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【コロナ後遺症とは】症状は倦怠感、思考力低下など。8人に1人が後遺症に苦しむというデータも

医師が警告する「コロナ後遺症」の怖い実態

当院が「コロナ後遺症」の診療を始めたのは、2020年3月からです。
きっかけは、微熱が続き、体のあちこちに痛みを訴えて来院した、40代の女性患者さんでした。通常通り対処しても一向によくならず、いろんな病院で検査を受けてもらいましたが、原因はわかりません。

となると、思い当たるのは、その年に流行り始めた新型コロナウイルスの影響です。
当時はまだ、誰もが検査を受けられる状況ではなかったので、この女性が感染していたかどうかはわかっていませんでした。

それでも、今までにないことが起きているのですから、コロナと結びつけて考えるのが自然ではないでしょうか。

さらに、その後も似たような症状のかたが数人来られて、私は、「やはりこれはコロナの後遺症ではないか」と考えるようになりました。

そのことをインターネットで発信すると、患者さんが徐々に集まってくるようになったのです。
2020年秋以降は、実際に検査を受けてコロナ陽性と判定され、その後も長期にわたって、つらい症状に悩まされている人が多数来院しています。

私がコロナ後遺症と言い始めた当初、ほかにそのようなことを言っている人はほとんどいませんでした。

それだけに、「根拠もないのに、いい加減なことを言うな」と、ずいぶん叩かれたものです。最近、ようやくコロナ後遺症という言葉が一般的に使われるようになり、世界でもいろいろなデータが出てきています。

オランダで報告された科学的に信憑性の高い研究によると、12・7%(8人に1人)がコロナ後遺症になっているとのこと。
当院のコロナ後遺症外来の患者数だけを見ても、この2年半で4600人に上っています。

男女比は、男性より女性のほうが1・5倍くらい多く、年代別に見ると30~40代の女性に多い傾向が見られます。その理由として、女性に多い自己免疫疾患がコロナ後遺症にも関係しているのではないかとする説がありますが、本当のところはよくわかっていません。

感染中に出た症状がずっと続いた状態

なお、コロナ後遺症といっても、コロナがいったん治ってから、後遺症の症状が現れる人は1割弱です。

約9割の人は、コロナ感染中から症状が始まり、療養期間を終えてもずっと続いている状態です。
海外では「ロングコビッド」と呼ばれていて、長く症状が続くという意味では、その言葉のほうが的確といえます。ただ、日本語に訳しづらいので、私は「コロナ後遺症」と呼んでいます。

当院が、患者さんに確認しているコロナ後遺症の症状は、14種類です。いくつかの症状が出たり治まったりを繰り返すのが特徴で、経過中に少しでも症状が見られたものは、「症状あり」とカウントしています。

この中でも特に問題なのが、「倦怠感」と「思考力の低下」です。これらは仕事を失う原因にもなり、ひどくなると寝たきりになってしまう人もいます。

コロナ後遺症と関連の深い疾患に、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」があります。その診断基準には、全身状態の指標の一つで、患者さんの日常生活の制限の程度を示すPS(パフォーマンスステータス)というものがあります。これは10段階に分かれており、「0」だと「まったく問題なく活動できる」に該当し、「8~9」だと「寝たきり」を表します(表参照)。

コロナ後遺症のかたはPSがどの程度なのか、当院の患者さんで調べてみました。
その結果、労働はできるが倦怠感があるPS1〜2の人と、準寝たきりに相当するPS6〜7の人が最も多いことがわかりました。つまり、軽症な人が多い半面、社会生活が困難なほど重症な人も少なくないということです。

その深刻さがまだまだ認知されていないことも、大きな問題です。
症状のつらさに加え、周りの人にわかってもらえず、なかには悲観して自ら死を選ぶ人もいます。
たとえコロナの症状自体が軽くても、後遺症にならないとか、後遺症が軽くて済むというわけでは決してないということを、私たちはよく理解しておかなくてはなりません。

ワクチン後遺症も同様の症状が出る

さらにもう一つ知っておいていただきたいのは、ワクチンを打った後、コロナ後遺症と同じような症状が出る人も一定数いるということです。

「ワクチン長期副反応」とか「ワクチン後遺症」と言われています。当院でも、そのような患者さんを300人くらい診ています。

ワクチンを打ってはいけないと言っているのではありません。ワクチンのおかげで死亡者数が減っていることは確かです。

しかし、ワクチン長期副反応を予防し、また、ワクチンを打った後で調子が悪くなったときにきちんと対処するためにも、そういうケースがあるという事実は知っておくべきだと、私は思います。

皆さんにお伝えしたいのは、コロナ後遺症やワクチン長期副反応というものが実際にあって、その中には非常に重い症状の人もいるということが1点。

そしてもう一つ大事なことは、それらには治療法があるということです。もしコロナ後遺症になってつらい症状が続いても、治すことはできます。しかも、後遺症の治療法が最も進んでいるのは、日本です。

どうか悲観せず、希望を持ってください。治療法の詳細は次の記事でお話しします。

次の記事

【コロナ後遺症を予防・改善】感染時の重症化防止にも!お勧め治療法とセルフケア

この記事は『ゆほびか』2023年1月号に掲載されています。
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