血管が1ミリ以上細くなった!
ハンドベインは、病気ではないので、治療は美容医療の枠組みで行います。アンチエイジング医療とも呼ばれていますが、治療を行っている医療機関は非常に少ないです。
実は私も、「見た目が気になる」という理由で、病気ではない健康な血管に対し、医療行為を行うことには抵抗感がありました。しかし、患者さんからの要望を強く受け、何とかしようと思い立ったのです。
そして、ハンドベインを解消すると見た目の美しさだけではなく、患者さんたちの精神の安定や自己肯定感、幸福感が向上する様子を何度も目の当たりにし、ハンドベインを治療することも医師の使命であると考えるようになったのです。
ハンドベインの治療では主に「血管内レーザー治療」を行いますが、軽度であればセルフケアで予防・改善が期待できます。
「腕上げ呼吸」は、ハンドベイン改善用に考案したエクササイズです。
ハンドベインを気にされている患者さんに「腕上げ呼吸」を10回試してもらったところ、行う前に比べて、明らかに手の甲の血管の膨らみが目立たなくなっていました。
見た目だけではなく、超音波(エコー)を使い手の甲の静脈の太さを測定したところ、「腕上げ呼吸」を行う前は3.5㎜だった血管が、行った後では2.3㎜まで細くなっていました。1㎜以上も細くなったことが確認できたのです。
静脈の血流は呼吸で改善できる!
静脈血を心臓まで戻すときに重要なのが、呼吸です。「腕上げ呼吸」は、呼吸機能を高めることにより、静脈の流れを促します。
肺には筋肉がないので、自ら収縮したり拡張したりすることができません。呼吸をするときには、胸郭(肺や心臓などを包む胸部の骨格)と、その下端にある横隔膜(胸とおなかの境目にある筋肉)などの筋肉群に連動して収縮・拡張しています。
例えば、息を大きく吸い込むと、胸郭が広がり、胸部の内圧が下がるとともに、横隔膜が下がります。
すると、横隔膜の下にある腹腔(内臓が収まっている空間)は、横隔膜によって上から押されて、おなかに圧力がかかります。
このとき、背骨に沿って走っている大動脈が圧迫されて、おなかの静脈の血液が、内圧の低い胸部のほうに引き上げられます。
そして、息を吐くと横隔膜が上がり、肺が少し縮みます。すると、心臓のほうへ引き上げられた血液が、肺に向かって流れ込んでいきます。
こうした呼吸の働きによって、静脈血は腹部から心臓へ、心臓から肺へとスムーズに流れていくのです。
「腕上げ呼吸」では、胸郭と横隔膜をしっかりと動かしながら、ゆっくりと深い呼吸を繰り返します。それにより血流と呼吸の両方を活性化する効果が期待できます。
腕上げ呼吸のやり方
①両足を肩幅に開いて立ち、息を吸いながら、両ひじを肩と水平の高さまで上げる
②息を吸い切ったら、両腕を前方に勢いよく突き出しながら「フーッ」と力強く息を吐く。①・②を10回繰り返す