米国では予防医療こそ重要視されている
日本では、アンチエイジングというと「美容」を連想する人も多いと思います。
しかし、アメリカでは美容だけにとどまらず“10年先の健康を作り、健康寿命を延ばすための積極的な予防医療〟という非常に広義な意味で使われており、「予防医療に100ドルの投資を行えば300ドルの医療費を節約できる」と言われるほど、重要視されていました。
そんなアンチエイジング医学の中で大切な視点があります。自分の体の現実を受け止めることです。まず、若い頃と比べてどのくらい変化しているかを、チェックテストで確認してみましょう。あなたの体の現実が見えてくるはずです。
ダイエットで骨粗鬆症や低栄養のリスクが高まる
白髪やシワ、息切れ、関節痛などの老化現象は、「代謝の低下」が一つの要因です。
代謝とは、食事で取り入れた栄養素を体内で消化・吸収したり、エネルギーに変換したり、ホルモンや筋肉を作ったりする機能のこと。この機能に障害が生じると、栄養や酸素が体に行き渡りにくくなり、老化が進みます。ですから、代謝のよい状態を維持することが、老いないためには欠かせないのです。
そんなベストな状態を維持しやすく、健康長寿でいられるとの研究結果が発表されているのが、意外にも「小太り体形」です。
日本では、「やせているほうが健康で長生きできる」「若々しくて、美しい」という固定観念があり、老若男女問わずダイエットに励む傾向があります。
しかし、やみくもにやせようとすると、ホルモンバランスが崩れ、低栄養になるリスクも高まります。
特に女性は、骨粗鬆症のリスクが高まります。ダイエットの影響だけでなく、年齢を重ねて食が細くなり脂肪が減ると、骨がてきめんに弱くなるからです。
脂肪には、骨を維持する働きがあります。骨を壊す働きを抑え、骨が作られるのを促進する物質が脂肪細胞でも作られるからです。そのため、脂肪の極端な減少は、骨密度の低下につながるのです。
また、皮下脂肪については、「幹細胞」を蓄える役目があります。幹細胞とは、これから脳にも心臓にも筋肉にもなることができる、未分化の細胞のことです。ケガをして皮膚が傷つくと、幹細胞は皮膚の細胞に変化して修復する働きをします。皮下脂肪が減れば、幹細胞が蓄えられる量も減るため、ダメージからの治りが遅くなります。
外見的な面でも、皮下脂肪があることで皮膚の張りが維持されます。女性が求める、シワやたるみのない若々しい見た目を保つために、ある程度の皮下脂肪も必要なのです。
朝一の体重測定で体形&健康維持を
一方で、内臓脂肪の増えすぎは、脳卒中や脳血管性認知症のリスクを高め、体を病原体から守る免疫力を低下させるため、避けたいもの。
日本やアメリカの、肥満とがんの発症率や長寿との関係についての研究結果を見ると、小太りが最も長寿で、肥満になるとがんのリスクが高まることが明らかになっています。
なお、小太りとは、確認しやすいBMI(体重÷身長の2乗で算出される値)だと25~26程度(普通体型は18・5以上25未満)。専用の体重計や専門機関で計れる体脂肪率で見る場合、男性は10~25%、女性は18~33%までの体脂肪率の体形のことです(体脂肪率の標準値は男性10~20%、女性18~28%)。
どちらかの数値以内であれば、筋肉のバランスもよく、寝たきりや要介護にならずに健康寿命の延伸につながりやすくなるのです。
最後になりますが、適正な体重を維持するためにお勧めの方法をお伝えいたします。それは、朝起きたら体重計に乗ることです。特にBMIを基準に体形を調整する人は、行いやすい方法です。
例えば、昨日まで65㎏だった人が66㎏に変化していたら、昨日の生活を振り返ってみてください。
食べすぎていませんか? お通じはありましたか? いつもの運動をサボっていませんか? 思い当たることがあれば、今日は食べる量を控えたり、いつもより少し長めに運動をしたりして、体を調整してみてください。