閻魔天となり、中国に伝わると冥界の王、また地獄の裁判官である十王の一王にしてその中心的存在と考えられるようになっていきます。

 日本では、それが伝わって神道などとも習合した形で、閻魔さまは死後の行き先を決める地獄の十王の五とされています。

 人をはじめ、この世に生けるものは没すると中陰と呼ばれる存在になり、命日から数えて49日までは7日ごとに、十王の審判を順に受けます。

 いわゆる初七日や四十九日といった法要は、それぞれの裁きの時期に沿ったもので、浄土真宗を除いては十王に減罪を嘆願し、救済を求める意味があります。

 閻魔さまは、諸王の取り調べを踏まえて、死者が六道と呼ばれ、地獄を含めた6つの世界のうちのどこに転生するかを決めます。

 閻魔さまの法廷には、死者の生前の行為が残さず記録され、上映もできるという、浄玻璃鏡と呼ばれる鏡があり、嘘をついても見破られるとされます。

「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれる」とは、嘘そのものが罪とされるうえ、閻魔大王の審判で嘘をつこうものならこの浄玻璃鏡に映し出されて真実を突き付けられ、その場で舌が抜かれるという戒めです。

裁きもするが救済もしてくださる閻魔さま

 さて、では冥土で裁きをする閻魔さまを、なぜこの世にいる人が盛んにお参りするのでしょう。1つは、因果応報という概念からです。

 物事には原因と結果の関係があり、過去の行動が原因となって、次なる運気を左右します。

 因果応報は現世にいる間だけにあるのではなく、死後に住む世界もまた因果応報、生前の行いによって閻魔さまに決められ、地獄に落ちれば責め苦を受けることになります。

 そこでお参りをして、もし自分が裁きに立たされたら、どんな判決が下されるかと自分の行動を振り返り襟を正したり、罪を犯していたならば供物を届けて反省を告げたりするのです。

 もう1つは、本地垂迹という日本の神仏の考え方において、閻魔さまは地蔵菩薩の化身とされていることにあります。

本地垂迹の考え方では閻魔さまは地蔵菩薩の化身とされる

 お地蔵さまの名は、大地が命を育む力を蔵するように、苦悩の人々を大慈悲の心で救うことからきています。六道(次ページ参照)を巡り、人々の苦難を身代わりとなり救います。つまり、閻魔さまは裁きもしますが、救済もしてくださるのです。

 お地蔵さまは、道祖神、守り神として至るところにおられますが、それは閻魔さまが何でもお見通しなこととも関連しています。

 閻魔さまは怖い存在とされていますが、恥じることのない生き方をすれば、まさに仏のような存在なのだと見ることもできるでしょう。


本稿は『ゆほびかGOLD』2020年12月号の特集「『えんまさま』に教わる運命の開き方」からの抜粋です。
誌面では、自分の生き方を振り返るきっかけとなる仏道の極楽地獄の世界観や、寺社の参拝時の心がけ、閻魔さまのお告げの聞き方などもお届けしています。