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手や足のボコボコ血管を放置するとどうなる?軽症であれば早めのセルフケアで予防・改善できる

手のボコボコ血管が切実な悩みに

当院では、手や足に青白く浮き出る「ボコボコ血管」を改善するための治療を、長年提供しています。

駆け込んでくる患者さんで、ここ数年増えているのが、手を非常に気にされるかたです。

「汚いと言われてから、手を見るたび憂うつになる」 「老けて見える」 「孫に気持ち悪いと言われた」など、と、手に浮き出た血管がストレスとなり、メンタル面で影響を受けているかたは少なくありません。

手の甲の血管が膨らみ、ボコボコと浮き出たようになるのは、静脈が拡張し、膨らんでいるからです。この症状を英語の「hand(手)」と「vein(静脈)」を合わせて「ハンドベイン」と呼びます。

一見、異常な血管のように見えますが、ハンドベインは病気ではありません。加齢などが原因で生じる生理現象の1つで、50代以上の人なら、多かれ少なかれハンドベインが生じています。

また若い人でも、力仕事をしていたり、極端にやせて皮下脂肪が少なかったりした場合には、ハンドベインが生じることがあります。

ごくまれに、病的なケースもありますが、基本的には手の血管が浮き出ていても健康には影響しません。最も大きな問題は、見た目です。見た目が気になり、それが切実な悩みとなっているのです。

ボコボコ血管は一度気にすると、常に気になる…!

ハンドベインの原因は「静脈の拡張」と申し上げましたが、ではなぜそれが起こるのでしょうか。

その理由は、静脈の構造にあります。静脈は動脈に比べて、血管壁が薄い構造をしているため、柔らかくて拡張しやすいのです。

静脈は、酸素や栄養素を運び終えた血液を心臓に戻す役割がありますが、その一方で血液の貯蔵庫としての役割も担っています。ですから、なんらかの理由で血流が阻害されると血管が拡張し、ボコボコと浮き出て見えてくるのです。

静脈は皮膚の表面近くを走るものが多いので、拡張した血管がボコボコと浮き出てしまう……というわけです。

足のボコボコ血管は病気なので要注意!

ハンドベインと同様に、静脈が拡張して起こる症状というと、足に起こる「下肢静脈瘤」があります。

その見た目は、ハンドベインと似ていますが、別物です。ハンドベインは主として生理的な変化ですが、下肢静脈瘤は病気です。

足の静脈を流れる血液は、下から上に流れているので、逆流を防ぐために、多数の弁が存在します。

加齢などで静脈がもろくなると、静脈の血流が悪化して、弁に過度な負担がかかり壊れます。すると、血液は上に流れずに逆流し、静脈内に溜まった結果、血管が伸びて広がりボコボコと浮き出て見える……つまり、下肢静脈瘤となるのです。


左:正常な血管。弁がしっかり閉じているため、血管の逆流が防がれている
右:弁にすき間ができて血液が逆流しやすくなった血管。血管が伸びたり膨れ上がったりして、ボコボコ血管になる

下肢静脈瘤は見た目の問題だけでなく、足のだるさや疲れ、痛み、むくみ、色素沈着、こむらがえりなど、さまざまな症状を伴います。

加えて、放置すると症状がさらに悪化し、正常な血管にも悪影響を及ぼします。

足の静脈に血栓(血の塊)ができ、それが肺の動脈に移動して詰まる肺塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こすこともあるのです。

重症化した下肢静脈瘤を根本的に治すには、医療機関で治療を受ける必要があります。しかし、軽症であれば、運動や食事、生活習慣の改善などのセルフケアで予防・改善することは十分に可能です。

一方のハンドベインは、病気ではないので、治療は美容医療の枠組みで行います。アンチエイジング医療とも呼ばれていますが、治療を行っている医療機関は非常に少ないです。

実は私も、「見た目が気になる」という理由で、病気ではない健康な血管に対し、医療行為を行うことには抵抗感がありました。しかし、患者さんからの要望を強く受け、何とかしようと思い立ったのです。

そして、ハンドベインを解消すると見た目の美しさだけではなく、患者さんたちの精神の安定や自己肯定感、幸福感が向上する様子を何度も目の当たりにし、ハンドベインを治療することも医師の使命であると考えるようになったのです。

ハンドベインの治療では主に「血管内レーザー治療」を行いますが、下肢静脈瘤と同様に、軽度であればセルフケアで予防・改善が期待できます。

次回の記事では、ハンドベインと下肢静脈瘤を予防・改善するセルフケアを紹介します。 

この記事は『ゆほびか』2023年3月号に掲載されています