ゆほびか ゆほびか
  • 文字サイズの変更
  • 大
  • 中
  • 小
  • SNS
  • twitter
  • facebook
  • instagram

【人間関係を円滑にするアクション】複雑な心理状況を整理する「言葉のグループ化」

イラスト/はしもとあやね

模造紙を広げた家族会議

最後に、私の「実際の家族」という人間関係の中であった、あるお話を紹介します。

私は、法務省の職員・大学教授として活動する傍ら、双子の女の子の父親として、悩むことも多くありました。特に、法務省での私の仕事は転勤続きで、娘たちは小学校を4つも転校しました。

土地が違えば、言葉や文化・風習も違います。そんな中で、18歳にも満たない子どもが、一から人間関係を作らなければなりません。

同年代の子どもが経験しないような緊張や不安なども多かったと思います。

そんなとき、私が気をつけたのは、とにかく家族で話し合うことでした。そして、娘が悩んでいるときには、徹底的に話を「聞く」ことにしたのです。

その中で行っていたのが、模造紙を使った家族会議です。

まず、テーブルに模造紙を広げます。そして、私は娘の話を聞きながら、模造紙にキーワードを書いていきます。

このときの私は、「こうしたらいいんじゃない?」などと口を挟まず、徹底的に話を聞いて、娘の話す言葉を書き出す役に専念します。

それから、キーワードが並んだ模造紙を娘と一緒に見ながら、「このワードとあのワードがつながっているね」とキーワードを線で結んだり、「ここが大事なんだね」と丸で囲んだりして整理するのです。

娘が何かに悩んでいるときには、これを毎晩のように問題が解決するまで続けるのが、我が家の恒例行事でした。

付せんにキーワードを書くだけ!

模造紙を使った家族会議のポイントの一つは、「書く」という作業です。

悩み事を口で言い続けていても、堂々巡りになることは珍しくありません。紙に書き出すことで、気持ちや思考を整理することができます。

もう一つのポイントは、「言葉を眺める」ということです。

私は娘と一緒に、模造紙を真上からのぞき込むのですが、こうすることでキーワード同士のつながりが見えてきます。

ただ、「模造紙がなかなか手に入らない」「整理役がいない」という場合がほとんどです。そのときには、付せんが便利です。

人間関係などで問題が発生しているのであれば、そのキーワードを付せんに書きます。

1個のキーワードにつき1枚、付せんを使ってください。

キーワードを書いた付せんは、広いテーブルあるいは床にペタペタと貼って、上から眺めてください。

すると、AとBというキーワードにつながりがあることが見えてきたりします。そうしたら、Bと書いた付せんをAと書いた付せんの近くに貼り直します。

こうして言葉をグループ化して分けていくと、自分を悩ませ、複雑に見えていた人間関係が整理されて、何をすればいいのか、自分は何がしたいのか、自分が認知していなかった気持ちなどがわかってきます。

言葉を整理すると、ややこしい人間関係も整理されてくる!

人間関係に悩む人へエールを

「ここまで話しておいて何だよ」と思われるかもしれませんが、私の家族の話はあくまでも一例です。中には、こんな面倒なことはしない!という人もいると思います。そう思うなら、それでOKです。

私がこの例でお伝えしたかったのは、これまでご紹介してきた思考の仕方や思考を整理する方法を使い、多くの人が日々直面する悩ましい人間関係をどうか無理のないもの、そして心理的な負担が少ない幸せなものに変えていただきたいというエールです。

「よかれと思って」と子どもにかけた言葉や対応が「いい迷惑」だったと気づいたときには、関係が冷めきり、深刻な問題が起きているというケースは、家庭や職場、学校など、さまざまな場面で起こります。

その際、「私たちはこういう価値観を持っていて、こういう関係性を目指している」ということを共有することが大切です。

そして、あくまでその状況や関係を「受け止める」ことが重要です。

何も、関係性に合わせて自分を押し殺したり、変容したりしなくてもよいのです。

現実を受け止め、自ら進む中でさまざまな価値観や考え方に触れる。その過程こそ「呪う言葉」が「救う言葉」に変わるきっかけです。

この言葉のマジックに気づけば、あなたや、あなたを取り巻く多くの人の幸せ・生きやすさが、向上していくでしょう。

この記事は『ゆほびか』2023年3月号に掲載されています

関連記事