日本にしか生息しない不思議な菌、それが「麹」
皆さんは、「麹」といえば、みそやしょうゆ、酒、塩麹、甘酒の原材料の一つというイメージでしょうか。もちろん、その通りではあるのですが、実は麹には、食べ物をおいしくする以上の、驚くべき健康効果があります。
後で詳しく説明しますが、毎回の食事に、わずか0・05%の麹が入るだけで、次のような効果が期待できるのです。
- 腸内環境の改善
- 免疫力をアップ
- ストレスを抑制
- 高い血圧や血糖値を下げる
- ダイエット効果
- 肌や髪の若返り
などです。正直、研究すればするほど麹のすごい力に圧倒され、知れば知るほど麹にはさらなる効果があると思っています。
近年、ユネスコの無形文化遺産として「和食」が登録されましたが、和食を和食たらしめているのが「麹」です。みそやしょうゆなどにわずかに含まれる麹が、日本人の健康を支え、温和で情緒豊かな性質を育んできたのだと思います。
そもそも「麹」とは、「麹菌」という微生物で、カビの仲間です。蒸した米に麹菌を生やせば「米麹」になります。
「カビなんて食べて大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、麹菌を遺伝子解析したところ、カビ毒を出す遺伝子そのものがない、ということが判明しています。
通常、カビは人間の体に悪影響を及ぼす毒性を持っているものが多いのです。ところが麹菌は、まるで遺伝子操作をされたかのように、毒を出す遺伝子そのものがないのです。
余談ですが、麹菌の一つ、白麹は学名を「アスペルギルス リュウキュウエンシス ヴァルカワチ」と言います。ところが海外では「アスペルギルス」と名の付くカビは、すべて病原菌の代表のようなものばかりで、中には致死性の強い毒を持つカビもあります。
日本にはさまざまな麹菌がありますが、代表的な麹菌は、黄麹、黒麹、白麹の3種です。今回はこの3つの麹についてお話します。
「麹の神様」がつくった100年以上続く麹屋
申し遅れましたが、私・山元正博と息子の医師・文晴は、鹿児島県で100年以上続く麹屋の三代目、四代目として、麹の研究をしています。
創始者の河内源一郎は、黒麹の一つと、白麹を発見し、香りがよく、まろやかで甘口のおいしい焼酎造りに貢献したこともあって「麹の神様」と呼ばれていました。
麹と長年つきあっていると、麹のすごい力を見せつけられることがたびたびあります。例えば、私はチェコでビール造りを学び、クラフトビールの先駆け「霧島高原ビール」を製造し、鹿児島空港の近くにチェコ村のテーマパークを作って観光名所としました。
その際、困ったのがインフルエンザです。1日に1000人を超える観光客が来ると、レストランという閉鎖空間で働く従業員は、感染から逃れようがありません。
これに対抗するため、私は麹を入れた飲み物を作り、社内のあちこちにドリンク・サーバーを置いて自由に飲んでもらったところ、従業員の感染が大幅に減少したのです。
それから、こんなこともありました。卵巣がんにかかって治療をしていたものの、薬の影響が強く、雷鳴頭痛という重症の頭痛に悩まされていた女性がいました。
あるとき、たまたま鹿児島空港の近くにある私たちのショップで麹のドリンクを購入して飲み始めたところ、雷鳴頭痛がピタリと治まったそうです。それで気をよくして、毎日、麹ドリンクを飲んで手術に臨んだところ、がん細胞がなくなっていたそうです。後日、検査の画像を添えて、ご報告をいただきました。
そのほか、仕事でおつきあいのあるKさんというかたが、前立腺がんになって、お酒もおいしく飲めなくなったと言ってきたことがありました。それで物は試しと、麹ドリンクをお渡ししたのです。Kさんが麹ドリンクを一週間飲み続けたところ、おしっこに白い物が混ざるようになったので、病院にそれを持って行ったところ、医師から「がんの皮です」と言われたそうです。以来、Kさんは麹ドリンクを飲み続け、前立腺がんは消えてしまいました。
いつまでも若々しく元気でいられる
これは私たちの研究所で行った実験ですが、エサに白麹を与えるマウスと与えないマウス(各群12匹)で寿命はどう変わるかという実験を行いました。マウスの寿命は2年程度です。さて、どちらが長生きしたと思いますか?
答えは「寿命は変わらない」です。
ただし、二つのグループには大きな差がありました。麹を食べていないマウスは、加齢とともに毛が抜けて、足も弱くなってヨタヨタし、死期が近いことがわかりました。
ところが、麹を食べていたマウスは、ずっと毛がツヤツヤで、動きも活発なままだったのです。ある日突然、コロッと死にました。まさにピンピンコロリ。
麹は老化を抑制し、健康寿命を延ばすのに有効です。それでは、なぜ麹がそんなに体によい影響を及ぼすのか、次の記事で息子の文晴がご説明いたします。